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2-1 騎士団との接触

引き返すか? マトの中に迷いが再び出現する。しかし、ここまで来てルチカを無理矢理連れ戻すのは不可能だ。


悩んでいる間も毛玉はコロコロとダンジョンの奥へと進んでいく。


(しょうがない・・・か)


そうマトを思わせたのは見廻隊、騎士団への対応はルチカ一人にはできないと考えたことと、もう一つ、ダンジョン内の異変だ。


マトは言う。


「やっぱりあの妙な噂も気になる」


「妙な噂?」


「ゴブリンが知恵をつけたのか回復手段を有しているらしい。今まで、ゴブリンは戦闘中の回復手段はなかった」


「でもそんなゴブリン見なかったよ。衰弱しているゴブリンはそれなりに見たけど・・・」


「他のゴブリンとの違いは、頭部が大きいことらしい」


「知能が高いから脳みそも大きいのかな?」


「う~ん。どうだろうなぁ。ゴブリンだけの力だとはどうにも思えないんだよなぁ」


「このダンジョンに何か他の魔物がいるってこと?」


「一応、魔物図鑑を調べたが、まだわからない」


そんな会話をしているうちに、先ほどの件の現場である円形に開けた場所の入り口に辿り着く。


「見えた! あの広間の出入り口!」


ルチカはそう言うと毛玉の速度を上げた。


加速した毛玉にマトは戸惑う。


「お、おい! ルチカ! まさか突っ込む気か⁉」


「当然でしょ!」


「勢いよく毛玉が飛び込んできたら、さすがに怪しまれるって‼」


広間には見廻隊と騎士団が隊を組んで調査に当たっている。


しかし、マトの忠告も時すでに遅く、ルチカの加速した毛玉は止まらずに広間に入っていった。


勢いよく飛び込んだ毛玉は地面に当たり、ビョンと跳ねまわり近くにいた調査隊を驚かせた。


「なんだ‼ あれは⁉」


さんざん暴れた毛玉は余りの勢いにマトを毛玉の外へ放出し、遅れてルチカの増幅した体毛も解除されルチカはマトの上に落ちた。


「ぶべしっ‼」










「いててぇ・・・」


マトが痛がっていると目前に体格のいいスキンヘッドの男がやって来た。


「マトか⁉ お前こんなところで何をしている‼」


マトは顔を上げるとそこには見廻隊養成学校時代の担当教官であるバッシが立っていた。


「バッシ教官‼ なぜここに?」


眉間に皺を寄せ、口ひげが生えた厳つい顔をしたバッシは応える。


「それは俺が聞いているんだ‼ 俺は調査隊の一員だ‼ で何をしている⁉」


マトは思う。


(運がいい! バッシ教官なら話が通じる!)


マトは他の調査隊に聞かれないようにかしこまって申し訳なさそうに小声で言う。


「勝手なことと思いながら、発見者の私がお力になれればと思い」


「必要ない‼ 若手がいても足手まといだ‼」










バッシはマトの後ろにいるルチカを見る。


「誰だ。その子どもは? こんな所に連れて来ちゃ危険だろ‼」


「この子が件のドラゴンです。彼女の話をお伝えに来ました‼」


「ドラゴンだぁ? どうみても可愛げのある女の子だろ‼(俺の娘の方が可愛いがな)」


「この子は竜人なんです‼」マトはルチカにドラゴンに変身できるかと視線をやる。


ルチカは察したのかグッドポーズをした。


「あの子はルチカと言います。今からドラゴンになります」


バッシは疑いを持ちながらも期待の眼差しをルチカに向ける。


マトは思う。


(ドラゴンと言っても体は小さいから俺とバッシ教官の体で隠れて他の調査隊には見えないよな?)


しかし、マトの思惑も空しく、ルチカは何を思ったのか「うわぉーー‼」と叫んでからポンッと変身した。


「どう? マト。ドラゴンみある叫び声だったでしょ!」


と言ってドラゴン化したルチカを見てマトとバッシは驚愕する。










「こ、これは・・・」


「ルチカ! その姿・・・」


「え? なに? かっこよすぎた?」


マトは戸惑いながら言う。


「違う・・・お前なんで大きくなれるんだ?」


マトとバッシの前にいるのは、初めてこの広間で見たエンファニシィドラゴンの大きさと同じだった。


その時と違うのは、体中を体毛が覆っていること。


自分の姿にルチカも気付く。


「わー! またデカくなってるぅ! なんかここで変身するとデカくなっちゃうみたい」


驚いていたバッシが口を開く。


「俺はドラゴンを一度生で見たことあるが、これは変身魔法の類ではなく、本物のドラゴンだ」


ルチカは得意気に「当たり前でしょ」と返す。










「パーンの報告ではドラゴンは消えたとあったが、なるほど傷ついた少女がドラゴンだったわけか・・・」


バッシにわかってもらえたことを安堵したマトだが、この一連の流れはルチカの奇声と体の大きさから一切を広間にいる調査隊に見られていた。


騎士団の現場責任者のハーゲンが三人の元へ来る。


「これはどういうことだね⁉ バッシ教官‼」


ハーゲンは背が低くく頭頂部の毛はもうほとんどない。


バッシがハーゲンに説明をする。


ハーゲンは肩で風を切りながらマトとルチカの前に立つ。


「報告には竜人などとはなかったが?」


「彼女が竜人だと発覚したのはつい先刻ほどです。なるべく早く騎士団率いる調査隊にお知らせしたく、失礼を承知で参りました‼」


「それで。そのドラゴンを見せびらかしに来たわけではないのなら、早急に報告をしたまえ」


ハーゲンの態度にマトは思うところはあったが表に出さず、ルチカがダンジョン内で見たものについて話した。










「なるほど。ゴブリンの衰弱。ゴブリン以外の魔物の存在の可能性。そしてドラゴンの大きさの変化」


「はい! ここに何かヒントがあるではないかと・・・」


ハーゲンはマトを見下しているような口調で言う。


「ふんっ。まあまあだな。全て想定内。騎士団(我々)に時間を取らせるほどではないな」


「・・・そうですか」


ハーゲンは手をヒラヒラさせて「お前はもう帰ってよい。ドラゴン娘は残れ。あまり見張りを混乱させるなよ」


そう言うとハーゲンは、他の調査隊に調査を続けるように命令した。


バッシがマトに近付いて来て「勇気のいる行動だったな。俺は評価する。ここは俺達に任せて行け。ルチカは俺が見ておく」


バッシのフォローに溜飲を下げたマトだが、ルチカのことを心配した。


(バッシ教官は信用できるけど、ハーゲン指揮官が何を考えているかわからない)








マトがここに留まることを志願しようとしたその時、調査隊の一人が叫んだ。


「ゴブリンだ‼」


調査隊は魔法使いとして腕の立つ見廻隊と戦闘になれている騎士団で構成されている。


何故今更ゴブリンごときで必死になるのか周囲は不思議に思った。


「頭の大きいゴブリンに気を付けろ‼ やつらは・・・・・・‼」

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