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12-3 復讐

親衛隊が壁にすり抜けたことでマトとブリンジャーが困惑しているとルチカが逃げようとするヴァルAに攻撃を仕掛ける。


ルチカは口から炎を吐きだし、ヴァルAに的中させる。


「アッチッチィ~‼」


ヴァルAの叫び声でマトとブリンジャーが、今自分達がやるべきことに気付く。


「すまん! ルチカ!」


「問題ないよぉ~」


だが、ヴァルAの体を燃やす炎が突然フッと消える。


「アチチ・・・」


ヴァルAは再び壁に向かって走り始めた。


それを見ると今度はマトが短剣を取り出してヴァルAに突き刺す。


「グヘァ!」


腹に短剣が突き刺さったヴァルAは叫び声をあげるがヴァルAは急に後ろに飛んでいき、短剣の刃から逃れた。


「なんだ、今の動き⁉」


ヴァルAはそのまま壁に向かって走る。


ブリンジャーは魔法をヴァルAに使用する。


するとヴァルAはフッと消えた。


ルチカが言う。


「うお! でた! 消える魔法!」


だが、今度は天井からヴァルAが降って来て三人の目の前に戻って来た。


「えぇ~⁉ キモオタの魔法も効かないのぉ~⁉」


ブリンジャーは考える。


ヴァルAは対象にとって必要な二択を出すことで対象の心を揺さぶろうとする。あくまで心理的に強制力が生まれていると錯覚させるだけで嘘の回答に警告やペナルティなどで対処することはない。


(やはり、協力者がいる⁉)


ブリンジャーはヴァルAを観察する。


ぬいぐるみのような質感を持つ体と猿のような見た目。


そして、いつも左斜め上を見ている黒い眼。


ブリンジャーは気付く。


(そこにいたのか‼)


ブリンジャーは「ヴァルA! お前の腹積もりは全て理解したぞ! くらえ! ヴァルA!」と言ってヴァルAに向かって魔法を仕掛ける素振りを見せる。


ヴァルAは身構える。


しかし、ブリンジャーは自分の右斜め上の背後に攻撃を放った。


ヴァルAから見て左斜め上、そこにいた存在にブリンジャーの金属の刃物が突き刺さる。


マトとルチカは振り返る。


そこには魔物『フック・ザ・ママ』がブリンジャーの攻撃に苦しんでいる姿があった。


人間の姿に似ているが念力を使う魔物。


ブリンジャーは言う。


「こいつが念力を使って壁のすり抜けやペナルティを行っていたんです」


「通りで能力以上の力を持っていたわけか」


ブリンジャーがフック・ザ・ママにとどめを刺すとヴァルAもこれまでのダメージが効いて叫びながら息絶えた。


「マト氏! ルチカ氏! 親衛隊の件ですが」


「はい。おそらく・・・」


二人がこれからの行動について話しているとどこか城を思わせる程の艶やかないカーペットの敷かれた廊下は一瞬の内に洞窟の中へと変わっていた。


「これが本当の姿ですね」


「行きましょう」


四人は洞窟の出口へ向かって走り出した。




            ◇◇◇





親衛隊のリーダーであり筋骨隆々の男・ガルガは、自分の筋力を起因としたパワーには自信があった。


巨大な岩を殴って鍛えた拳はどんな魔物や魔法をも撃ち砕くことができると思っていた。


その磨き抜かれた拳は今、騎士団の実質的指揮官であり王の参謀・ハーゲンの顔を血だらけになるまで殴打していた。


ガルガは言う。


「答えろ‼ ガウトさんはどこだ‼ お前が殺したんだろ‼」


既に気を失っているハーゲンに答えることはできない。


「くそ‼ 死んじまったかぁ?」


作り笑顔の女親衛隊・スクリは「まだ生きてるよぉ~」と言った。


ハーゲンを見下しながら長髪の女親衛隊・ハ―ミは言う。


「見かけによらず、頑丈ね」


親衛隊で一番実直な男・リッグは「それぐらいにしなさい。人殺しになりますよ」


リッグの言葉を聞いたニヤケ顔の男の親衛隊・ビリアは言う。


「もう人殺しでしょう・・・ボクら」


ガルガは言う。


「あれはアイツが悪い。ちょっと俺達のフォローをしただけでガウトさんや俺達の近くをちょろちょろし始めやがって」


ハ―ミは言う。


「あいつ、名前何だっけぇ?」


リッグは「たしか、パーンと言った筈です」と答えた。


スクリは「あの人ぉ~弱すぎっ! もっと強い奴と戦いた~い」と言った。


ビリアは言う。


「キミは戦いたいんじゃなくて殺したいだけでしょう・・・。まったく、それでよくヴァルAの質問切り抜けられましたね」


「傷つけるのが好きなのと殺すのが好きなのは、ヴァルA的に違うらしいよ」








そう五人の親衛隊が話していると「それは本当か‼」と洞窟の道から声が聞こえた。


親衛隊が振り返ると開けた場所の入り口にマト、ルチカ、ブリンジャー、騎士団の男が立っていた。

ガルガは言う。


「おーう! お前ら来たのかぁ。そのツラってことはもう俺達が人殺しだって察しがついてんだよなぁ」


マト達は顔面を血だらけにしたハーゲンを目で捉える。


「ハーゲン閣下から離れろ‼」


ガルガは「お~こえ~」と言ってハーゲンを隅に投げた。


マトは言う。


「パーンを殺したとはどういうことだ‼」


「簡単なことだ。俺ら親衛隊とガウトさんの秘密を聞かれたから口封じに殺したんだ」


「ガウト隊長と・・・?」


ブリンジャーは周りを見渡して言う。


「ガウト隊長がいません⁉」


ガルガは続ける。


「俺達親衛隊はベルセルクの子孫でな、それを伏せてこれまで生きてきた。


だが、俺達の中に流れるベルセルクの血が神の世界へ戻りてぇと騒ぐんだ。


神の世界で戦争に参加したいってな。だから、俺達の育ての親であるガウトさんと手を組んで神の世界を目指した」


「何故ガウト隊長なんだ!」


「ガウトさんは神の世界にある特別な力を欲していたんだ」


「それを聞かれたからパーンを殺しただと・・・?」


「ああ。この拳で殴り殺してやったよ‼」


「ふざけんな‼ そんなことを知られた程度で人を殺してんじゃねぇよ‼」


「お前らにベルセルクの血が流れていることがどんなことかわかるか‼ 


ベルセルクの狂乱後、都市に帰った女達がどんな目で見られたかわかるか! 


狂乱後妊娠が発覚した元被害者の女は都市の奴らからベルセルクの子を孕んだと迫害されたんだ‼ 


それだけベルセルクを民衆は恐れていた。そして今もそれは変わらない。


ベルセルクは野蛮で汚らしいモノだと教えられる‼ こんな世界でまともに俺達が生きていけると思うか‼」


ブリンジャーは言う。


「だから、隠し通すためにパーン氏を殺したと?」


「そうだ!」


ブリンジャーは怒りの籠った声で言う。


「あなたたちの苦しみは同情します。しかし、やはり何の罪もないパーン氏を殺したことは許せません」


ルチカは言う。


「ルチもこいつら倒す‼」


マトは言う。


「許せねぇよ・・・・・・許せねぇ・・・・・・許せぇよなぁ‼」









親衛隊は身構える。


ガルガは「お! 怒りってやつか? 俺にはねぇなぁ! 俺はよぉ、怒りや悲しみ、嘆き、後悔、そういうもの全部感じねぇんだわ! 痛いふりはできるがなぁ!」と言った。


マトとルチカはガルガへ向かって行く。


ガルガ以外の四人の親衛隊も好戦的な態度をとるがブリンジャーが四人の前に立つ。


「君達はぼくの相手をしてもらうよ」


ハ―ミは言う。


「あん? 一人でか? 舐めてんの?」


「本当はぼくもガルガ氏をぶっ飛ばしてやりたいけれど、マト氏達の友情の邪魔はできないですからね」


ハ―ミが「ふんっ! なぁにが友情だ! ふざけた理由でアタシらに戦いを挑んだことを後悔させてやる! アンタらいくよ!」と息巻いてスクリ、リッグ、ビリアに声をかけたが何故か返事が返って来なかった。


ハ―ミが横にいるはずの三人を見るとそこに三人の姿はなかった。


「なに⁉」


ブリンジャーは地面を指さしながら言う。


「その三人ならもう落ちましたよ」


「はっ⁉ どういう意味だ‼」


「ぼくの魔法で穴に落としました」


「魔法・・・? この一瞬で・・・?」


「ええ。落ちて行く先はいくつかありますけれど、三人が落ちた穴には底がない。ぼくの最も強力な技です」


「それはおかしい‼ 穴を空ける魔法はあっても底のない魔法なんて物理的に無理だ‼」


「ぼくならできるんですよ。生まれた時からずっと魔法の研究をしているのでね」


「生まれた時から・・・・・・⁉ お前、何者だ‼」


ブリンジャーは答える。


「イーブ博士って言えばわかりますか?」


「あの・・・正体不明の天才魔法研究者・・・」


「そう。まだ世に出していない魔法技術が山のようにあるんですよ」


ハ―ミは右手で握っている短剣を魔法で大剣に変える。


「お前が誰だろうと殺してやるよぉ‼」


「もう遅いですよ。君はとっくに落ちています」


「えっ⁉」


ハ―ミの足元に穴が空き、声を出す間もなく穴に落ちていく。


ブリンジャーは言う。


「冥界にすらいけないよ」


穴は塞がった。









マトはサーチをガルガのところまで広げて炎を放出する。


ルチカもガルガに向かって口から炎を吐きだす。


しかし、痛覚の無いガルガは二人の炎をものともせず二人に向かって突っ込んでいき、マトの顔面に殴打を食らわすと助けに入ったルチカの顔面にも殴打を放った。


二人は勢いのまま吹っ飛ばされて壁に体をぶつける。


「くそっ」


ガルガは二人にゆっくり近づく。


「どうした? 来いよ! 俺に復讐したいんだろ?」


マトは土属性の魔力を使いサーチをガルガまで伸ばしてガルガの足を土の手で掴んだ。


「おっ! なんだぁ?」


更に地面から土の拳がガルガの顔を狙って飛び出すとガルガは自分の拳で土の拳を打ち砕き、足元の土の手も蹴り飛ばすように容易に払った。


今度はルチカが全力の風魔法をガルガに放つ。


ルチカの風を体全体で受けたガルガだったが、飛ばされることなく耐え、拳を全力で振りぬき、衝撃波をルチカに当てた。


(なんだこいつ⁉ 頑丈過ぎるだろ‼)


ルチカはドラゴンに変身して全力の炎の弾を放つ。


ドラゴンの炎をも拳で砕こうとガルガは炎の弾を殴打する。


しかし、炎は砕けず、ガルガの体を燃やす。


「ほう。熱くねぇが、体は燃えてんなぁ。このままじゃ灰になっちまう」


ガルガは体にタメを作り一気に力を解放することで体の炎を振り払った。


そして、瞬時にマトに近付き腹を三発殴打して吹っ飛ばすと、ルチカの顔面にも全力の殴打を食らわした。


ルチカは壁に叩きつけられるとポンッと人間の姿に戻ってしまう。


マトはガルガの強力な攻撃によるダメージで地面の上にうつぶせで倒れた。


意識が朦朧とする中、パーンの顔が思い浮かぶ。


(パーン・・・。ごめん。あの時お前を一人にしてしまって。ルチカの言う通り引き留めていれば、お前は死なずに済んだかもしれないのに・・・)


するとマトの目の前の景色が変わる。


そこは暗く居心地が良いとは決して言えない場所だった。


だが、マトの目の前にはパーンが立っていてそんなことは気にならなかった。


パーンは言う。


「後悔させて悪いな。マトの判断は正しかったと思うぜ。それに俺の事、信用してくれて嬉しかった。死んじゃったのは俺が判断をミスしたからだ。マトは悪くない」


マトは言う。


「でもよぉ・・・パーン・・・お前・・・」


パーンはマトの肩に手を置く。


「まだ、戦いは終わってないだろ。こんなところに来るな」


パーンはそう言うとマトの胸をポンッと押した。









マトが意識を取り戻すとルチカがガルガに首を絞められていた。


「くっうううう」


「ルチカァ‼」


マトはサーチを伸ばして土属性の魔力を使ってガルガの足元に地割れを起こす。


ガルガが地割れに気を取られている隙にルチカはガルガの手から抜け出し、マトの隣に行く。


「どうする? マト」


「俺に考えがある。ルチカ、氷魔法を使ってくれ」


「氷? でもルチの出力じゃあ、マトの風があってもアイツを凍らせられないよ」


「わかっている。俺を信用してくれ」


マトの真剣な表情にルチカは「うん。わかった」と応えた。


ルチカが氷魔法を発動すると体中から冷気が放出される。


マトはルチカの周りに円形に風属性の魔力でサーチを発動させる。


マトはサーチ内に風を発動させると、最大出力の風を発生させた。


凄まじい勢いの風は冷気を巻き込んでルチカの周囲を竜巻のように回る。


そして竜巻が晴れると氷のドレスを纏ったルチカが現れた。


ガルガは言う。


「ほーう。おめかしタイムだったか」


ルチカの冷めたような表情はこれまでの天真爛漫な姿とは違う印象を受けた。


ルチカはガルガに氷の塊を飛ばす。


ガルガは飛んでくる氷の塊を自慢の拳で向かい打つが拳が氷に触れた瞬間、手の甲が凍り始める。


「うわっ⁉ なんだこりゃ‼」


みるみるうちにガルガの右腕を凍らせていく。


ルチカは更に氷の塊を飛ばす。


ガルガは左手で右手の氷を砕こうとするが硬くて砕けない。


砕くのを諦めたガルガは飛んできた氷を避けてルチカに向かって突進する。


ルチカはガルガの殴打を避けるが腹を蹴られる。


しかし、蹴った足を凍らすことに成功するとガルガは一瞬怯んだ。


それでも捨て身の突進をするガルガの攻撃に血の海の前までルチカは押されてしまう。


ガルガは言う。


「ちっとはパワーアップしたみたいだが、血の海にドボンで終わりだ」


すると背後でマトは風属性によるサーチをガルガまで伸ばした。


「終わるはお前だ‼」


「は? お前に何ができる?」


「痛みを感じないんだってな。でもあいつが教えてくれるってよ。あの世でな」


マトは以前パーンから貰った短剣を、サーチを展開している地面に突き刺した。


その瞬間、短剣が放った鋭利な衝撃が風によって斬撃に変わり、ガルガに襲い掛かった。


ガルガは言う。


「そんなの効くかぁ‼」


ガルガは拳で斬撃を払う。


だが、ガルガ後悔した。


マトのこの行動は囮だった。


ルチカは言う。


「まだ喋ってんの? 自分が凍っていることにも気づけないなんて滑稽ね」


ガルガの体はマトの相手をしている間にルチカの氷に侵され、全体が凍り付いてく。


氷がガルガの表情をも凍らせる。


「くそがぁ‼」


ガルガは完全に凍った。









ルチカの氷のドレスが解除され、マトのもとに駆け寄る。


「よくやった。ルチカ」


「あんなカッコいい合体技ができるなら早く言ってよぉ~!」


「いや、俺も賭けだったんだ。まさか、想像通りのことができるなんて・・・」


二人がそう話しているとガルガの氷が割れる。


ガルガは息切れをしながら「まだ・・・終わっていないぞ・・・」と言った。


「しぶといな」


しかし、ガルガは急に黙って自分の足元を見つめ始めた。


「な、なんだよこれ・・・」


マトとルチカには何も見えない。


だが、ガルガには黒い二本の手が地面から伸びているのが見えていた。


「こ、こっちにくるな‼」


後ずさりするガルガの足を黒い手は掴んだ。


するとガルガはバランスを崩して、血の海に落ちそうになる。


「あー‼ やめろ‼ はなせ‼」


黒い手はそのままガルガを血の海に引きずり込んだ。


「あーーーー‼」


血の海に落ちたガルガは大量のブロミヌに食われながら沈んで行く。


マトとルチカには黒い手は見えなかったが、マトはなんとなくパーンの気配を感じていた。


「パーン・・・?」

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