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11-5 モフドラ、ヨルムンガンドのダンジョンへ行く

「ガウト隊長が消えた⁉」


四人の親衛隊が取り乱す。


「ガ、ガウト隊長!」


「ど、どうする!」


「私達とガウト隊長は一心同体! 触れるに決まっているだろう!」


「オ、オレもだぁ!」


そんな焦る四人を静止して、ガルガは冷静に分析する。


「存在が消えたのか? 塔のダンジョンのように取り込まれたのか、別の場所に移動したのか」


ハーゲンが反応する。


「移動・・・か」


マトは言う。


「ドラゴンは神の世界に行くためには『月』を見つけろと言っていました。なら『月』が神の世界に移動させる力を持っていてもおかしくないですよね」


ガルガは月を睨み「もし、神の世界に行ったのなら、一人では危険だ!」と言って月に近付いた。


ガルガは月に手を伸ばす。


「私が入ります」


すると大穴の下の方から何か硬いものがぶつかる音がする。


「なんの音だ?」


親衛隊は焦る。


「それよりも早く! ガウト隊長のところに!」


「わかった」


ガルガが月に触れるとガウト同様、フッと消えた。


残った親衛隊四人も他のメンバーに何も言わずに月に触り次々と消えて行った。


ブリンジャーは言う。


「ハーゲン閣下。どうしますか?」


大穴の下から金属が擦れる音や硬いものがぶつかり合う音が増える。


ハーゲンは一度、音がする大穴の下へ視線を動かしてから「この先に何かあるのだろう。ただ、神の世界とは思えんな」と言った。


「では・・・」


「行くぞ。お前達。気を抜くな」


五人は同時に月に近付く。


ルチカは言う。


「楽しみだねぇ~」


五人が月に触れた瞬間、目の前の光景が切り替わった。


その光景を見た五人は驚愕する。









五人の目の前で繰り広げられていたのは、ガウトと親衛隊が十匹の『触手クラゲ』に囲まれながら戦っている姿だった。


五人は瞬時に状況を把握して、助けに入る。


触手クラゲは触手をうねらせて伸ばし、あらゆる方向から攻撃を仕掛ける。


マトは短剣を取り出して触手に切りかかる。


ハーゲンと騎士団の男も剣で応戦し、ブリンジャーは魔法によって目の前の触手クラゲを簡単に消し去る。


五人に気が付いたガウトは言う。


「頭上に気を付けてください! 『雫霊』が降って来ます!」


雫霊は何かに触れた瞬間肥大化して硬くて重い金属に変化する。


触手クラゲに気を取られているマト達に向かって雫霊が落ちてくる。


マト達は間一髪で避けるも触手クラゲの攻撃をかわしきるのは難しく掠り傷を負う。


大量の液体が天井から染み出てきて再びマト達の頭上に落ちようとしている。


それに気づいたルチカは大量の雫霊に向かって風魔法で吹き飛ばすと雫霊は壁や天井に当たって金属になり、キンキンと音を立てて端の方へ飛ばされていった。









雫霊の邪魔がなくなり、ブリンジャーの活躍もあって触手クラゲ達はいなくなった。


ブリンジャーは言う。


「ここはどこなんでしょうか」


ハーゲンが応える。


「おおよそ、大穴の底だろう」


ガウトはブリンジャーの背後を指さす。


「あっちの方に行けば大穴の入り口が見えます」


ハーゲンが言う。


「ならばここはモーイモグラが大穴を横に掘り始めてできた空間か」


「そうだと思います」


「月は何故、我々を大穴の底へ移動させたのか」


今度はガウトが反対の方を指さす。


「あっちに道が続きます。その先に答えがあるかもしれません」


月面探索チームはガウトが指す洞窟のような道を進むことにした。


暫く進むと少し開けた場所に出た。


そこは照明魔道具が必要だった洞窟の道とは違って薄明かりがあった。


ポチャポチャと水の落ちる音がする。


十一人の横を海水スライムが歩いて行く。


それを目で追うと海水スライムは開けた場所の奥にある水の溜まり場を発見する。


十一人は海水スライムが大穴に水から落ちてここに海水を運んでいるのだと察した。


しかしそれだけではなかった。


海水スライムによって作られた小さな海の水辺に人影があった。


十一人は凝視してそれの正体を探った。


そしてマトは気付いた。


「あれは水辺のお・・・」


とマトが言いかけた時、十一人は絶句する。


巨大な女の顔が十一人の目の前に迫って来ていたのだ。


瞬きをする間もなく、月面探索チームは気付くとレンガで出来た地下道のような場所に立っていた。


「な、んだ? 今の・・・」


ハーゲンは言う。


「『水辺の女』の仕業だな」


ガウトは言う。


「また移動ですか。しかし、これもきっと意味のある移動なのでしょう。やはり、神の世界へは『空間の歪』を探す必要がありますね」


「その歪がこの先にあるのかもしれない・・・か」









地下道の壁には松明が取り付けられており、明かりには困らなそうだった。


月面探索チームは道に沿って歩き出した。


すると地下道全体からゴゴゴッと音がする。


揺れは感じないが何かが迫ってきている感覚がした。


「なんだ⁉ 何かが来る‼」


その瞬間、十一人は宙に浮きそのまま何かに押されるように地下道を流され始めた。


水もない風が吹いているわけでもないそんな空間で地下道の中を流されていく。


(うっ、息苦しい・・・)


何故か呼吸をすることも難しく、態勢を整えることも許されない。


何かできることはないかとマトが周りを見渡すと地下道の奥の方から半透明の物体がマト達の方へ向かって来ていた。


それを他の十人も気づいて警戒して見ているとそれは半透明の大きな蛇だった。


大蛇は急激に速度を上げて近付いてきた。


ハーゲンは剣を引き抜いた。


半透明の大蛇が十一人を飲み込もうと鋭い牙を光らせ大きく口を開いた。


ハーゲンは剣を横に構え目の前に来た大蛇に当てようとしたが大蛇がすり抜け、そのまま十一人を口の中に入れ飲み込んだ。


何が起こるのかと十一人は身構えたが、飲み込まれたからといって蛇の体の中に移動したわけでもなく、今まで通りの地下道で流され続けている。


ハーゲンの剣が当たらなかったことから大蛇の攻撃もすり抜けたのだと十一人は考えた。


だが、すぐにそれは間違えだったのだと気付く。


マトは急に吐き気を催した。


ゴポッと空気を吐き出す。


それに気づいたルチカがマトの所へ行こうともがくがルチカも突然吐き気に襲われる。


他の九人も同様で吐き気が始まり中々収まらない。


視界が薄れる中、マトは近くにいるルチカを見るとルチカの顔に紫色の痣ができていることに気付く。


マトは瞬時に自分の手足を確認すると自分にもルチカと同じ痣が複数できていた。


他のメンバーにも痣があるのを確認するとマトは事の重大さを把握し頭をフル回転して考え始めた。


(月の存在や移動については不明なことだらけだ。でもモーイモグラの大穴はれっきとしたダンジョンだ。


それに月によって移動させられた場所もあくまで、大穴の一部。


その先でこの地下道に移動させた水辺の女もただの魔物だ。つまりここもダンジョンであると考えた方が自然。


今直面しているこの現象をダンジョンのギミックだと仮定するならば、これらを可能とするエネルギー源となるモノがあるはずだ。それを探し出すしかない)


流され始めてからは、声を発するができない。


ルチカも苦しんでいる。


マトは一人で見つけようと地下道内を見渡した。


(おそらくこの空間自体があの蛇の体なんだ。俺達は地下道に飛ばされた瞬間から蛇の中にいたんだ)


地下道内をいくら見渡してもそれらしいモノは見つからない。


しかしマトにチャンスが訪れる。


無秩序に流されたことで壁に接近したのだ。


マトは壁に手を伸ばして触れ、サーチを発動した。


地下道の壁、天井、床にできるだけ早くそして広くサーチを行った。


すると、百メートル先の天井に魔法が込められた石が埋め込まれていることに気付いた。


(これだ! あとは、どうやって天井に近付くかだ)


マトは流されながら床に近付いた。


(チャンス!)


マトは床に近付いた一瞬の内に床に触れ、土属性の魔力でサーチを発動して床を盛り上がらせて自分を天井へ向かって弾いた。


床から弾かれたマトはそのまま天井に向かって行き、丁度魔石付近の天井に接近する。


マトは天井に触れてサーチを広げ、土属性の魔力で天井を動かし魔石に打撃を与えた。


衝撃によって天井から吐き出された魔石は月面探索チームと同様、宙に浮いて流され始める。


(しまった!)


焦るマトだったが、一連の流れをぼやける視界で見ていたルチカは流れていく魔石へ向かって炎を吐いた。


炎は魔石に命中し、床に砕け落ちた。


魔石が砕けた瞬間、流れは収まり、十一人は床に足をついた。


体の痣は消えて気持ち悪さもなくなった。


十一人が安堵の表情を浮かべる間もなく、地下道がゴゴゴゴゴと揺れを伴って動き出す。


「今度はなんだ⁉」


困惑していると月面探索チームの目の前に床から大きな門が現れた。


ガウトは言う。


「この先へ進めと言うのか・・・?」


十一人は意思を確認し合い、門を開けることにした。


ガウトは門を押した。

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