7-4 マトの『魔法』2
魔法に集中していたマトは対応が遅れ、そのまま倒れ転がってしまう。
「マト氏! そっちは駄目だ!」
マトが立ち上り周りを見渡すと、マトだけ別のブロックに移動してしまっていた。
(しまった!)
マトが乗るブロックはそのまま上へ上昇して別のブロックと連結した。
揺れが落ち着き態勢を整えたマトはダンジョンのルールを解読して合流しなければと、ブロックを調べようとした。
しかし、すぐにそれは難しいと気付く。
マトの目の前には魔物『フィメラ』がマトを見ながら立っていたのだ。
くちゃくちゃと手に持つワルガモリを食べながら左手にはモゾモゾ動くボサィラーを持っていた。
(これはまずい・・・)
フィメラはマトが自分に気付くと手に持っているワルガモリとボサィラーをグチャッとぶつけてそのまま擦り付けた。
すると魔物を掴むフィメラの手のひらからワルガモリとボサィラーが合体したような魔物が現れた。
フィメラに命令されたその合体獣はマトに飛びかかった。
マトは後ろに飛んで避けると短剣を取り出した。
合体獣の爪を振りまわす攻撃を短剣で受けながら反撃の隙を伺う
合体獣のパワーに後ずさりしながら対応していると壁にまで追い込まれてしまう。
(どうする?)
マトは自分の魔法の本質を思い出す。
(俺のサーチスキルにも属性魔力を生かせる余地があった。そしてサーチは自分が操れる領域を作り出すことができる)
マトは合体獣の爪を弾くと合体獣の股の間を潜って背後に立つ。
そして地面に両手をつけると土属性の魔力を流したサーチを発動する。
(一か八かやるしかない!)
サーチ範囲で振動する土の魔力に命令を出す。
「魔力を纏って波を起こせ!」
すると地面に敷き詰められた立方体の岩石がそれぞれ上下に動き始めた。
岩石の揺れは波のようになり合体獣とフィメラのバランスを崩す。
そして更に激しくなった波は合体獣とフィメラを飲み込まんとし、動く岩石の間に挟まれながらもがくが抵抗も空しく岩石に押しつぶされて息絶えた。
「魔法を使って一人で倒せた・・・」
マトはサーチをしたことによって自分が立つブロックに魔法陣があることに気付く。
更にブリンジャーのアドバイスでサーチの本質に気付いたことによってサーチ範囲が以前より広がったマトは、隣のブロックにも魔法陣があることを感じ取っていた。
「さっきまでここがルチカ達のブロックと接していたんだ。このブロックでいいだろう」
マトは自分が乗って来たブロックの魔法陣に魔力を流すとブロックが移動を始めた。
乗ったブロックが別のブロックに着くとマトはサーチを行った。
(隣のブロックにも魔法陣がある)
そこでマトは気付く。
ブロックは魔法陣に魔力を流すことで動く。
そして、魔法陣ブロックは別の魔法陣ブロックの隣に動く。
その際、魔法陣のない通常ブロックは魔法陣ブロックの移動に影響を受けてその場所から移動させられる。
(つまり魔法陣ブロックの場所がわかれば、パズルを動かす感覚で自由に移動できる)
ルチカとブリンジャーはマトを探しに行くか話し合っていた。
「ここが動くダンジョンじゃなきゃ探しに行ってもいいんですけどね。ルールがわからない以上、ステイですかね」
「マトならルール解明できそうだけどさぁ、じっとしているのもなんか癪だよね」
「心配する気持ち、お察しします。ここはマト氏を信じて待ちましょう」
と会議をしているとブロックが再び動き出す。
「お! マト来るか?」
二人が移動するブロックを見ていると上から下りてきたブロックに二人の男がいた。
一人はナイフを持っており、もう一人は怪我を負っていた。
その光景を見たブリンジャーは瞬時に怪我人の服を掴んで自分の方へ寄せる。
ナイフを持った男が「この野郎!」と言ってナイフをブリンジャーに向け走ってこようとした時、またもブロックが動き始めた。
ナイフの男はブロックとブロックの隙間に位置し、上に上がるブロックと天井のブロックに挟まれそうになる。
ブリンジャーはナイフの男の腕を引っ張り助けると地面に抑えつけた。
「おう!」とルチカが感心していると背後のブロックから複数の魔物の気配がした。
前のブロックだけではなく後ろのブロックも移動していたのだ。
ルチカがそれに気づいて攻撃をしようとした瞬間、目の前にいた魔物達が急にフッと消えたのだった。
「ん? なんだぁ! 魔物が消えたぞ!」
ブリンジャーは怪我人の手当てをしながら言う。
「ふう。一件落着ですね」
ルチカはブリンジャーの余裕の姿を見て気付く。
「お前か! ブリンジャーがやったんかぁ?」
「はい。そうです。魔物もぼくが倒しました」
「消えたぞ! どうやってやったの!」
「それは魔法でひょいっとですよ」
「なーんーだーよ。おーしーえーろーよー」
すると再びブロックが動く。
ルチカは警戒してブロックを見る。
今まで下から上へ移動していたブロックは、今度は上から下に移動してきた。
ブロックにはマトが乗っていた。
「うおぉ! マトォ!」
「マト氏ぃ~! 信じていましたよぉ!」
マトは言う。
「二人共、心配かけてごめん。でも大体このダンジョンのルールは把握したからこっちのブロックに乗ってほしい」
男を両脇に抱えたブリンジャーとルチカはマトの乗るブロックに移る。
そのままマトの操作によってブロックは移動し続けて英雄の剣が刺さる場所に辿り着いた。
剣は壁に寄りかかる岩の下に刺さっていた。
「んじゃ! 剣抜くねぇ!」
ルチカが剣を抜くとマトが「何か見えたりしたか?」と聞いた。
「ううん。何も」
「まあ壁画のダンジョンとは違うか」
三人はそのままマトの操作するブロックに乗って帰路についた。
帰り道、マトは気になっていたことを口にする。
「ハーゲン閣下ってどんな人ですか?」
マトの急な質問にブリンジャーは笑顔で応える。
「国政に関して熱心な人ですね。
やり方を卑劣だって言う人もいますけど、まぁ、国のことですから、時には非情にならないといけない時もあるんだと思います。
国益のためなら裏切り行為も行っていたらしいですし、恨んでいる人は国内外にいるでしょうね」
とここまでブリンジャーが話すと興味がなかったのかルチカが話題を変える。
「ていうか、ルチ今日なにもしてなぁい」
マトは優しい口調で言う。
「いやいや、ルチカがいないと剣抜けないし」
ブリンジャーも続く。
「そうですよ。ルチカ氏がいないとこの任務は成り立たないんですから! それにぼく思ったことがあります! ぼく達三人、いいチームじゃないですか?」




