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10-2 モフドラ、魔法陣を書く

魔法陣を書くために必要なモノはたったの二つ。


場所と線を引けるモノ。


この世界で書かれている魔法陣のほとんどは床に大きく書かれている。


それは、魔法陣に書かれる紋様で得られる効果が決まるためだ。


そもそも魔法陣を使う利点は、書いておけば後は魔力を流すだけで魔法が使えるというところにある。


二十年前までは、扉を閉めるだけの効果でもかなりの紋様が必要で、必然的に魔法陣は大きくなり、場所が必要であった。


イーブ博士の技術開発によって魔法陣の省略が可能な魔法は増えていったが、今でもほとんどの場合魔法陣は大きい。


線を引けるモノであればなんでもいい。


とにかく魔法陣に見えるように形づけられるモノであればいいのだ。







打ち上げバードは言う。


「魔法陣を消したと言っても完全には消しきれていない。痕跡が残っているはずだ」


「その痕跡を辿って魔法陣を突き止めろと?」


「そうだ。それしかないっ!」


「困ったなぁ」と考え込むマトにルチカは


「どーするー? マトォ」と屈託のない表情で言った。


あまりにもマトが唸り声を上げて悩んでいるのでルチカは軽い気持ちで案を出す。


「困ったらサーチしてみればいーじゃん!」


「サーチかぁ。確かに、ブリンジャーさんのおかげでサーチの質は上がったけど、消えた線まで感じ取れるかぁ?」


「そんなのやってみなきゃわかんないじゃーん!」


マトは打ち上げバードに問う。


「今までにこの魔法陣を起動させたことはあるんですか?」


「ない。今回が初めてだ」


「例えば、特別な魔法関係の素材で線を書いたとか?」


「知らんなぁ。オゥレがここに来た時から魔法陣はあるからなぁ」


「魔力を感じ取るのは難しいかぁ」


「取りあえずよぉ。少しでも可能性あんならやってくんねぇか? 打ち上げバードの性がお前らを打ち上げたくて騒いでやがんだよ!」


マトは少し考え、言う。


「わかりました。やってみます」


「おーう! 頼んだぜぇ!」


ルチカが「よっしゃ! ルチは応援するぜぇ!」と言うと打ち上げバードも「おう! オゥレも踊って盛り上げるぜ!」とはしゃぎ始めた。


それを見てマトは冷静な声で静止する。


「ルチカと打ち上げバードさんは出来るだけ端で大人しくしていてください」


「わかりやした」


「ほーい」








マトは打ち上げバードが立っていた頂上の真ん中にしゃがみ込み、両手をついた。


「サーチを始めます」


マトは土属性の魔力でサーチを発動させた。


サーチは床に広がっていき、一般的な魔法陣の大きさに到達した。


神経を集中させて薄い痕跡を探す。


砂やタイルの線、風に意識が向きそうになりながら、どんな細かい情報も逃さないようにした。


(魔法陣なら外角は円形に線が書かれているはずだ)


しかし、それらしきモノは感じ取れられず、更に一回り大きくサーチの範囲を広げる。


床にある傷すらも一つ逃さずなぞっていく。


根気のいる細かい作業を何度も繰り返し、長時間のスキル使用により、大量の汗が床に落ちる。


そして、ついに大きな円形を捉えた。


(よし! 想像の二回り大きな魔法陣だったが外角はわかった! 外角のすぐ近くに必ず紋様と中心部の円に向かう線があるはずだ!)


再び緻密な作業に戻ったマトだったが、一つの紋様が見つかると、立て続けに他の紋様が見つかり、それらの繋がりを辿ることで魔法陣の全貌を解明することに成功した。









ルチカと打ち上げバードにもわかるように魔法陣の線をサーチの能力を応用して浮かび上がらせた。


マトは言う。


「ルチカ! 協力してくれ!」


ルチカは「あいよ!」と言うと魔法陣の周辺に立った。


「水魔法でこの魔法陣をなぞってくれ!」


「水魔法で⁉ でもちょろちょろしかでないよ?」


「頼む! 少し大きいが水で線を引いてくれ!」


「わかった! 頑張る!」


ルチカは口から水を出して浮かび上がっている魔法陣の上に水を発射する。


学校のダンジョン時よりは、水の勢いが強くなっており、ルチカもコントロールしやすく感じた。


首を器用に捻り、魔法陣の形に沿って水で、さながら芸術家のように一筆書きで魔法陣を書いた。


「できたよ!」


「よし! 次は氷属性の魔法を頼む!」


「えっ⁉ 氷も!」


学校ダンジョンで判明したルチカが持つ五つの属性の一つである氷属性。


しかし、ルチカは氷属性の魔法を学校ダンジョン以来使っていない。


「だ、大丈夫かなぁ」


「大丈夫だ。足りないところは俺がカバーするから!」


「う~ん。わかった!」


ルチカは目を瞑り、集中する。


氷属性の魔力でドラゴンスキルを発動した。


するとルチカの肌から冷気が放出される。


ルチカは冷気の方向を魔法陣の上にある水に向けようとする。


ゆっくりだが、冷気は魔法陣の上に来た。


そこへマトは風属性の魔力に切り替え、サーチ範囲の上に風を巻き起こした。


風は冷気を運んで魔法陣の形に引かれた水を冷やし始めた。


マトとルチカの連携により、次第に水は凍っていき、氷による魔法陣が完成した。









「よくやった! ルチカ!」


そういうとマトはその場に横になった。


ルチカもへとへとになりながら「見たか・・・これぞ・・・ドラゴン・・・のち・・・か・・・ら・・・」と言ってバタッと横になった。


打ち上げバードが二人に駆け寄る。


「おめぇら、やるじゃんよ! こりゃあ、オゥレもしっかりお前らを空に届けなきゃな!」


「よろしく・・・お願いします・・・」







少し休んだ二人は立ち上がる。


「おう! もう休憩はいいのか?」


「大丈夫です! 待たせしました!」


打ち上げバードは魔法陣の中心地に立つ。


「おめぇらはオゥレの近くにいればいい」


二人は打ち上げバードの周辺に立つ。


打ち上げバードは最後に忠告をする。


「オゥレは渦のところまで飛ばすだけだ。その後は自分たちでどうにかしろよ!」


二人が元気よく「はい!」と返事をすると打ち上げバードは能力を発動する。


「んじゃ! 良い旅を!」


打ち上げバードの周辺に強い風が起こったと思うと、急にマトとルチカの足裏からとんでもない出力の風が放出され、二人はそのまま真っ直ぐ上へ飛ばされた。

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