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6-2 モフドラ、好き嫌いをする

隊長室を出ると再び親衛隊からの鋭い視線が二人に注がれた。


ガウトが二人の後ろから「お前達。彼等を睨むんじゃない」と言うと、親衛隊はすっとガウトに目線をやる。


ガウトが二人に「今日はゆっくり休みなさい」と言って隊長室に戻ると親衛隊も後を追って入って行った。


終始無言の親衛隊に気味が悪いとマトのみならずルチカも思った。


マトは緊張から解き放たれ「ふう」と息を吐いて「とりあえず、飯行くか」と言った。


ルチカはお腹をさすって嬉しそうに言う。


「はらぺこだぜぇ」


二人が食堂に行くとパーンも来ており、三人で夕食を取ることにした。


ラム肉のステーキを幸せそうに頬張っているルチカの隣でマトはパーンと近況を報告し合った。








「で、どうやって行くんだ?」


パーンはグラヴラックスを頬張りながらそう言った。


ガウトから依頼された二つの剣を抜いて持ってくるという任務を達成するには二つのダンジョンに潜る必要がある。


厄介なのは二つの内の一つ、通称『壁画のダンジョン』と呼ばれるダンジョンで都市からはかなり遠くに位置している。


休憩なしで馬を走らせても五日はかかる。


マトは応える。


「まあ、野宿しながら進んで行くしかないよなぁ」


「野宿かぁ。魔物が多い土地は気を付けろよ」


「ああ。危険な場所で野宿しないように配分は考える」


「それにしても、新しいバディになっていきなり大変だな。なにか協力できることがあれば言ってくれよな」


「おう。サンキューな」







と二人で話していると、ルチカが自分の皿をマトの皿の方に持ってきて言う。


「野菜あげる」


ルチカは自分の皿に乗った野菜をマトの皿に移した。


マトは叱るように言う。


「肉ばかり食べるな。野菜もちゃんと取れ」


ルチカは「やーだよ!」と言って、自分の皿の上に被さりマトに野菜を入れさせない態勢をとった。


それでもマトはルチカの口元に野菜を持っていき食べさせようと躍起になる。


ルチカが「グゥゥ! グゥゥ!」と威嚇したり、隙をついてマトのキョットスーパに入っているラム肉を食べようとしたり抵抗を試みた。


そんな風に戯れる二人を見てパーンは微笑んだ。


パーンは言う。


「なんだ、お前ら兄妹かよ!」


マトが「兄妹⁉」と反応するとルチカは自分の皿に返された野菜をパーンの皿に移す。


「なっ!」


「協力してくれるんでしょー」


それを見てマトは呆れた顔で言う。


「まったく。ルチカ、身長伸ばしたくないのか?」


ルチカは気にしていることを突かれて「ぐぬぬ」と苦い顔をした。


パーンは言う。


「そうだ。胸大きくしたくないのか? エンリさんみたいに」


今度は頬を膨らませてルチカは言う。


「ふん! あんな乳見られて喜んでいる奴と一緒にしないでくれる!」


マトは更に呆れる。


「勝手にエンリさんをヘンタイにするな」


結局、野菜を三人で分けて食べることでルチカの反乱は終止符を打った。









落ち着いた食事会の話題はガウトとの会談の内容に戻った。


ルチカが言う。


「そーいえばさー。おっさんが言ってたベルセルクのなんちゃらってなに?」


「ベルセルクの狂乱な。あと、おっさんじゃない。ガウト隊長だ」


パーンは少し驚いて言う。


「そんな話もしてきたのか?」


マトは応える。


「詳しくはしていないよ。まあ、ルチカは知らないだろうな」


ルチカはテーブルの上に乗せた手をパタパタさせる。


「ねーねー。だからなんなのさ。その英雄だとか、ベルセルクだとか」


「疑問だよな。この任務の中心はルチカだし、ちゃんと説明しないとな」


マトは話し始めた。









「本題に入る前に、まずは『最古のダンジョン』について話す。ルチカは最古のダンジョンと普段俺達が潜るダンジョンの違いわかるか?」


「えーとぉ。最古ってことは一番最初? とか、一番古いとかって意味だよねぇ。う~ん。おんなじゃない?」


「まあ、そうだよな。質問を変える。魔物はどこから来たと思う? 魔物は元々この世界にはいなかったんだ。百年以上前までね」


「ええ! そうなの⁉ う~ん・・・・・・じゃあ、発見されるまで隠れていたとかかな?」


「ルチカの考えは否定しない。だが、現在有力な説となっているのは『魔物は最古のダンジョンを通ってこの世界に来た』ってモノだ」


「『通って来た』ってどこから来たん? それに説ってことは、確実じゃないってこと?」


「そうだ。だが、この説が有力視されているのには理由がある」


ここでパーンが口を出す。


「ちなみにこれまでの話は養成学校で習うことだぜ」


ルチカは「あーなんかきいたきがするー」ととぼけた。


マトは説明を再開する。


「最初に最古のダンジョンを通ってやって来たのは『こびと』と言われている。当時の農民が農作業中に歩いているのを目撃したと公的な記録に残っているんだ」


「ほうほう」


「その後は魔物や巨人が訪れてこびとと同じようにこの世界に住み着いた。


そしてやって来たのはその三者だけじゃない。


その三者は魔法が使えたんだ。


魔法を使える生き物が住み着くことによってこの世界の理と交わり、元々この世界になかった『魔法』が生じた」


「魔法すらなかったの・・・。てか、巨人とか見たことない・・・」


パーンは言う。


「巨人の子孫はいるぜ。大きさは二メートルから三メートルくらいになっているけどな。エッケっていう巨人は喧嘩っ早いけど潔い奴だぜ」







マトは説明を続ける。


「『魔法が存在する世界』になったことで人間達に変化が起きた。


それは『スキル』を身体に刻まれて生まれてくる子どもが現れたことだ。


それによって人類は魔法を扱えるようになったんだ」


「『変わっちまったなお前』状態だ!」


「ルチカも知っている通り、魔物達によって現在のダンジョンが生まれた。


人間達は環境の変化に合わせて適応していったが、ある問題が訪れた。


それは『ベルセルク』の襲来だ。ベルセルクとは、最古のダンジョンを通ってやって来た人間の姿をした『何か』だ」


「なにか?」


「人間と言っていいのか、魔物と言っていいのか、それとも神と言っていいのかはわからない。


とにかく人間の姿をした奴らは、突然現れてこの世界の人間を次々と誘拐していった」


「どこへ連れて行くの?」


「最古のダンジョンだ。ベルセルクは誘拐した人間達をダンジョンを通して『向こうの世界』に連れて行こうとしてたんだ」


「そんなんが許されるかよ!」


「そこで立ち上がったのが、俺達が英雄と呼ぶ戦士達だ。彼等はベルセルクと戦って『向こうの世界』に追い返し、誘拐された人達の半数以上を助け出した」


「てことは、その英雄は最古のダンジョンを見たってこと?」


「その通り。英雄達はベルセルクを追う過程で発見し、最古のダンジョンまで追い込んだ。


そして事が済んだ後、リーダー格の三人は最古のダンジョンの存在を王に伝えるように生き残った戦士に命令して、最古のダンジョンに入って行った」


パーンが補足する。


「その戦士が王に伝えた内容がこの説が有力である証拠になっている」


ルチカは「ほーん」と言って「英雄の剣ってのは、そのリーダー格のモン?」


マトは応える。


「そうだ。英雄は『ジークフリート』『ディートリッヒ』『ハイメ』の三人だ」


ここまで話すと、ルチカの瞼が下がり始めたのを見てマトは「ルチカにしてはしっかり人の話を聞けたな」と労って食事会を解散することにした。

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