表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/62

10-6 ルチカ出生の秘密

ルチカの反応にマトも疑問に思う。


「ルチカ。何を話してんだ?」


「なんかね。デカドリが空のボスのところに連れて行ってくれるって言ってるよ」


「空のボス・・・お前らが空のダンジョンのボスじゃないのか?」


ルチカが通訳する。


「空のダンジョンよりももっと上に俺らが尊敬する大物がいるんだよぉ! そのお方は魔物以上だ!」


『空のダンジョンよりも上』『魔物以上』


その言葉がマトにあることを思い出させる。


そもそもここへ来た理由。何故塔のダンジョンを登ったのか。何故空のダンジョンに来なければいけなかったのか。


それはこれらの先に未知の世界と未知の存在があるかもしれないと判断したからだ。


ガウトが求めていたのが『根源のダンジョン』なのか『神の世界』なのかそもそもそれが具体的にどんなものなのか。


それは定かではないが、デカドリが導く先に人類が未だ知らない『何か』があるかもしれない。


マトは言う。


「いいのか?」


「もちろん! ていうか、アンタらあの方に会いにここへ来たんじゃないのか?」


ルチカが応える。


「ほぼのーぷらん!」


「マジか⁉・・・え、どうする? 行く?」


マトは前のめりで言う。


「頼む! 連れて行ってくれ!」


ルチカが通訳するまでもなくデカドリはマトの気持ちを理解した。


「おっしゃぁ! 俺に乗りやがれ!」


マトとルチカがデカドリの背中に乗ると大きな翼を羽ばたかせ、飛び上がった。


デカドリは急浮上して更に高く飛ぶ。


そのまま数分浮上し続けると大きな乱層雲が現れてデカドリは躊躇いなく突っ込んでいく。


乱層雲を抜けると青空が一面に広がった世界が顔を出す。


デカドリはそこで止まると「降りていいぞ」と言った。


ルチカが言う。


「足場ないよ?」


「大丈夫だ。お前らは招かれた。落ちたりしない」


デカドリの言葉を信じて、二人は恐る恐る青空に足を出すと足の裏が青空に着地する。


「うお! ホントだぁ!」


二人が空に立てたことで歓喜していると


デカドリは「じゃあな! 達者でな!」と言うと二人の返事も聞かず、飛んで行ってしまった。


二人はデカドリが見えなくなるまで見送った。









マトが「行こうか」と言うとルチカがポンッとドラゴンに変身した。


「どうしてドラゴンになったんだ?」


ルチカは不思議そうに応える。


「わかんない。なんか勝手に変身しちゃった」


「勝手に? そんなことあるのか」


「ん~初めて!」


「未知の場所の力かもな」とマトが言うと二人の背後から「そうだ」と声がした。


身体の芯まで響いたその声に恐怖を感じた二人は反射的に振り向く。


すると二人の顔の真ん前に巨大なドラゴンの顔があった。


二人は声も出ないくらい驚いて体が硬直する。


ドラゴンは言う。


「ようこそ。ファンニルの子よ。そしてその相棒も。驚かせてすまないな。こちらに敵意はない。楽にするといい」


ドラゴンの威厳を目の前にしてマトは声を振り絞った「・・・はい」


「打ち上げバードの初仕事は上手くいったようだな」


マトのビビり散らかした声に冷静になったルチカは言う。


「あんたドラゴン?」


ドラゴンは口角を上げて「そうだ。君とは違う種類だがね」と応えた。


ドラゴンは鮮やかな緑色の体をしていてエンファニシィドラゴンとは明らかに違った。


「ここはどこ?」


「ここは君達が普段見上げている空だ」


「ドラゴンはここに住んでんの?」


「ああ大抵のドラゴンはここで住んでいる」


二人の会話を聞いているとマトも落ち着いてきて口を開く。


「塔のダンジョンや打ち上げバードを配置したのはあなたですか?」


「そうだ」


「何故わざわざ人が登って来れるようにしたのですか?」


ドラゴンは一呼吸置いて言う。


「そうだな。まず話さないといけないな」ドラゴンはルチカを見ながら「私はファンニルの子が来るのをずっと待っていたのだ」


「ファンニルの子ってなんだよ〜? ルチはルチカ!」


「ファンニルと言うのは君の父親の名前だ」


「じぃちゃん、ルチのお父さんのこと知ってんの!?」


「じぃちゃん・・・はっはっは! そうかファンニルの子もドラゴン! 私が老竜だとわかるのか! 面白い!」


「ねぇねぇ! 教えて! お父さんのこと!」


「もちろん。教えるから落ち着きなさい。ルチカの父親がドラゴンで母親が人間だということは知っているね」


「もち!」









「ファンニルは子どもの時からイタズラばかりする悪ガキでな。


青年になっても落ち着くことはなく、あらゆる悪事を働いた。


そこでドラゴンの王から相談を受けた私はファンニルをドラゴンの国から落とし、人間の世界で反省させようと提案した。


王は提案通り、ファンニルを人間の元に行かせた。


しかし人間の世界に行ったファンニルは更生どころか人間より強いことをいいことに人間達から金目の物を奪っては自分の住処に隠していた。


ルチカの母親の名はオルカトラと言う。オルカトラは小さな村に生まれた。普通の村娘だった。


普段は両親と共に農作業をして暮らしていて作物が育つと大喜びした。


そんなオルカトラが住む村にもファンニルは現れた。


ファンニルは「喰われたくなければ金をよこせ」と村人達を脅してオルカトラの村でも悪事を働こうとした。


ドラゴンに怯えて村の財産を渡そうとする大人達を押しのけ、オルカトラがファンニルの前に立ち、ファンニルに悪事を辞めるよう説教したのだ。


ファンニルは初めは見下した態度で嘲笑ったがオルカトラの真っ直ぐでしつこい説教に心が折れてついに巣に戻っていった。


それから度々村に訪れてはオルカトラと言い合っては怒って帰って行く日々が続いた。


オルカトラは心の綺麗な子でな、ファンニルが更生するのを信じていた。


だがら、ある時ファンニルの噂を聞きつけた王都が王宮戦士を送ってきた時もファンニルを討伐しないようにオルカトラは王宮戦士を説得して王都に帰らせた。


その後も何度もファンニルは村に来てオルカトラと喧嘩していた。


ファンニルはオルカトラがいない日はすぐに帰って行った。


ある日ファンニルは無理矢理オルカトラを背に乗せて空へ飛び立った。


村人や両親は心配したが夕方になると帰ってきた。


そしてオルカトラは安心して涙ぐむ両親に伝えた。


ドラゴンのファンニルと一緒になると。


ファンニルとオルカトラはただ喧嘩をしていたわけではなかった。


初めて村を追い出された時、ファンニルは勇敢で純粋な眼差しで叱ってくれたオルカトラに恋をしてしまったのだ。


それからファンニルはオルカトラに会い来てはプロポーズをしてフラれ、喧嘩する。を繰り返していた。


しかしファンニルの一方的な思いでば終わらなかった。


ファンニルと会話をする度にオルカトラはファンニルに興味持っていった。


そして次第にファンニルの気持ちに応えてあげたいという思いが芽生え始めた。


オルカトラを背に乗せ飛び立った日、誰にも邪魔されない空で二人は自分の気持ちを赤裸々に語り合った。


そうして二人は両思いになったのだ。


どれだけ二人が愛し合っていたとしても当然両親は受け止められなかった。


村人達も皆オルカトラを好いてはいたがドラゴンと関係を持つことは受け入れられなかった。


最終的に両親は娘の思いを尊重することにしたが村から出さなければいけなくなった。


オルカトラはファンニルが住む洞窟で暮らすことになった。


暫くは幸せな日々が続いた。一緒にいるだけで幸せだったのだろう。ファンニルも改心して悪事を働くなった。


だが、問題もあった。


二人は子を欲しがったが、ドラゴンと人間の間に子はなせない。


そこでファンニルは神の世界に行き、主神に相談した。


主神は『神側の戦力として戦争に参加』するようファンニルに約束をさせるとりんごを渡した。


ファンニルはオルカトラが待つ洞窟に戻るとオルカトラにりんごを食べさせた。


それから少し経ってオルカトラが妊娠していることがわかった。


二人は大層喜んだ。


そして生まれた子に「ルチカ』と名付けて可愛がった。


ルチカが生まれて一ヶ月もしないうちにファンニルは約束通り戦争に参加しなければならなくなった。


ルチカはオルカトラ一人で育てることになった。


それはそれは大変だったろう。


心配ごとも絶えなかったろう。


オルカトラは母乳が出なかったためファンニルが連れてきた石舐め牛の母乳を飲ませていた。それが正しいのかもわからない。


ルチカがぐずった時もファンニルが教えたドラゴンの子守唄を歌ってなんとかあやしていた。


ドラゴンの私からするとお世辞にもうまいとは言えない歌だったが愛の籠った落ち着く歌だった」









それを聞いてルチカはマトに言う。


「マトと初めて会ったときさぁ」


「うん」


「マトォ、意識が朦朧としているルチにドラゴンの子守唄歌ってくれたでしょ」


マトは照れて「そういえばそうだな」と今思い出したフリをした。


「あれがね、お母さんの子守唄にすごく似ててお母さんのこと思い出したの。それで冷静になれたんだ。あの時はありがとう」


「あれ、やっぱ上手く歌えてなかったんだ」


「でも、ルチには響いたよ!」


「はは。それはよかった!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ