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8-1 ガウトの邂逅

三人は都市に帰ると見廻隊本部一階の受付へ向かった。


受付の職員に英雄の剣を渡すと三階の隊長室に招かれた。


隊長室のドアの前には、前回訪れた時と同じようにガウトの親衛隊が壁に沿って立っていた。


以前と違うのは鋭い眼差しを向けてこない事だった。


筋骨隆々の体の大きな男はニヤついた表情でブリンジャーを見ていた。


職員がドアをノックし「お連れしました」と言うとガウトがドアを開けて三人を中へ入れた。


マトとルチカは並んでソファーに座り、ブリンジャーはテーブルを挟んで向かいにあるソファーにガウトと並んで座った。


ガウトは柔らかい表情で言う。


「任務お疲れ様です。お二人のおかげで英雄の剣を回収することができました。


ブリンジャーもお疲れ様。特にルチカ君。前代未聞の特別な資質を持つアナタにしかできない任務でした。


ルチカ君の理解ある判断と勇気ある挑戦には感服しました。それにマト君もアナタがバディだからこそ成し遂げられたことだと私は思いますよ」


マトとブリンジャーは丁重にお礼を言うとルチカは「ドラゴンの知性がルチにそうさせたのさ!」と得意気に言った。









穏やかに話していたガウトは真剣な顔つきになり言う。


「二人に新たなお願いがあります」


「なんですか?」


「私と一緒にダンジョンに潜って欲しい」


「ガウト隊長とですか?」


「はい。私にはもう一度潜りたいダンジョンがあるのです。しかし、そのダンジョンに入る方法がわからない。


それに入れたとして、その特殊さ故に一人では帰って来られない可能性もある。なのでお二人のお力を貸して欲しいのです」


「ガウト隊長ですら帰って来られるかわからないダンジョンに・・・・・・俺達が力になれるのですか?」


「謙遜する必要はありません。アナタ達には難関ダンジョンを攻略するだけの力を持っています」


「ありがとうございます。ですがブリンジャー上級隊員の方が適任ではないのですか?」


「先ほども言いましたが特殊なダンジョンです」


ガウトのその言葉にマトは、ガウトが欲しているのはルチカの力であると気付く。


ブリンジャーもそれに気付いているようだった。


マトは言う。


「潜りたいダンジョンというのを詳しく教えていただけますか」


ガウトは一度躊躇うように下を向くと少し経ってから顔を上げて言う。


「潜りたいダンジョンというのは、信じ難いかもしれませんが・・・・・・」


とそこまでガウトが言うと、ブリンジャーは何かを察したのか「隊長。ぼく外しましょうか?」と言った。


ガウトは立ち上がろうとするブリンジャーの肩に手を置く。


「いや、ブリンジャー君にも関係のある話だ。ここにいて話を聞いていてください」


ガウトは話を再開する。


「私がもう一度入りたいダンジョンとは『夢のダンジョン』です」


初めて聞くダンジョンに三人は困惑する。


『夢』という単語がどうしても引っかかるのだ。


夢とダンジョンが関係するとは考えたこともない。


『夢』とは比喩なのか、それともと言葉の通りなのか。


その真意が測れない。


「夢のダンジョンですか・・・・・・」


「ははは。困っているようだね。それもしょうがない。安心してください。ちゃんと説明しますよ」









ガウトは自分の過去を語り始める。


「私は若いころ学者を目指していてね。動機はただただこの世界のことが知りたかっただけで何か壮大なこの世の真実を解き明かそうなんてことは考えていなかった。純粋な好奇心というやつです。


だから学者と言っても分野を問わず勉強した。神話はもちろん哲学、歴史、宗教、生態学、化学、物理、医学となんでも学びました。


そんなある日私はとある男に出会った。


彼の名はグンターといった。


彼は私の知らないことをたくさん知っていた。


一番驚いたのはベルセルクの狂乱について誰よりも詳細に語れたことだった。


私はもっとグンターと仲良くなりたいと思った。


仲良くなって彼が知っていること全てを吸収したいと。


グンターという男は私以外にも多くの人達にいろんな知識を教えていた。


まるで教祖が信者に教えを説くみたいに。


もちろん彼は宗教家ではない。


しかし、彼と友人になりたいと願っていた私は次第に彼の話のみならず、彼自身の虜になり、いつのまにか私はグンターの信者になっていた。


そしてある時、私はグンターの自宅へ呼ばれた。


他の信者は彼の自宅には呼ばれたことがない。


私はグンターに選ばれたのだと喜んだ。


私は彼の自宅に訪れるととある部屋に案内された。


その部屋をグンターは儀式の間だと言った。


私はグンターに儀式に参加するよう懇願された。


儀式の目的は『神の世界』に行くことだった。


儀式は失敗すれば死ぬ可能性を孕んでいた。


正直驚いた。それに悩んだ。


グンターの言う『神の世界』がどんなものなのか知りたかったですし、本当にあるのかと確かめたくもなった。


しかし、知識を得るために命を賭けるなんてこと今まで考えたことがなかった。


私はその時気付きました。


私は今まで他人が命を賭けて得た学びを平和な場所でただ享受していただけにすぎないと。


今度は自分が命を賭けるべきだと思いました。


私はその決意をもとに儀式に参加すると決めました。


そもそもグンターを崇めていた私に断るという選択肢はなかったのかもしれません。


そして儀式を行いました。


『神の世界』とグンターが呼んだ世界で私が見たモノは今でも忘れません」

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