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11-2 モーイモグラの大穴

パーンの埋葬が終わり、数日が経った。


マトとルチカは見廻隊としてのそして使命を背負った者としての仕事を行わなければならない。


マトからドラゴンの国での報告を受けたガウトは、マトの報告を根拠とした見廻隊特別作戦室を創設し、すぐにハーゲン率いる騎士団と調査チームを結成して『月』の捜索を始めていた。


捜索が始まって一週間後、一つの候補が上がった。


それはダンジョン密集地帯の外れにあるモーイモグラの大穴だった。


そこは草花も咲かずダンジョンもほぼなく魔物が少ない。


近くに村も都市もなく農地でもない。


モーイモグラが住んでいること以外何もない土地だった。


普段大穴は落下の危険があるため行くことは推奨されていない。


それでも物好きな冒険者が稀に大穴に探検をしに行き、脱出困難になり見廻隊が救出に行くことが何度かあった。


大穴での救出作業は簡単なモノではないため見廻隊の中からは大穴に潜ることは禁止すべきと声があった。


しかし、今回に限っては見廻隊にとって迷惑な冒険者の好奇心が役に立つ。


見廻隊が奥深くまで落下した冒険者を救出する際、光る球体を見たと報告したのだ。


そこは見廻隊と冒険者にとって初めて辿り着いた深さだった。


ガウトはすぐにモーイモグラの大穴に調査チームを向かわせた。


調査チームは大穴に入り球体を見つけると監視係を置き、大穴の入り口から球体までの間に見廻隊を等間隔に配置してルートを確保した。









ガウトから招集がかかったマトとルチカはブリンジャーと共にモーイモグラの大穴へ向かった。


大穴の側にある簡易基地にはガウトとガルガをはじめとした親衛隊、ハーゲンと騎士団一人がいた。


三人の姿が見えるとガウトは立ち上がり、マトの前に来る。


「よく来てくれました。まだ、パーン君が亡くなって日が浅いにも関わらず、重要な任務で大変だと思いますが、よろしくお願いします」


「いえ、これは俺達がどうにかしなければならないことなので」


「そうですね。しかし、マト君、ルチカ君。あなた達だけで抱え込まないでくださいね。私達は仲間なのですから」


「はい。助かります」


ガウトはマトの目を真っ直ぐ見て言う。


「マト君。私も神の世界まで同行します」


その言葉にマトはあることを思い出した。それはドラゴンの国から帰ってきて見廻隊本部に入る前、ハーゲンが放った言葉である。


「今後もガウトの判断に付き合っていくのであれば、ガウトの言動一つ一つに気をつけろ。さもなければ、不幸になるぞ」


ハーゲンが何故ガウトに対する警告をしてきたのか、具体的な理由はわからない。


しかし、ガウトから同行の意思を聞いたタイミングでハーゲンの警告を思い出したのは少なからずガウトへの警戒心がマトの中で芽生えている証拠でもあった。


「足を引っ張らないように気をつけます」


ルチカは言う。


「ドラゴンのじじいと違ってその勇敢さは立派ですなぁ〜。でも無理はすんなよ、おっさん。年なんだから」


「はっはっはっ!ご心配ありがとうルチカ君。立場故、普段はデスクワークに甘んじているが、私はまだまだ現役ですよ」


基地の奥で立っていたハーゲンが不機嫌に話に割って入る。


「ふんっ。なーにが現役だ。アラフィコスの件では私は前線に立ち部隊全体の指揮をとった。


しかし貴様は久しぶりにダンジョンに入ったと思えば、塔のダンジョンでは親衛隊に護られていただけではないか。


貴様は神の世界とやらに行くべきではない。これまで通り安全な場所で命令だけ出しておけばいいのだ」


ガウトは、目は笑いながらも呆れた口調で言う。


「またその話ですか。ハーゲン閣下。私が考えを曲げるつまりはないとはっきり言ったはずですよ」


「魔物と戦わない奴は死ぬだけだ」


「戦いますよ。必要とあらば」


するとハーゲンとガウトの視線の間にガルガが体を入れる。


「ガウト隊長。争っている時ではないかと」


ガウトはニコッとして言う。


「そうだな。ガルガ君の言う通りだ。決定したことを言い争っていてもしょうがない」


ガウトはハーゲンに言う。


「私は自分の身は自分で護ります。絶対に足は引っ張りません。お約束します」


「まぁいい。ワタシは助けんからな」


「はい。承知しております」


簡易基地に外から見廻隊員が一人入ってきて敬礼をする。


「ハーゲン閣下! ガウト隊長! 準備が整いました! いつでも出発していただけます!」









マト、ルチカ、ブリンジャー、ガウト、親衛隊五人、ハーゲン、騎士団一人はモーイモグラの大穴の前に出た。


ガウトは説明を始める。


「これがモーイモグラの大穴です。直径二百メートルあります。未だ最深部に到達した者はいません。


どこまで深いのかも不明です。『月』は一万メートルの部分にありました。


調査員が三十センチ付近まで近づきましたが特に動きはないとのことです」


ルチカは言う。


「お菓子のダンジョンの『太陽』は近づけなかったよ」


「はい。報告を受けています。何が違うのかは私達には分かりませんが、これは好都合です」


ハーゲンは言う。


「『月』と呼ばれる球体をどうするつもりだ?」


ガウトは答える。


「『月』があるところまで着いたら、代表して私が『月』に触れます。異論はありますか?」


「ガウト隊長に何かあった時、親衛隊の指揮権は誰に移る?」


「全体の指揮権同様、ハーゲン閣下に一任いたします」


皆は同意した。


「大穴に足の踏み場はありません。崖をロープで降りることになります。命に関わることです。心の準備をしてください」


十一人のチームは各々潜る準備をする。


マトはルチカと大穴を眺める。


「モーイモグラか。何が嬉しくて穴ばっか掘ってんだろうな」


「ルチ知ってるよ〜」


「なに?」


「趣味だってさ」


その程度の知識で「知ってる」と言ったルチカに呆れつつもマトは言う。


「まぁ、何が好きかは魔物それぞれだからな」


見廻隊員が準備をした場所に月面探索チームは集まった。


ガウトは言う。


「今のところ目撃されている魔物はモーイモグラと海水スライム、タンクムリです!


モーイモグラは今も穴を掘り続けており、海水スライムは偶に穴に落ちてくるそうです!


タンクムリは壁を這っているのみ! どれも敵意はありません。無視してよろしいです!


しかし、他の魔物が生息している可能性は充分にあります。警戒心を持って行きましょう!」


ルチカは言う。


「しょーちしたぁ!」

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