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10-7 使命

ドラゴンは話を再開する。


「戦争に行く前のファンニルに私は託された。いずれ子がドラゴンの国に来ると。


そのために道を作ってやってくれとな。だがら私は塔を下ろした。


導かれざる者が来ないように塔に攻撃性を与え、登ってきた者をこちらに導くために打ち上げバードを頂上に配置した」


「死にかけたんですけど」


「ドラゴンならあの程度、問題ないと判断した」


「・・・なるほど」


「以上が私がファンニルにからルチカに伝えるよう頼まれたことだ。何が質問あるか?」


ルチカは「う〜ん」と言って屈託のない表情で「お父さん死んだの?」と言った。


ルチカの態度にドラゴンは驚きながらも「ああ。死んだ」と答えた。


「そっか。まっ、しょうがねぇなぁ」


「ルチカ・・・?」


マトの心配した声色にルチカは明るく「デージョーブデージョーブ。どんな顔してるかくらい見てみたかったけど、お母さんと仲良かったって知れただけでもルチは十分!」


「・・・そうか。それならよかった」









ルチカ出生の秘密を話し終わったところでマトが質問をする。


「あの、神の世界へ行くにはどうすればいいのでしょうか」


その質問にドラゴンの表情が強張る。


「神の世界だと? 人間があの場所になんのようだ?」


「俺達は見廻隊というダンジョンを管理する組織で働いているのですが」


「知っている」


「見廻隊の隊長が、百年前ベルセルクによって神の世界に連れ去られた人間達を救出しに行く考えを持っているんです」


「ベルセルクだと? お前達はそいつらがまだ生きているとでも本気で思っているのか?」


「生きていないのですか?」


「当たり前だ。ベルセルクは神側の戦力として戦争に参加し、死んだ。


その誘拐された人間達は兵力増強を目的としたベルセルクの子孫を形成するために連れ去られたに過ぎない。人間達も既に戦死している」


「そんな・・・」


「人間達にも聞こえていたはずだ。空や大地から鳴る轟音を」


「黄昏の知らせですか・・・⁉」


「あれは戦争が行われている神の世界から漏れた断末魔だ」


ルチカは言う。


「迷惑すぎぃ」


ドラゴンは厳しい目つきで言う。


「お前達はもうこのことから手を引きなさい。地上に戻り今までの日常を送りなさい。人間ではどうしようもないところまできている。ドラゴンにもだ」


「神の世界の戦争のせいですか?」


ドラゴンは静かに頷いた。


マトは困った。合同部隊を結成して戦った末にガウトの求める目的はなくなり、ドラゴンですら諦める神の世界の惨状を突きつけられた。


この結果を地上へ持ち帰ることは何も得なかったと同義である。


塔に残った戦士達が生きているのかもわからない。


マトが悩ましい顔で悩んでいるとドラゴンは言う。


「お前達は弱い。成長しなさい。今後戦争が終わってどんな世界になっても生きていけるようにな」


「それは神が戦争に負けるということですか?」


「そういう可能性もあるということだ」








するとルチカが悩ましい顔で腹をさすって「う~ん。なぁんかなぁ」と言った。


マトは言う。


「ルチカ、どうした?」


「なぁんか。ドラゴンの国に来てからお腹が張るんだよねぇ・・・」


「お腹が? まさか、ミュクルを焼いて食べたりしてないだろうな?」


「してないよ~。ルチそんな野蛮じゃないよぉ」


と二人が会話しているとドラゴンがルチカの腹を凝視し始めた。


すると次第にドラゴンの目が見開いていき、驚いた表情になった。


ドラゴンが言う。


「ま、まさか・・・⁉」


マトはドラゴンの変化に気付く。


「どうしたんですか?」


ドラゴンは「体の中で実っていたのか・・・」と言ってルチカの腹に手を伸ばした。


ドラゴンの手はルチカの腹に触れるとそのまますり抜けるように体の中に入って行き、何かを掴んだ。


ルチカは驚いて「ふへっ!」と声が出るが痛みどころか何も感じなかった。


何かを掴んだままドラゴンの手が腹から出てきてルチカの顔の前で手を開く。


ドラゴンの手には一つのりんごがあった。


ルチカは言う。


「りんごじゃん。なんでルチのお腹からりんごが出てくんの?」


ドラゴンは言う。


「オルカトラが食べたりんごの種がルチカの中で実ったのだ」


「特別なやつじゃん。で、それがなに?」


「これがあれば、神が負けてもどうにかなるかもしれない」


ドラゴンは興奮気味に言う。


「今すぐ、これを弱った神に食べさすのだ! そうすれば神は力を取り戻し、世界は安定する!」


ドラゴンはルチカにりんごを渡す。


「ん? じいちゃんが行かないの?」


「何を言う! ルチカ! お前が神から授かったモノだろう! 自分で返してきなさい! 絶対にだ‼ ぜぇ~ったいに‼ お前らが返してこい‼ いいな‼ 私は絶対にいかん‼ お前らが行け‼」


ドラゴンの必死さに戸惑いながらマトは言う。


「ほ、本気で言っているんですか⁉ 神の世界ですよ!」


「さきほど自分で神の世界への行き方を訪ねたではないか‼」


神の世界に行くということを軽く考えていたわけではないが、世界の命運を託されるとも思っていなかったマトは動揺を隠しきれない。


翻ってルチカは「ほ~ん。いいよ!」と軽いノリで応えていた。







ルチカの返事を聞いたドラゴンは言う。


「いいか。神の世界に行くのなら、蛇に飲み込まれて、地に落ちた月を見つけ出せ。そこはまだ、神の世界と繋がっている可能性がある」


ルチカは何かを思い出したようで即座に反応する。


「ルチ知ってるよ! なんかお菓子のダンジョンにあったよ! 届かないやつ!」


「ルチカの言っているのは月ではない。それは太陽だ。太陽は神の世界で別の獣に飲み込まれたのだ」

マトは言う。


「太陽も月もここへ来る前まで空にありましたよ」


「お前達が普段見ているのは太陽と月の残像だ。本物じゃない」


ルチカは信じられないという表情で「それホント~? じぃちゃ~ん」と言うとドラゴンは「本当だ。それより話は済んだ。早く地上へ降りて月を探しなさい」と言った。


あまりにもドラゴンが必死に急かすため、二人は帰ることを告げるとドラゴンは帰り道を用意すると言った。


ドラゴンが左足で空の地面をドンッと踏むとシュルシュルシュルと滑り台が現れた。


滑り台はマト達がいる空から地上まで繋がっていた。


「ほら、これを滑って行けばあっという間だ」


マトは怯える。


「これ滑って行くんですか・・・」


戸惑っているマトの隣でいきなりテンションが最高潮になったルチカは「マトォ! 先に滑っていい?」と言いながら滑り台に飛び乗った。


一切音を立てずにグングン滑って行くルチカ。


マトは困惑する。


「かぁー! 空を飛べる奴はいいよな! 落ちる心配ないから!」


勢いよく滑って行くルチカを見て心細くなったマトは勇気を振り絞って滑り台の上に行く。


「い、行くぞ・・・俺は・・・行くぞ・・・」


消え入りそうな声で自分を鼓舞するマト。


ドラゴンは「ルチカを頼んだぞ。相棒」と言って躊躇っているマトの背中を押す。


「え? ああああああああああああああ‼」

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