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11-3 大穴の支配者

イーブ博士は二十五年前『魔法発生からこれまで』という魔法技術の歴史のレポートと共に突然現れた魔法研究者である。


年齢、経歴不詳であり姿も誰も見たことがない。


レポート発表から二年後、彼は魔法技術開発者として照明魔道具を開発し、広く知名度を獲得する。


その後も魔法に関する理論を次々と発表、更に複数の魔法道具の開発で人々の生活を豊かにしてきた。


そんなイーブ博士が開発した安全装置付きロープを使ってマト達はモーイモグラの大穴を降りる。


ガウトは言う。


「このロープは縛り付けた場所に本人が魔力を流さない限りは解けません。


ロープは体に取り付けた安全装置から伸びていて使用者が意図しない限り伸び縮みすることはありません。


安全装置を付けていればバランスシステムが作動し、壁に直立でき、そのまま地面を歩くように大穴の壁を降りることが出来ます。


しかし、体のどこかが壁に触れていなければバランスシステムは作動せず落下してしまいます。


これらの機能を利用して壁を歩いて降りますが、ロープに内蔵されている魔力量を節約するために、あまり激しい動きは推奨できません。無論、魔物との戦闘では止むを得ませんが。


ロープは魔力によって耐久度は上がっていますが、盲信してはいけません。


魔物の攻撃を何度も受ければ千切れます。ロープの長さは改良によって『月』のある場所まで伸びるようになりました。


以上です。質問がないようであれば、安全装置を装着しましょう」


十一人の月面探索チームはそれぞれ安全装置付きロープを魔法釘に巻いて、ロープを放出する安全装置を体に取り付けた。


全員の準備が整ったのを確認したガウトが言う。


「それでは出発!」








マト、ルチカ、ブリンジャー、ガウト、親衛隊五人、ハーゲン、騎士団一人は安全装置を起動させて降り始めた。


大穴へ恐怖心を抱くマトには大穴への一歩目は難しく感じた。


横への歩行から縦への歩行に急に切り替えることは簡単なことではないのだ。


体のどこかがついていれば良いのだが、マトは足の裏を大穴の壁にくっつけようと試みた。


しかし、無理な態勢を取ったせいでズルズルズルと滑って寝転ぶ形で大穴の壁の上に乗った。


バランスシステムが起動したことでマトはそれ以上落ちることはなく、深いため息をついた後、安全装置に感謝した。


それを見ていたルチカが「壁の上で寝るなんて斬新だね!」と言った。


飛べるはずのルチカも「楽しそう」という理由で安全装置付きロープを使って降下する。


「やっほー!マトォ!楽しいねぇ!」


底の見えない大穴をロープ一本で降りることが楽しいわけがない。


マトは恐怖との戦いで脳のキャパシティの多くを占めていたため声を出す余裕がなく心でそう突っ込んだ。


十一人が順調に降りていく中、ガウトはあることに気づく。


「皆、止まってくれ」


ハーゲンは言う。


「なんだ?問題でも起きたのか?」


「百メートル付近に配置した見廻隊員がいない」


「なんだと・・・確かに配置したんだな」


ガルガか言う。


「どうしますかガウト隊長」


「何かあったのかも知れませんが、先に進みましょう。みなさんもこのように想定外のことが起きます。用心してください」


ハーゲンは言う。


「そんなものとっくにしている!それに見廻隊員一人いないだけで騒ぐな」


再び月面探索チームは大穴を降り始めた。


薄暗かった穴の中が進んでいくことで視界がより悪くなった。


照明魔道具を起動する。照明魔道具は浮いているため手を使う必要がなく、使用者の周囲に留まろうとする。


二百メートル付近に到達するとガウトは配置した見廻隊員を確認するがここにもいない。


ハーゲンは言う。


「いないようだな。やはり報告された魔物以外も生息しているな」


ハーゲンがそう言った瞬間、騎士団の男が「ぐわっ!」と叫んだ。


ハーゲンは振り向くと騎士団の男は足から血を流していた。


「どうした⁉」


騎士団の男は壁を指さして「何かが壁の中から攻撃を・・・」








ハーゲンはチーム全体に言う。


「魔物の攻撃を確認! 魔物は壁の中を潜る能力を持つ! 各自照明魔道具を利用し、迎え撃つ態勢を整えよ!」


マトはルチカと背中を合わせて足元を警戒した。


大穴の十一人は静まり、壁に意識を集中させた。


するとシャーという音が微かに聞こえた。


音を辿ると壁からサメの背びれのようなものが出ており、ガウトに近付いていた。


「隊長!」


ガウトは腰にぶら下げていた剣を取りだして壁から飛び出してきた『シャドーシャーク』の牙を受け止めた。


(そうか。影が濃くなった場所ならこいつがいてもおかしくない)


シャドーシャークは影の中を泳いで移動する。


自由に動けるテリトリーに獲物が自ら入ってきたのだ。


シャドーシャーク達の動きは活発化している。


ガウトは剣で牙を弾くとシャドーシャークは影の中に潜り、別のターゲットを探し始めた。


「奴はまだ生きています!」


親衛隊はガウトへ急いで近づこうとする。


ハーゲンの周辺で背びれが出てくるのを確認する。


マトは言う。


「ハーゲン閣下! 後ろです!」


ハーゲンは振り向き剣を抜いて構えた。


シャドーシャークは噛みつこうと口を開いた。


ハーゲンはギリギリまで引きつけようと構えていたがシャドーシャークはハーゲンの手前でハーゲンの足元に潜った。


「なに⁉」


シャドーシャークはすぐにハーゲンの背後の影から出て来て襲い掛かる。


ハーゲンは精一杯素早く振り返って剣を構えようとしたがシャドーシャークの方が早く、牙がハーゲンの腕に触れようとしていた。


その時、シャドーシャークの体に鋭利な鋼の物体が突き刺さる。


シャドーシャークの体から血が噴き出して「プシャー‼」と鳴いて倒れ込んだ。


ハーゲンは言う。


「ブリンジャーか・・・よくやった」







ハーゲンやガウトが安堵する中、マトとルチカが危機感を抱く。


「まだです!」


シャドーシャークは一匹ではなかった。


猛スピードで背びれがマトへ向かって進む。


マトは短剣を取り出す。


牙を剥き出しに突進してきたシャドーシャークを短剣で受け流して背後にいるルチカの方へやる。


体全体が飛び出たシャドーシャークを目前にルチカが口から炎を吐きだそうとしたその瞬間、凄まじい魔力を放出する何かが十一人の側に現れた。


ブリンジャーはすぐに気配がする方を確認したが既にそこには何もいなかった。


だが、問題が発生した。


ハーゲン、ガウト、親衛隊四人、騎士団の男そして、マトの計八人が急激に大量の魔力を浴びたことで意識を失い、バランスを崩して壁から離れてしまっていた。


八人は逆さの状態でロープに吊るされており、落ちてはいなかったがブリンジャーの目に最悪の光景が写る。


影に隠れていたのであろうシャドーシャークの群が、八人が吊るされているロープに齧りついていたのだ。


ブリンジャーは慌てて、一番近くにいたマトに手を伸ばすがマトは既に落ち始めていて届かなかった。


(くそ! ロープの強度はどうなっている!)


ルチカはシャドーシャークに火の弾を当てて、倒すと背後のマトがいたはずの空間を目にする。


「マトォ⁉」


ルチカが大穴の下を見るとハーゲンやガウトが落ちていた。


「どうなってんの⁉」


意識を失わなかったのはブリンジャーとガルガ、ルチカのみだった。


ブリンジャーはルチカのもとへ駆け寄る。


「ルチカ氏。落ちた皆を助けに行かねばなりません!」


「マト、落ちたのぉ⁉」

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