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13-2 試練

ルチカはマトの袖を引っ張って言う。


「結局アイツはなんなん?」


「ここがダンジョンなら魔物だろうな」


「マトも会話出来てたってことは・・・」


「喋れる魔物はいるが、あの威圧感、見るからに上級の見廻隊員や冒険者が相手をするような魔物だろうな」


ルチカは感心した表情になる。


「キモオタって普段あんな強そうな奴の相手してんのかぁ~」


「そうだぞ。だからキモオタって呼び方やめなよ」


「は~い」


マトは神の世界目前の現状を悩ましく思う。


暴風で飛ばされないように堪えているが、これによって体力を著しく削られている。


更に雪が降り始め吹雪になり、暴風により吹雪が激しくなっており、体温が下がり視界も悪い。


「真っ直ぐと言ってもこのありさまじゃあなぁ」


「くぅ~この寒さはルチに効きますなぁ~」


マトは両手を地面につける。


「何か手掛かりが掴めるかもしれない」


そう言ってマトはサーチを発動した。


サーチを始めたばかりのマトに寒さを我慢できないルチカは間髪入れずに問う。


「どう? なんかわかった?」


「・・・ここ思ったより広くないぞ」


「まじぃ? じゃあ、ちょちょいと行っちまおうぜ!」


「いや、そんなに甘くはない。この暴風や吹雪、雷は魔物のせいだ」


「さっきの奴かな?」


「そこまではわからなかった。だが、さっきの奴レベルが三体はいることになる」


「じゃあ、なおさらさっさと行った方がよくない?」


「そうだな」










二人が意を決して歩き出したその瞬間、雷が二人の目の前に落ちる。


落ちた雷はウネウネ動いて次第に巨大な猫の形になった。


マトは言う。


「『雷描』だ⁉」


雷描は二人を睨む。


「りんごを渡せ」


ゆっくりと落ち着いた話し方だが、凄まじい威圧感を放っている。


「りんごだと・・・?」


「貴様らが持っているのだろう。早く儂に渡せ」


(なぜ、りんごを欲しがる?)


マトが返答に困っていると雷描が唸り声を上げて威嚇をした。


ルチカが「ぢぃ~‼」と言って威嚇し返すとマトはすぐにそれをやめさせ、雷描に理由を問おうとした。


その時だった。


マト達の背後から雷描に大きな獣が襲い掛かった。


雷描がその巨大な獣に噛みつかれたが、雷を落として対抗した。


マトはその獣の正体がわかる。


その獣は『氷狼』だった。


雷描は聖域のダンジョンに雷を落とし、氷狼は吹雪を起こしていたのだ。


雷描と氷狼の戦いが続く中、マト達はその場を気付かれないように離れようとした。


氷狼は氷の槍を八本、自分の周りに出現させて、雷描に向かって放つ。


雷描は雷を氷の槍に器用に当て、砕いた。


睨み合いながらお互い唸って威嚇をしあう。


雷描は雷の体になると目ではおえない速さで氷狼に突進した。


氷狼は吹雪で体を包み氷の鎧を身に纏って雷描の攻撃を受け止めた。


氷の鎧は砕けたが氷狼にダメージはなく、雷描も無傷のようだった。


マトはその戦いを見て(こんなんの倒せるかよ‼ 戦闘にならないよう切り抜ける必要がある)と考えた。


雷描と氷狼は噛みつき合い、ゴロゴロと雪の山を転がっていった。









マトは言う。


「今のうちに行くぞ‼」


二人はまっすぐ走り始めた。


「ねーねーマトー。さっきの狼の変身シーン見たぁ? ルチ達と同じやり方だったよぉ!」


「ああ、見たよ。あんな大物と同じやり方なんて光栄だよ」


「狼のは鎧っぽかったねぇ~。かっこよかった!」


少し離れた場所で雷が集中的に落ちている音がする。


(だけどもう会いたくねぇ‼)


怪物達と関わらずになるべく早くダンジョンを出たいという気持ちであったが今度は風が二人を阻む。


進んで行くほど風が強くなり、一歩前に足を出すのに一苦労だった。


すると風によって巻き上げられた雪と風でできた体を持つ巨大な魔物が現れる。


魔物は人の形をしていた。


「今度はなんだ‼」


魔物は言う。


「オレは『暴風将軍』‼ 風を止めて欲しいか?」


暴風将軍の声は力強く荒々しかった。


マトは応える。


「止めてくれるのか?」


暴風将軍は気前が良さそうに「もちろんだ‼」と言うと怪しい声色で「ただし、りんごをオレに渡したらな・・・‼」と言った。


マトは「りんごは渡せない! これを神に届けなきゃいけないんだ!」


「知っている‼ だが、オレがそれを食べれば、強大な力を手に入れることが出来る‼ 神のいない不安定な世界でも問題なく生きていけるのだ‼」


ルチカは怒る。


「自分勝手な奴だな‼ せっかくルチ達が世界を救おうってのに‼ 邪魔するなよ‼」


「はっはっはっはっは‼ 魔物とは自分勝手なモノだ‼」


更にルチは反論する。


「魔物だってお前達みたいな奴らばかりじゃないんだぞ‼ 他の生き物と変わらず、みんな一生懸命生きているんだ‼」


「下界の雑魚共がどう生きていようがオレにはどうでもいい‼」


暴風将軍は唸りを上げて威圧する。


「さあ‼ 早く、オレにりんごを渡せ‼」


「渡すもんか‼」


暴風将軍は腕を振り上げる。


「じゃあ‼ 死ぬかぁ‼」


ルチカはポンッとドラゴンに変身する。


暴風将軍が竜巻をルチカ目掛けて放つと、ルチカは全力の炎の弾を放った。


これまでにない程の大きな炎の弾は竜巻にぶつかると互角の押し合いを繰り広げた。


暴風将軍は言う。


「やるなぁ‼ ならこれはどうだ‼」


暴風将軍が両腕から竜巻を起こし、その二つを合体させると巨大な竜巻になった。


ルチカはそれを見ても怯まなかったがマトは危機感を感じて両手を地面につけた。


マトは風属性の魔力を使ってサーチを発動するとルチカが吐き出した巨大な炎の弾に最大出力の風を纏わせた。


それによってルチカの炎の弾の威力が大幅に増加して暴風将軍が放った巨大竜巻を打ち消した。


暴風将軍は少し狼狽える。


「やるじゃねぇかガキ共‼」


ルチカは暴風将軍の言葉を聞くこともせず、大きく息を吸った。


暴風将軍は言う。


「あん? 何をするつもりだ?」


ルチカはそのまま暴風将軍に向かって鼻から風を吹き出した。


ルチカの全力の風魔法は暴風将軍も驚く威力であったが暴風将軍を吹き飛ばすことは出来なかった。


だが、ルチカの容赦のなさに暴風将軍は少し焦り、言う。


「オレの本気の技見せちゃおっかなぁ‼」


暴風将軍は体を回転させる。


回転するスピードは次第に上がっていき、そして自分自身が強力な暴風となった。


「こうなったオレを止められるかぁ‼」


その強大さにマトは焦る。


「これはやばい‼ ルチカ、逃げるぞ‼」


「え~戦いたいぃー‼」


「馬鹿! あんなのとどうやって戦うんだ‼」










そう言うとまだ駄々をこねるルチカを脇に抱えてマトは走って逃げる。


すると突然、暴風将軍のもとに雷が落ちる。


鳴り響く轟音と共に暴風将軍の叫び声が聞こえた。


暴風はなくなり、吹雪のみが吹き荒れる。


マトは嫌な予感がした。


(雷‼ ってことは・・・)


その瞬間、雷描と氷狼が二人の目の前に現れる。


(やっぱ来たぁ‼ 逃げるぞ‼)


マトは踵を返して走り出す。


だが、雷描と氷狼は一瞬にしてマトの目の前に立ち塞がる。


氷狼は二人を見ながら涎を垂らして言う。


「人間はワタシが食べる」


雷描は応える。


「好きにしろ。ワシは人肉に興味ない」


二匹が呑気にそう話していると手負いの暴風将軍が後ろから現れる。


「おまえらぁ・・・よく・・・も・・・やりやがった・・・なぁ」


雷描は吐き捨てるように「ふんっ! 油断している貴様が悪い」


立ち塞がる怪物達を目の前にマトは切り抜ける方法を考えていた。


「どうする? マト。やる?」


マトはルチカを地面に下ろした。


マトはルチカにだけ聞こえるように小さな声で言う。


「俺の魔法で注意を引くから、その間に全力で走って神の世界に飛び込むぞ」


ルチカは反論することなく「しょーちした‼」と応えた。


マトは靴を脱いで裸足で雪の上に立った。


「じゃあ、行くぞ‼」


マトは両手を地面につけて土属性の魔力を使ってサーチを広げた。


マトのサーチはこの聖域のダンジョン全体まで広げられる。


全体にまで広がったサーチに付与された土属性の魔力を使ってダンジョン中の積もった雪を空へ押し上げた。


するとダンジョン中に雪が舞い、雪のカーテンが出来て魔物達の視界を奪う。


「今だ‼ 走れ‼」


二人はダンジョンの奥へ走り出す。


雪のカーテンは長くは続かないため、連続で雪を舞い上がらせる必要がある。


マトは裸足で地面に触れることでサーチを保持したまま土属性の魔力の力を使い続けた。


両手ではなく両足でサーチを行う方法はこれまで成功したことはなく、マトは賭けにでていたのだった。


二人は走り続ける。


その間、三匹の魔物達は攻撃を周りに打ち込むことでマトとルチカを仕留めようとした。


ほとんどの攻撃は当たることはなかったが、それでも十分マトへの脅威となった。


しかし、上級クラスの魔物三匹から逃げ切ることはそんな簡単なことではなかった。


それは雷描が放った雷だった。


雷はマトの足元に落ちてマトの足に傷を負わせた。


致命傷には至らなかったが、マトは態勢を崩して倒れる。


「マトォ‼ 大丈夫⁉」


マトは顔を上げて応える。


「ああ。大丈夫だ。急ごう」


そう言ってマトは立ち上がろうとしたが足の痛みで苦戦する。


それを見たルチカは人間の姿に戻るとマトに肩を貸して立ち上がらせて歩き始めた。


「もう少しだよ。マト」


しかし、ルチカは背後に三匹の魔物が立っていることを気配で感じ取った。


雪のカーテンがなくなったため、見つけやすくなっていたのだ。


マトもそれに気づいており「俺を置いていけ。ルチカ。お前だけでも神の世界へ行け・・・」


ルチカは言う。


「やだ。マト食べられちゃうもん。それにマトと神の世界に行きたい」


三匹の魔物は勝ちを確信したかのようにゆっくり二人を追いかける。


「駄目だ、ルチカ。りんごを届けないと世界が危険なんだ。俺一人の命よりも世界を取れ」


「だから、やだぁ。マトと一緒に行きたい。二人で神の世界を見るんだ」


「なんだよ、それ・・・観光しに行くんじゃないぞ・・・」


「ルチからしたらあんま変わんないもん」


「・・・そうか」


雷描は言う。


「そろそろいいか?」


氷狼は言う。


「その男だけでもいいぞ。食わせろ」


暴風将軍は言う。


「そのドラゴンと遊ばせろ‼ 風勝負だ‼」









そう言って三匹の魔物はマトとルチカに襲い掛かろうとした。


上級の魔物三匹の攻撃を目の前にしてマトが諦めかけたその時だった。


突然、吹雪と雷が止み、三匹の魔物が動きを止めた。


三匹とは違う声の誰かが言う。


「お前達の負けだ」


その声はマトとルチカには聞き覚えがあった。


それは聖域のダンジョンに入った直後、現れた獣の影が発した声と同じだったのだ。


マトとルチカは顔を上げてその声の主を見る。


それは巨大な鹿に似た魔物だった。


マトは言う。


「『ドリーデン』⁉」


ドリーデンを前に三匹の魔物は大人しく座っており、襲ってくる気配がない。


ドリーデンは言う。


「よくここまで辿り着いたな、人間達。もう逃げる必要はない。お前達は神の世界への扉をくぐる権利を得たのだからな」


「・・・権利?」


「この三匹の荒くれ者共が、お前達が持つりんごを食べたいとうるさいのでな。お前達が扉の前に来るまでに奪えと言ったのだ。もし奪えなければ人間達に扉をくぐらせると約束してな」


「まるでゲームじゃないですか・・・」


「すまないな。この馬鹿共を制御するのは簡単じゃないんだ」


ドリーデンの言い訳を聞いてルチカは「ぷんぷん」と怒った。


しかし、マトには他に不可解な点があった。


それをドリーデンが察してマトに語りかける。


「私がサーチに引っかからなかったことが不思議か?」


「はい。俺のサーチは聖域のダンジョン全体に達していました。なので、ドリーデンの存在を感じ取れていないのはおかしい」


ドリーデンはニコッと笑って言う。


「私の能力は知っているだろう」


「ええ」


「私もサーチ使い。この能力には長けていてね。サーチでサーチを打ち消す方法があるんだ」


「そんなことが⁉」


「この技術を応用すれば気配を消すことだってできる。隠密行動にはピッタリだぞ。試してみるといい」


マトは思う。


ブリンジャーに出会うまで自分のスキルは便利な能力だが、属性と絡めづらく、応用を利かせるのが難しいと考えていた。


しかし、属性の使い方を学んでから自分なりにサーチスキルの可能性を探ってきたつもりだった。


それでもドリーデンを見ていると自分の探求心の浅さを思い知らされる。


「もっと頑張らなきゃな‼」


ルチカは言う。


「ルチももっと強い風吹かせるぅ~‼」


ドリーデンは言う。


「さあ、この先に神の世界への扉がある。進みなさい。そして世界に安定をもたらしてくれ」


二人は扉へ向かって歩き始めた。

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