10-4 名探偵ルチカ
二人が空のダンジョンを見渡すと真っ白な雲と青空が広がっていた。
「どこに向かうのが良いんだ?」
「う~ん」と考えているとルチカはミニスが飛んでいるのを見かける。
「ねーねー。あのミニスが向かう先にいこうよぉ!」
「いいぞ。あっちに何かあるのかもしれないな」
二人はミニスを追いかけることにした。
追いかけ始めて暫くは、ミニスを何匹か見たものの特に何も見当たらなかった。
疲れてきたため休もうかと考えていた時だった。
少し先の方に雲の塊が見えた。
「マトォ! なにあれ!」
よく見ると建物のように見えてくる。
更に近付いて行くと形がハッキリしてくる。
「・・・城だ!」
「雲の城だぁ‼」
ミニスは城の門の前に降り立ち、門番をしている二匹のミュクルに話しかける。
すると、門番は門を開けてミニスを城の敷地内に通した。
「マトォ! ルチも城に入りたい!」
「相手は魔物だぞ! 戦闘になるかもしれない! 気を付けろ!」
「うん!」
二人は城の門の前に行く。
二人を認識した門番のミュクルは明らかに警戒した態度で門の真ん前に立ち並ぶ。
門番にルチカだけ近付いて行って話しかける。
「よう兄弟! 元気ぃ? ルチ達地上から来たんだけど、城の中見学させてくれない?」
ルチカの馴れ馴れしい態度に眉間に皺を寄せてミュクルが言う。
「入って良し! ・・・と言いたいところだが、今は駄目だ!」
「えーなんでー」
「今城内では、裁判が行われている! お客を受け入れている余裕はない!」
「裁判? ルチ、見てみたーい! 証言台に立ちたーい!」
「・・・いや・・・お前は関係ないだろ・・・。とにかく、今は駄目だ! 帰りたまえ!」
「異議あり~異議あり~」
「うるさいうるさい。どこかへ行け!」
「ちぇっ! つまんねーのー」
ルチカはマトの元へ戻って行き、報告した。
「どうだった?」
「駄目だって。なんか裁判してるんだってさ」
「裁判? 魔物も裁判するのか」
「らしいよー」
すると背後から何者かがルチカに話しかけた。
ルチカが振り向くとそこには一匹のミニスがいた。
ミニスは言う。
「あのぉ・・・もしよければ、ボクと一緒に城に入りませんか?」
「ん? いいの?」
「はい。是非ともお願いします・・・」
マトは言う。
「なんて言っているんだ?」
「このミニスが一緒に城に入れてくれるってさ」
「おお! まじか!」
ルチカはミニスに言う。
「ありがとよ!」
「それでは行きましょうか」
ミニスと二人は門番の前に行く。
門番は言う。
「ミニスか。入っていいぞ」
「あ、あの・・・こちらのお二方も・・・お願いします」
「えっ、この二人も? だが、今は裁判中だぞ」
「構いません。傍聴するだけです」
門番のミュクルは「んん~」と悩んで二人に「裁判の邪魔すんなよ!」と言った。
二人は承諾してミニスと門の中へ入る。
雲でできた門をくぐると雲でできた庭園があり、雲の池があった。
城の入り口前に来ると二匹のミュクルが扉を開けた。
ミニスと二人が城の中に入ると、ミニスは案内人のミュクルに大広間に通されたため、二人もついて行った。
案内人のミュクルが先頭を歩き、それにミニスが続いて二人はミニスの後ろを歩いた。
歩いているとルチカがミニスの背中にあるメモ帳に気付く。
ミニスという魔物は『背中にメモを取れる』という能力を持っていて、二人の前を歩くミニスの背中には絵が書かれていた。
ルチカが言う。
「この絵なに?」
ミニスの背中にはワシの絵が描かれている。
「これは、ボク達ミニスのケツ持ちをしてくださっているデカドリさんを模したタトゥーです」
「へぇータトゥーねー」と言ってルチカはミニスのタトゥーを眺める。
するとデカドリのマークの近くに何か文字が書かれているのを発見した。
ルチカはその文章を読むと、急に背中のメモの話をやめて黙ってしまった。
大広間では、裁判が開かれており、デカドリと長髪鳥が争っていた。
裁判官はミュクルが勤めているようだった。
ミニスと二人は傍聴席についた。
デカドリが言う。
「うちのミニスを殺したのはお前らんとこのワルガモリだろ! 薄情しやがれ!」
長髪鳥は呆れた顔で言う。
「はぁ~あ。まったく! アナタタチは本当に美しくない! 何故ミニスなんてちっぽけな魔物をわざわざ殺すのですか? そんな美しくないことするわけがないでしょう! どうしてもこちらが悪いというのなら、ワタシタチの前髪のような美しい証拠を出して見なさいよ!」
デカドリは「この野郎!」と言って長髪鳥に襲い掛かる。
長髪鳥も前髪を振って応戦する。
両者がぶつかり合おうとした瞬間、間に裁判官のミュクルが入り、両者の攻撃を受け止める。
ミュクルは、柔らかすぎる体を持っているため、打撃技が一切通らない。
デカドリと長髪鳥の攻撃は見事に無力化され、両者は攻撃をやめる。
裁判官のミュクルが言う。
「ワルガモリの普段の行動を考えれば、ワルガモリが疑われるのは仕方がないかもしれません。しかし、証拠がない以上、ケツ持ちの長髪鳥さんに罰を与えるのは早計かと」
デカドリは言う。
「じゃあ、どうすんですか! ミュクルさん!」
「この場は一旦引いていただき、捜査をこの『空のフィクサー』エージェントミュクルにお任せください!」
デカドリは言う。
「ちっ、ミュクルさんがそう言うなら、少し待とう」
長髪鳥も言う。
「ワタクシもそれが一番美しくなると思います」
ミュクルがそう言うとその場は解散ということになり、デカドリと長髪鳥、傍聴席にいたミニスとワルガモリ達は、帰る準備を始めた。
するとルチカが突然立ち上がり、大きな声で言う。
「犯人はお前だ! エージェントミュクル!」
そのルチカの大声に驚いた魔物達はルチカを一斉に見る。
エージェントミュクルが言う。
「な! なんですか急に! あなたは誰ですか!」
「ルチは客だ! 遊びに来た!」
「あ、遊びぃ⁉ わ、悪いですが、人間の悪ふざけにかまっている時間はありません! 帰ってください!」
「エージェントミュクルがミニスを殺したんだぁ!」
その言葉に広間内がざわつく。
「何を言っているのです! 証拠は! 証拠はあるんですか!」
「ない! でも! お前がやった!」
「話になりませんねぇ! 守衛! この人間を外に追い出してください!」
守衛のミュクルが四匹やって来て、マトとルチカを担いで大広間から出ていく。
ルチカは炎を吐き出そうとするもマトに止められて大人しく門の外に出された。
守衛が城に戻った後、マトはルチカに言う。
「なんで急に騒ぎ出したんだ?」
「だってね、さっき城に入れてくれたミニスいるでしょ。そいつの背中にね『ミュクルがミニスを殺しました』って小さな字で書いてあったんだぁ」
「マジかよ⁉ てか、そういう話してんのかぁ」
「マジのガチだよ」
マトは訝しげに言う。
「でもなんで、自分でそう言わないんだろうな?」
「さあね」
と二人が会話していると門から出てきたデカドリがルチカに話しかける。
「お嬢ちゃん。さっきの言葉は本当か?」
「おっ! デカドリじゃん! 本当だよ!」
デカドリが溜息をつきながら言う。
「そうかぁ・・・。ついにあいつら悪事に手を染めたのかぁ・・・」
「ん? どういうこと?」




