6-1 ガウトとの会談
マトとルチカが暮らす見廻隊寮の隣には見廻隊本部があって任務が終わると見廻隊員達は本部一階の受付に報告をしに行く。
館ダンジョンを後にしたマトとルチカは、いつも通り受付で事の顛末を伝えた。
取集品としてルチカが抜いてしまった剣を渡すと職員は受付の奥の部屋へと入って行った。
マトは不安そうな表情で「怒られなければいいけどなぁ」と言うとルチカは「デージョーブデージョーブ」と言って「ケケケ」と気楽に笑った。
暫くして、職員が戻って来て言った。
「ガウト隊長がお二人に話を聞きたいそうです。隊長室に通すようにということなので、こちらへどうぞ」
マトは急な話に驚く。
「ガ、ガウト隊長が⁉」
マトは余計に不安になる。
隊長直々に話を聞くというのは、相当不味いことをしたのではないか。
マトの頭にあらゆる可能性がよぎる。
ダンジョンギミックをいじってしまったこと、剣を持ち帰って来てしまったこと、魔物討伐という任務なのに故意に逃がしてしまったこと。
これらに対する二人への罰について話し合われるのではないか。
職員は二人を案内するために階段を上がった。
ルチカは呑気に「なんの話だろー」と言ってついていったが、マトが突っ立ったままなのに気付いて「マトォ~。置いてかれるよぉ~」
マトは不安を抱えながらも階段を上った。
三階に着くと廊下があってその奥に隊長室がある。
二人は職員について廊下を歩いて行くと隊長室の前に五人の見廻隊が壁に沿って立っていた。
マトはすぐにその五人が隊長の親衛隊だとわかった。
親衛隊は男三人と女二人で成っている。
体の大きな筋骨隆々の男、目つきが鋭い実直そうな男、ニヤケ顔で二人を凝視する男
人を見下した顔をした髪の長い女、笑顔で殺気を放つ女。
凄まじいオーラを放つ親衛隊は職員とマトに恐怖感を与えた。
親衛隊の間を通る際、親衛隊から圧迫感を感じる視線が向けられてマトが委縮する中、ルチカは頭の後ろに両手を伸ばして鼻歌を歌っていた。
職員が隊長室のドアをノックして二人が来たことを知らせる。
すぐにドアが開いてガウトが出てくる。
ガウトがどんな険しい表情で出てくるのかとマトはドキドキしながら表情を伺うとガウトはニコやかに、そして優しい口調で「いらっしゃい。中に入ってください」と言った。
マトが「失礼します」と礼儀正しく入るとルチカは「しつれしやーす」と言って入った。
二人はソファーに案内され座った。
テーブルを挟んで向かいのソファーにガウトが座った。
テーブルの上には布に包まれた剣が置いてあった。
ガウトは布を捲って剣を出し「ルチカ君が抜いたのはこの剣だね」と言った。
「うん。その剣がどうしたの?」
マトはルチカの言葉遣いを正したい気持ちになったが、ガウトが意に介していない態度だったため、マトはガウトの次の言葉を緊張しながら待った。
「これはね、私達の国にとってとても大切な剣なんだよ」
「へー。なんで?」
マトは思わず口を出す。
「あのぉ。やっぱり不味かったですか? この剣抜くの・・・」
マトの言葉にガウトは目を丸くして一瞬沈黙した後、笑顔になって「いやいや。そうじゃない。私は君達に感謝をしているんだ」
「感謝ですか?」
「そうです。率直に言うとね。私はこの剣を抜ける人をずっと待っていたんだ。この剣は誰にでも抜けるわけじゃない。力の問題じゃない。力以外の何か、資質のようなものがないと剣は抜けないんだ」
ルチカは鼻を高くして言う。
「ふー。やっぱルチって特別なんだぁー」
ガウトは微笑みながら「ルチカ君は竜人だからね。何か特別な力があってもおかしくないね」
マトは言う。
「あのぉ。それでその剣の正体は・・・」
ガウトは「そうだね」と畏まった表情になって「『ベルセルクの狂乱』と言えば察しが付くかな」と言った。
マトは険しい表情になって「なるほど・・・」と言った。
ルチカは何もわからないため「ん? なに?」と交互にガウトとマトを見た。
マトはルチカの方を見て言う。
「簡単に言うと、この剣は国を救うために戦ってくれた英雄が使っていた剣ってことだ」
「ほうほう」
ガウトは言う。
「英雄の剣は遺物として国に納め管理されるべきだと私は思う。
国ために戦った英雄達を供養するためにね。
しかし、英雄の剣はダンジョンの奥に位置し、そのどれもが抜けないんだ。
他に剣が眠るダンジョンを二つ把握していたが、この英雄ハイメの剣『ブルートガング』が農地の外れにある館にあったとは」
マトは言う。
「正確には館がダンジョンを隠す形で建てられていたんです。剣を崇めていた痕跡があるので館の持ち主はわかっていたのかもしれません」
そのマトの説明にガウトは小さな声で「そうか館をダンジョンの一部にしていたのか・・・だから・・・イメージと差異が・・・・・・」
ガウトの独り言が断片的に聞こえていたマトは「・・・? さい? 何がですか?」と聞くと「いやなんでもない。こちらの話だ」とガウトははぐらかした。
ガウトは気を取り直して真剣な表情で言う。
「二人にお願いがある」
「なんですか?」
「本部が把握している残り二つの英雄の剣を抜いてここへ持ってきて欲しい! 二つともダンジョンの奥にある。君達にしかできない任務だ!」
マトがガウト直々の任務命令に慎重に返事をしようとしているとルチカが乗り出して言う。
「もちろん! この特別な力を持ったルチが抜いてきちゃるよ!」




