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7-1 上級見廻隊

ルチカはいつも通りエンリの柔らかな「起きてください」という声によって目を覚ます。


ルチカが寝ぼけ眼で声のする方を見るとエンリの胸が目の前にあった。


ルチカは寝ぼけながら言う。


「なんだ・・・乳揺れダンジョンに迷い込んじゃったのか・・・・・・」


エンリはルチカの頬をムニッと触って


「そんなダンジョンありませんよ」と言った。


寝ぼけているルチカはエンリのサポートを受けながら着替えをし、顔を洗って歯を磨いた。


エンリは部屋からルチカを押し出して「さあ、任務へ行ってらっしゃい!」と見送った。


疲労困憊だったマトとルチカは二日任務を休んだ。


この日は三つ目の英雄の剣を抜きに行く予定なのだ。


一日休んだだけでは疲労が回復しきらず、エンリの体を癒す回復魔法によって二人は短い期間で元気を取り戻して、次の任務に迎えるようになったのだった。


食堂でマトと合流すると朝食後、集会所へ行って任務資料を受け取った。


マトが職員と何かを話していたためボーとして待った。


「なに話してたのさ」


「今日は上級見廻隊の方が同行するらしいんだ」


「じょーきゅー見廻隊? なんだそりゃ」


「見廻隊の中でもトップの実績を持っていて魔法の使い手としてもこの国で五本の指に入る人だ」


「すげーじゃん。ルチには敵わないだろうけど」


「炎魔法制御できたからって調子に乗ってんな」


「でもさぁ、なんで急にそいつが付いてくることになったの? ルチ達の仕事は完璧だよ」


マトは任務資料を開いて言う。


「まあ、そもそも英雄の剣の回収が重要な任務ってのもあるだろうな。それに今回潜るダンジョンも一筋縄ではいかなそうだし、戦力が多いのは悪い事じゃない」


「で、そいつはどこにいるん? まさか! 遅刻かぁ!」


「職員さんの話によると、既にダンジョンに出発したらしい。ダンジョン前で待っていると」


「気が早いなー」


二人は都市を出てダンジョンに向かった。









ダンジョン付近まで着くと白い服装をした背の高い男が見えた。


近付いて行くと白い服装の男が二人に気が付き「おーい! こっち! こっち!」と言って手を振った。


それを見たルチカは訝しんで「なんだあいつ」と言った。


マトは「俺も実際には見たことないけれど」と前置きをすると「たぶんあの人が上級見廻隊の方だと思う」と目を凝らして言った。


二人がダンジョン前に着くと白い服装の男が走って近寄って来た。


それを見てルチカが「なんかきた」と言うとマトは「しっ」と咎めた。


白濁色のマントを身に纏った男はマントの下も白で統一しており、細身で背が高く整った顔をしていた。


男は言う。









「いやあ、どうも君達がマト氏とルチカ氏だね! ぼくの名前はブリンジャー・エキソンと言うんだ! いやぁ、昨日の夜はワクワクして眠れなくてね~。なんてったってあの英雄の剣を抜きに行くんだからね~。そりゃあ興奮するってモンだよね~。もうしょうがないから朝早くからランニングついでにダンジョンまで一人で来ちゃったよ~。あっ、何も言わず先に来てごめんね~。任務では単独行動しないから許してちょ! 仲良くダンジョン攻略しちゃおうぜぇ! なーんてぼくなんて全然意気込むタイプじゃないのに、柄にもないことしちゃって、はずかち~。それよりさぁ、一昨日発表されたイーブ博士の魔法論文見た? あれやばいよね~。魔法に革命が起きちゃうよぉ~。博士って他にもいろんな理論提唱していてカッコいいよねぇ。やっぱ一番は魔力を保存する方法を確立したことかなぁ。あれのおかげでさぁ魔道具のクオリティが一気に上がったよねぇ。魔法の歴史はイーブ博士の前と後でわかれるって言うしねぇ。それでさーあのさーこれがさーあれでさーやばくてさー・・・・・・」








ブリンジャーの畳みかけるトークに我慢の限界がきたルチカは「うぅるせぇ‼ 一人で喋るな! 彼女できないぞ!」


その怒声にハッとなったブリンジャーは「ごぉめぇんなさいぃ‼ ぼくったらついつい。喋り出すと止まらなくて!」


畳みかけトークに圧倒されていたマトは「全然大丈夫ですよ。お気になさらず」と言ってブリンジャーを落ち着かせた。


ルチカは呆れた表情で言う。


「どんな偉そうな奴が来るかと思ったら、なんだ、このキモオタは」


ブリンジャーは大げさなリアクションを取りながら言う。


「ひえ~。ルチカ氏厳しぃ~。ぐうの音もでない~。とは言っても、反論させてください! 確かにぼくは魔法オタクですけど、キモくはないですよ! イケメンだし!」


「いや、もうその反論の仕方がキモイ。それにモテない癖にちょっと顔がいいからってプライド高そうなのもキモイ」


「きえ~! 図星突かれてぐぎゃ! あんまりキモイキモイ言うと魔法オタクがこの世から消えますよ! いいんですか!」


「いい!」


「えぇ・・・・・・」


「それになんだそのキメェ、アテヌルスが吐き出しそうな色のマントは? かっこいいと思ってんのか!」


「か~! その言葉聞き捨てなりません! これは気高きシルフドラゴン色のマントですよ!」


「しるふドラゴン?」


「そうです! 白濁色のドラゴンの翼はどこまでも! ドラゴンナイト‼」


そう言ってブリンジャーはマントを掴み、手を広げてパタパタと飛ぶ動作を行った。


マトはそれを見て若干引いていたが、できるだけ表情に出さないように努めた。


しかし、ルチカは違った。


ブリンジャーの言っている意味は何もわからなかったが、ブリンジャーの行う空を飛ぶ動作をカッコいいと思ったのだ。


ルチカは「ふっふっふ! 貴様はシルフドラゴンか! 私は獄炎のドラゴン少女! 全てを焼き尽くすのだ! ガオッー‼」と言って、小さな炎を口から出した。


ブリンジャーは言う。


「ほう、君もいける口か」


「お前よりはな」


そんな二人を見てマトは思う。


(気が合いそうでよかったなぁ)


ノリにノるブリンジャーは、ルチカとドラゴンの真似をして戦い始めた。


「ドラゴン頂上決戦ですよ!」


楽しそうにはしゃぎ回り、ルチカを倒したブリンジャーは眺めているだけのマトに「さあ、マト氏! 君もドラゴンになりましょう!」と言うと、マトは冷静に「いえ、俺は大丈夫です。そろそろダンジョンの確認いっすか」と言った。


「あ、はい」

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