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12-1 モフドラ、狭間のダンジョンへ行く

門を開くとそこには、赤いカーペットが敷かれた長い廊下があった。


とてもダンジョンの中とは思えないその廊下は、城の中を思わせる豪華さと清潔さがあった。


十一人がその光景に困惑していると目の前に猿のぬいぐるみのようなものがポンッと落ちてきた。


猿のぬいぐるみに愛嬌はなく、黒い眼球は斜め上を見つめていた。


その瞬間、十一人の頭の中に謎の声が流れ始めた。


「アナタ ハ ダレカ ヲ ニクンデ イマス カ? 『イエス』『ノー』」


十一人はその猿の見た目のぬいぐるみと二択の質問からある魔物を思い出す。


「『ヴァルA』⁉」


対象に二択の質問をして強制的に選ばせる魔物。


答えなければ先には進めない。


状況を理解した十一人はヴァルAからの質問にイエスかノーで答える。


十一人が答え終わるとヴァルAが「センタク カンリョウ」と言った。


すると急にガウトとハーゲンが浮かび上がり、廊下の壁に向かって飛んでいった。


「隊長‼」


「ハーゲン閣下‼」


壁に叩きつけられるのではないかと一同が心配する中、ガウトとハーゲンは壁をすり抜けて消えて行った。


マトはすぐさまヴァルAに向きなおり攻撃を仕掛けようとしたが、既にヴァルAの姿はなくなっていた。


「逃げられたか‼」


ブリンジャーは冷静に言う。


「しかし、ヴァルAにあんな能力があったなんて驚きだ」


「俺は初めて遭遇しました。魔物図鑑にも書かれていない動きでしたね」


ガルガは壁を確かめて壊せそうにないと判断するとブリンジャーに言う。


「分析もいいが廊下を進んで探しに行った方が良いのでは?」


「そうですね。行きましょう」


返事を聞くと親衛隊は廊下を走り始めた。


マト、ルチカ、ブリンジャー、騎士団の男も親衛隊の後を追って走り出した。









廊下の天井には蠟燭のシャンデリアがあり、明るさには困らない。


壁には等間隔で男の肖像画が飾られていた。そのどれもが見たことない男達のものであった。


五百メートル走ったところでガルガは言う。


「おかしい! ここの廊下長すぎないか!」


ブリンジャーが言う。


「なんども同じ場所を走っているような感覚がしますね」


代わり映えのしない廊下をひたすら走ったことで廊下の異様さを不審に思い、親衛隊や騎士団の男はざわつき始めた。


するとマトが「ここさっきも通りましたよ」と言うと壁に飾られている絵画を指し「この絵を見るのはもう三回目です」と言った。


「マト氏。それは本当ですか?」


「はい。ここを見てください」


マトが壁についている小さな引っかき傷を指さす。


「これ、俺が前にこの道を通った時につけといた印です。これがあるってことは同じ道を何度も通っているということです」


「なるほど。マト氏いつのまに」


九人が廊下のループをどうやって抜け出すか話し始めたその時、再びヴァルAが姿を現す。


可愛げはなく、斜め上を見ているためマト達と目線も合わない。


そんな猿が現れたことで九人の頭の中に質問が聞こえる。


「アナタ ハ セカイ ヲ コワシタイ? 『イエス』『ノー』」


質問に答えなければいけない、と九人は思う。


各々が脳内で答えると「センタク カンリョウ」とヴァルAが言って壁の側にトコトコと歩いて行って壁をすり抜けて消えた。


一度目の質問の時とは違い、誰も壁の向こうへ運ばれなかったことで九人は不審に思う。


ガルガは言う。


「これで終わりか?」


「そのようですね」


ブリンジャーは言う。


「飛ばされた先がどこかはわかりませんが、そっちの方が進展する、なんてことはないでしょうね・・・」


九人は再び廊下を走り出した。


三周したところでこれまで通りヴァルAが現れた。


態度も視線も相変わらずで質問を投げかける。


「アナタ ハ チ ガ スキ? 『イエス』『ノー』」


九人が質問に答えるとヴァルAは決まり事を言って壁に消えて行った。


ブリンジャーは言う。


「またですか。何か手を打つ必要がありますね」


ガルガは言う。


「次現れた時に仕掛ける必要がありますね」


九人が廊下を走り、三周するとヴァルAが四度目の登場をする。


「アナタ ハ ヒト ヲ キズツケル コトガ スキ? 『イエス』『ノー』」


ガルガは質問に答える前に他の四人の親衛隊と話し始めた。


少し経って親衛隊の会議を終えるとガルガはマト、ルチカ、ブリンジャー、騎士団の男に話しかけた。


「みなさんがこれまでの質問で選んだ選択は『ノー』ですね」


マトを含む四人はこれまでの三度の質問に全て『ノー』を選んでいた。


「私達親衛隊も全員全ての質問に『ノー』と答えてきました。おそらく今回のみなさんの選択も『ノー』だと思います」


四人はガルガの予想を肯定した。


「それがいけないのかもしれません。おそらくヴァルAは、どの選択をしたかで壁の向こうに飛ばすかどうかを決めていたのだと思います。


なので、あえて私が『イエス』を選択します。これまでとは違う選択をすることでヴァルAの動きを見てみましょう」


ブリンジャーは言う。


「二手に分かれるという意味ならば、ぼくも『イエス』を選択します」


「いや、これは検証です。まだ、どうなるかはわからない。取りあえず私だけを使って試させてください」


四人はガルガの強い意志に共感し、納得した。


全員が答え終わるとヴァルAは「センタク カンリョウ」と言った。


九人がヴァルAの動きに注視していると突然ヴァルAは顔を真っ赤にして暴れながら言う。


「警告‼ 警告‼ 噓つきはペナルティ‼ 噓つきはペナルティ‼ 警告‼ 警告‼」


マト、ルチカ、ブリンジャー、騎士団の男、親衛隊四人がヴァルAの豹変ぶりに困惑していると「ぐあっ!」というガルガの叫び声が聞こえた。


一斉に八人がガルガを見る。


ガルガは自分の右足の太腿を剣で刺していた。


「何をしているのです⁉ ガルガ氏‼」


「わからねぇ・・・急に手が勝手に動いて・・・」


ヴァルAは言う。


「警告‼ 警告‼ 警告は自傷‼ 質問に嘘をつくと『死』‼ もう一度嘘の選択をすれば死にます‼」


ガルガは汗を流しながら痛みを堪えた表情で言う。


「・・・どうやら正直に答えなければ突破は難しそうだな」


他の親衛隊がガルガの怪我の手当てをする。


ブリンジャーは訝しげに言う。


「ヴァルAの能力にここまでの強制力があるなんて・・・」









手当てが終わるとガルガは先頭に立って言う。


「申し訳ない。私は動けます。次の質問地点まで急ぎましょう」


ブリンジャーは言う。


「しかし、次の手はどうしますか」


マトは言う。


「あのぉ、ヴァルAと戦闘はできないのでしょうか」


「ヴァルAを殺すということですか?」


「これまでヴァルAが出現すると図鑑に書かれている通り、質問に答えなければ膠着状態が続くと思っていました。しかし、質問に答える前に攻撃が通るかどうか試してみる価値はあると思うんですよね」


ガルガは言う。


「確かに。何故か質問に答えなければ何もできないと考えていました」


ブリンジャーは少し考え、言う。


「マト氏の言う通りですね。いつのまにかヴァルAと戦うことを選択肢から除外していました。次はヴァルAと戦ってみましょう」


そして九人が走って廊下を三周すると目を合わせようとしない猿のぬいぐるみが待っていた。


ガルガが剣を抜き「来たか。みなさん戦う準備をし・・・」とそこまで言うと九人の頭の中に質問が聞こえてくる。


「アナタ ハ ヒト ヲ コロシタ コトハ アリマス カ? 『イエス』『ノー』」


その質問が聞こえた瞬間、親衛隊は戦おうとするのをやめる。


マトとブリンジャーは親衛隊の異変に気付き様子を伺う。


中々質問に答えないマト達にヴァルAは「センタク シテクダサイ センタク シテクダサイ」と催促する。


ガルガはマト達と目を合わせず、感情の籠っていない冷たい口調で言う。


「みなさん。選択して下さい」


「いや、しかし・・・」


ガルガは続ける。


「みなさん。選択して下さい」


他の四人の親衛隊もガルガと同じ態度で真顔のまま一点を見つめている。


マト達四人は困惑しつつ親衛隊の言う通り質問に答える。


するとヴァルAが「センタク カンリョウ」と言うと親衛隊が浮かび上がり、壁の向こうへすり抜けて行った。

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