10-5 執行人ルチカ
デカドリは、デカドリ、長髪鳥、ミュクルの三者の関係性について語り始めた。
「元々空のダンジョンの魔物達は弱肉強食の関係でやってたんだ。
食う食われるの関係でお互い恨みっこなしでな。
だがな、ある時からミニスの数が激減してな、これはおかしいってことで調べてみたら、ワルガモリがミニスを爆撃して殺すっつう趣味の悪い遊びをしてやがったんだ。
だからよぉ、俺らデカドリがミニスの味方になってやってワルガモリを近づけないようにしてたんだが、ワルガモリの方も長髪鳥を味方につけて対抗してきやがったんだ。
んで、この両者に何かあると、デカドリ組と長髪鳥組で喧嘩してったちゅうわけだ」
ルチカはデカドリの話を聞きながらマトにも通訳してあげる。
デカドリの話は続く。
「長髪鳥組との抗争が激化していく中で、それを見かねたミュクルが間に入って仲裁を始めたんだ。
デカドリも長髪鳥も打撃技しか使えねぇからミュクルには一切の攻撃が通らねぇ。
それで闘争心が萎えた俺らはミュクルの和解案にのって一時抗争は収まった」
「んで?」
「それからというものミュクルはフィクサーを名乗り、俺達の間に何か問題があれば、仲介役として問題を解決してきた」
「ええやつやん」
「もちろん。俺達はミュクルを信用していたし、助けられてきた。
だがなミュクルの仕事も無料ってわけじゃねぇ。俺達は常にミュクルにみかじめ料を払ってんだ。
んで、何か問題を解決してもらったら、別途で料金を払っている」
「なにを払ってんの?」
「ストローターの糞だ。ストローターの糞は珍しくてな、ここの魔物達はその珍しさに価値を感じて取引に利用している。
俺達の糞はそこら中に落ちているけどな。がっはっはっはっはっはー!」
「きったな」
「・・・だから貴重で通貨の代りとまではいかないが、ブツブツ交換の延長みたいな感じで使っている。
この城だってストローターの糞を他の魔物に渡して建てさせたんだ」
「へー」
「だがな、おかしなことにミュクルが俺達から金を取り始めてから、ミニスやワルガモリの死体が発見される数が増えたんだ。
死体が見つかる度にデカドリ組と長髪鳥組は喧嘩をして、その度ミュクルが間を取り持ってくれたんだがなぁ・・・」
「ん~? どういうことぉ?」
マトが言う。
「問題が起これば、ミュクルの仕事が増えて、その分利益が出るってことだろ」
「なんだそれ! 腹黒過ぎて、腹立ってきたぁ~! ルチ関係ないけど!」
デカドリは言う。
「なんでお嬢ちゃんは、ミュクルが犯人だとわかったんだ?」
「友達のミニスが目撃者でルチに教えてくれたんだ」
「なるほど・・・部外者を頼ったってわけか。実はな、俺達はミュクルの判定に異議を唱えられないんだ」
「なんでぇ?」
「そういうルールなんだ。際限なく言い争うのを防止するためだったんだが・・・あいつらが力を持ち過ぎたな・・・」
「ルール破るとどうなんの?」
「この辺じゃあ生きていけなくなるな。おそらく空のダンジョンを出ることになる」
「なんだそのルール! しょうもない! 隠蔽しようとしてるだけじゃん!」
デカドリが「確かになぁ・・・」と言うと怒りが込み上げてきたようで「やっぱあいつら・・・・・・許さねぇ! 俺がとっちめてやるぅ!」と言って城に戻ろうとする。
それをマトが静止する。
「待て! 証拠がないだろ!」
ルチカが通訳して伝えると、デカドリは止まる。
「だがよぉ。じゃあ、どうすればいいんだよ」
ルチカが言う。
「マトォ。どうする?」
マトはルチカを通じてデカドリと会話する。
「デカドリ組のボスはアンタか?」
「そうだ!」
「じゃあ、他のデカドリとミニスはアンタの指示を聞くんだな?」
「もちろんだ! 常に俺達は一致団結している!」
「長髪鳥組のボスは・・・」
「さっき裁判で俺と喧嘩していた奴だ。組員は全員あいつの指示通りに動くが・・・」
「わかった。なら長髪鳥も仲間に引き入れよう」
「あいつもか⁉」
「そうだ。長髪鳥組も冤罪をかけられたんだ。被害者だろ」
「わかった! 俺が連れてくる!」
デカドリは城に戻り長髪鳥を呼びに行く。
ルチカは言う。
「で、どうすんの?」
「どうするもこうするも、直接全部ミュクルに吐かせるしかないだろ」
「どうやって?」
デカドリが長髪鳥を連れてくる。
「で、本当にアナタタチについて行けば、美しい真実に辿り着けるのでしょうねぇ」
「美しいわけねぇだろう! がっはっはっはっはっはー!」
マトは言う。
「取りあえず、俺達を城の中に入れてもらえますか?」
デカドリは大きな翼の中にマトとルチカを隠して門をくぐり、城の中まで運んだ。
周りにミュクルがいないことを確認すると
「もういいぞ」と言って二人を出した。
「まだ、城内にミニスやワルガモリは残っていますか?」
「ああ、まだ、帰ってないぜ」
マトは床に両手をつけてサーチした。
サーチ範囲を城全体にしてエージェントミュクルがいる場所を突き止めた。
エージェントミュクルは他のミュクル達と会議をしているようだった。
(ちょうどいい!)
マトは会議室に風を発生させると風の魔力の粒子を震えさせた。
そしてそこからマト達がいる場所を通ってワルガモリやミニスのいる場所に強めの風を送った。
すると、次第に微かにエージェントミュクル達の声が聞こえてくるようになった。
デカドリは驚く。
「なんじゃこりゃ!」
「美しい魔法ですねぇ!」
エージェントミュクル達の会議をする声は城内にいるワルガモリやミニス達にも聞こえ始めた。
そうとは知らずに意気揚々と悪事を語り始めるミュクル達。
「くっくっく。あの馬鹿鳥達目! まぁたまんまと騙されやがった!」
「いやあ、簡単ですなぁ。調査費用がっぽり貰いましたよぉ!」
「ホントは調査なんかせずに、テキトーに判決下して今度は解決料貰うだけなんですけどねぇ!」
「うぷぷぷ! 次はワルガモリかミニス。どっちを殺そうかなぁ!」
「はははははははははははははははははは‼」
これらの声を聞いていたデカドリは言う。
「とんでもねぇ悪党だぜ‼」
長髪鳥も怒りを隠さず言う。
「美しくない! 美しくない! 美しくなぁい‼」
すると大広間から大勢のワルガモリとミニスが飛び出してきた。
「ミュクルゥ‼ 今の発言は本当かぁ‼」
ワルガモリとミニスの大群がエージェントミュクルがいる会議室へ走って行く。
デカドリは言う。
「俺達も行くぞ‼」
マトとルチカ、デカドリ、長髪鳥も会議室へ向かう。
マト達が会議室に着くとワルガモリとミニスが四匹のミュクルを囲んで抗議をしていた。
そこへデカドリと長髪鳥が入って行く。
デカドリは言う。
「おうおう! エージェントミュクルさんよ! よくも俺達を騙してくれたなぁ」
長髪鳥も続く。
「美しくないアナタタチには美しくない罰が必要です!」
迫る魔物達にミュクルは強気に抵抗する。
「ふんっ! 騙される愚かなアナタ達が悪いのです! そもそも喧嘩をし始めたのはアナタ達でしょう! ちょっとワタシ達が甘い蜜を吸っていたからって騒ぎ過ぎです!」
「確かに喧嘩は俺らが悪い! だがよぉ、殺しはしちゃあいけねぇよ!」
長髪鳥も賛同する。
「美しくないやり方です!」
デカドリと長髪鳥は更に圧をかける。
ミュクルは言う。
「ア、アナタ達に何ができると言うんですか! ワタシ達に攻撃できないくせに!」
「そんなのいくらでも方法はあるはずだ!」
デカドリがそう言うと、ミュクルはニヤリと笑って言う。
「なら、やってみてくださいよ!」
その瞬間、ミュクルは天井へ飛んだ。
そして、会議室の奥にあった扉が開くとそこから五十匹の熱風ひまわりが現れる。
「なんだ・・・⁉」
ミュクルは命令する。
「熱風ひまわり達! やっちゃってください!」
熱風ひまわりは反抗する魔物達へ向かって熱風を放つ。
熱を帯びた強風はワルガモリやミニスを会議室の外へ飛ばして壁に打ち付ける。
更にデカドリや長髪鳥も全身が火傷することを免れないほどの熱を受けた。
デカドリ達が苦しみながら攻撃の隙を伺っていると背後からルチカが飛び出して来て、全力の風魔法を放つ。
ルチカの放った風は熱風ひまわりを吹き飛ばして失神させ、四匹のミュクルは風に抵抗できぬまま床に落ちてきた。
ルチカはミュクルの眼前に立つ。
「な、なんだ! 人間! これでワタシ達に勝ったつもりか!」
「いやぁ、これからお前達を焼いて食べようかと思ってたところだよぉ」
ルチカの言葉にミュクル達は背筋が凍る思いをして逃げようとする。
ルチカは言う。
「マト!」
マトはサーチを発動して風を送る。
ルチカは水魔法でミュクル達をずぶ濡れにする。
「ぶえっくしょん! 寒いじゃないか!」
続いてルチカは氷魔法を使って冷気を体から放つ。
マトが送った風に乗ってミュクル達に冷気が襲い掛かる。
すると冷気が触れたミュクル達の体は凍り始め、動きが鈍くなる。
「いやぁ! 凍っていくぅ! だずげでっ!」
半べそをかいた情けない表情のままミュクル達は凍ってしまった。
「へへん! どんなもんだい!」
ルチカがそう言うとデカドリ、長髪鳥、ワルガモリ、ミニス達は湧き上がりマトとルチカに感謝の言葉を述べた。
城内が盛り上がる中、マトとルチカは自分達の役目を終えたと判断して城から出ることにした。
門を出ると後ろからデカドリが追いかけて来て言う。
「わりぃな。こっちで勝手に盛り上がっちゃってよぉ」
ルチカは応える。
「別にいいよー。仲良くやりなよ!」
「おう! もちろんだ! それよりよぉお前らにお礼をさせてくれ!」
「お礼? なになに!」
「行きてぇんだろ? 空のボスのところ。連れて行ってやるよ!」
ルチカが首を傾げる。
「空のボス?」




