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1-1 ドラゴンの子ども

魔物は知能が低い種族がほとんどで、本能のままに行動する。


日夜彼らは、人を含むあらゆる生物を襲うことで食べ物や宝、貴重品を奪い取っている。


彼らの多くは、自然現象によって出来た洞窟に住み着く。


奪い取った物は洞窟の中に持ち帰り保管される。


洞窟は住処にしている魔物によって拡張・改造される。










そんな魔物達を有害だと人間が判断すれば魔物は狩りの対象になり、魔物は狩られ、住処の洞窟にもやってくる。


そのような事例が急激に増加し、いつしか洞窟に魔物を狩りに行く仕事ができた。


その洞窟がダンジョンであり、狩人が冒険者である。


そして今や冒険者は魔物がダンジョンの奥に貯めた宝や先人の冒険者が洞窟に残していった遺物を求めてダンジョンへ潜る。






             ◇◇◇






ゴブリンの住処になっている洞窟ダンジョンに見廻隊であるマトは、バディのパーンと来ていた。


成人男性が四人は入れるくらいの幅をもつこの洞窟は動きやすくゴブリンしか住んでいないため、新米冒険者がよく訪れる。


マトは、ダンジョンの中を見廻隊に支給される照明魔道具で照らしながら、くまなくダンジョン内をチェックしていた。


パーンが仕事を忘れているかのようにズカズカと進んでいるのを見て、マトが声をかけようとするとパーンの足元にポーションの空き瓶が落ちているのに気付いた。










マトはポーションのもとへ走り、拾った。


「ポーションの空き瓶だ。底に少量残っているな」


パーンは面倒くさそうに振り返った。


「だからなんだよ」


「こういうので魔物が耐性を付けたりするんだ。おそらく新米冒険者が捨てて行ったんだろう」


「ゴブリンしかいないだろ。大丈夫だ」


パーンの不真面目さにマトは、不安を覚える。


「大丈夫じゃない。最近妙な噂を聞いた。ゴブリンでも侮ってはいけない」


パーンは馬鹿にしたような口調で言う。


「お前、あんなの信じてるのかよ。ただの噂だろ。新米冒険者がビビって見間違えたんだよ」


「あのなぁ。俺達見廻隊の仕事はダンジョンの管理だ。少しの変化にも気を使うべきだ。それなのにお前は、足元のポーションにも気付かない」


「はいはい。教科書通りの解説ありがとさん」










パーンはマトが腹を立てているのを理解していながらも煽るように続ける「つーか。マトよぉ。お前同期の見廻隊からなんて呼ばれているか知ってっか?」


「は? なんて言ってたんだよ」


「役立たずの蘊蓄(口だけ)野郎」


「・・・・・・なんだよそれ」


パーンはスッキリした顔で再び不用心に歩を進める。






見廻隊にとってダンジョン内の環境を人間が汚すことは防ぐべきこと。


ダンジョン内を魔物にとって秩序ある状態に保管してこそ冒険者という職業は成り立つ。


マトは自分が見廻隊として行ってきたダンジョン内の秩序を守るという仕事に誇りを持っていた。


攻撃魔法が不得意なマトの仕事として最適だとも考えていた。










「なぁ。こここんな広かったか?」


先に進んでいたパーンが悪びれることもなくマトに話しかけた。


マトはパーンの少し驚いたような口調が気になった。


マトはパーンの元へ走った。


その途中、道が以前来た時よりも広くなってきていることにマトは違和感を覚えた。


マトはパーンに追いつく。


パーンの視線が向く方向と同じ方に視線をやる。


そこはとてもゴブリンが住み着く洞窟とは思えないほどの大きく円形に開けた場所だった。


巨大生物―ドラゴン等―が住み着いていてもおかしくない程の。


「なんだ・・・これ。こんなものなかったはずだ」


パーンもさすがに動揺した口調で言う。


「ま、まあ、魔物がダンジョンを拡張するなんてよくある話だし・・・」


「だけどゴブリンしか住んでいないこのダンジョンでこれならどんだけの数が住み着いてんだ! データと合わないぞ!」










円形の開けた場所の壁には壁に沿って階段が設置されており、壁にはところどころ出入口のような穴が開いている。


目の前の光景に気を取られていると上の方から「キィィィィィィィ‼」と人間ではない何者かの叫び声が聞こえた。


「なんだ⁉」


叫び声の方を見上げるとそこには階段に続く出入口付近に四匹のゴブリンが立っていた。


そしてその四匹のゴブリンの目の前には、ドラゴンが飛んでいた。


両者は睨み合っているように見える。


「おい! マト。あれドラゴンか?」


「ああ。でもおかしい」


「あん? どこがだよ?」


「あの見た目、肌の感じ。間違いなくエンファニシィドラゴンだ。でも、小さすぎる」


「まだ子どもなんだろ」


「いや、エンファニシィドラゴンの子どもは体毛が羊並みに生えている。外傷から身を護るためにだ。成体になると皮膚が硬くなり毛が抜け落ちて体毛がなくなるんだ。しかし、あのドラゴンは小さいのにまったく体毛が生えていない」


「じゃあ、小さい個体なんだろ」


(いや、違う。あれは第二次成長期を迎えたばかりのドラゴン。成体じゃない!)










マトは言う。


「そもそも何でこんなところにエンファニシィドラゴンが? ゴブリンと何をしているんだ。やっぱり何かおかしい」


「そんなもんドラゴンがゴブリンを襲っているに決まってんだろ! 弱肉強食の世界だぜ!」


そう言ってパーンは開けた場所に入って行った。


「何してんだパーン‼ ドラゴンがいるんだぞ‼」


「成体ならまだしも、あんなちっこいドラゴンなら俺達で倒せる‼ 手柄を上げて昇進してやる‼」


(ドラゴンはゴブリンに攻撃をしているわけではない。あくまで睨み合って、そうお互いの意思を伝えるように、口論をしているように・・・)

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