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4-1 モフドラ、謝罪を要求する

見廻隊の朝は早い。


その日に行う任務の確認をして任務内容にあった作戦をバディやチームメンバーで話し合う必要があるからだ。


この日もマトは規則正しく、早起きをし、身支度を終えて集会所へ向かった。


集会所では既に先輩の見廻隊員達がディスカッションを行っていた。


マトはその人達に尊敬の眼差しを向けつつ職員のもとへ行き、話しかけた。


「おはようございます。第二十二隊のマト・レイルです。本日の任務資料を受け取りに参りました」


職員の女性は微笑んで応える。


「おはようございます。マトさん。本日の任務資料はこちらです」


そう言って職員は資料をマトに渡した。


資料を受けとったマトが中身を確認しようとすると職員は言う。


「あら? 今日はルチカちゃんいないの?」


マトは恥じらいつつ「多分寝坊です」


職員は察したようで「大変そうねぇ」と返した。


(ホントだよぉ)


遅刻をして任務の開始が遅れれば、残業や任務の持ち越しに繋がる。


そうなれば、見廻隊の任務のスケジュールに影響がでる上に、自分達の評価が下がる。


マトは何としてもそれは避けたかった。


しかし、ルチカは女子寮にいるので男のマトが起こしに行くことはできない。


どうにかルチカに遅刻させない方法はないのか。


マトを悩ませるのだった。


マトは集会所にある席に座って任務資料を広げた。


任務の内容はマトも聞いたことがある事柄だった。


(これまだ解決してなかったのか)


この一週間、多くの見廻隊が従事した任務だが、ついにマトのもとにも協力依頼が来たのだ。


マトが資料を読み込んでいると集会所のドアがバタッと開いてルチカが入って来た。


半分も目が開いていない状態で鼻提灯を出したルチカは寝ぼけながらも


「すひあへん。ねほうしあした」と言った。


マトはルチカを呼んで席に着かせた。


半分寝ながらもなんとか意識を保とうとするルチカを見てマトは愛らしさを感じ


「よく頑張って起きたな。偉いぞ」と労った。


ルチカは親指を立てて「プロだからね」と言った。







集会所で寝られたら困るので目を覚まさせるために、今回の任務地へ向かおうと二人は集会所を出た。


すると二人の背後から聞き覚えのある声が聞こえた。


振り返るとそこにはマトの元バディであるパーンが立っていた。


「よ!」


パーンの姿を捉えるとマトは駆け寄った。


「パーン! どうしたんだ急に。てか、バッシ教官に連れていかれた後、どうしてたんだ?」


「わりぃな俺のせいで急にバディ解散になっちまって。俺はあの後、見廻隊養成学校でバッシ教官の手伝いをしていたんだ」


「そうか。今日から現場復帰か?」


「いや、今は騎士団に出向してるんだ」


「騎士団に? どうして?」


「術式砲の技術者が必要なんだと。一時的にだけど騎士団に所属している」


パーンが「んで、お前らに・・・」と照れくさそうに何かを言おうとした時、パーンの顔を見ながら考え事をしていたルチカがハッとした表情になる。


「あ! 思い出した! お前ルチに岩ぶつけた奴だ!」


そう言うとルチカはパーンの目の前に行って「謝って!」と激しい剣幕で訴えた。


パーンはルチカの態度に動揺しながらもすぐに覚悟を決めたような目つきに変わった。


「俺は今日。お前らに謝罪をしに来た。ルチカ。頭に岩ぶつけてごめん。チビって言ってごめん。

ダンジョンに潜入する時、着いて行ってやれなくてごめん」


マトはパーンの意外な態度に驚く。


パーンは続ける。


「マト。これまで俺はお前を馬鹿にした態度をとってきた。


それが間違っていると知りながらだ。


マトは自分が魔法を不得意だと知った時点で、自分にできることを見つけ出し、マトにしかできないモノを手に入れた。


俺はマトの諦めない心とお前が『何か』を持っているということに嫉妬していたんだ。だから、傷つけるために嘘もついた」


「へ? 嘘?」


「『役立たずの蘊蓄野郎(口だけ野郎)』」


「あれ、嘘なの?」


「ああ。俺の作り話だ。本当は同期(みんな)の話題にマトが出てきたことは一度もないんだ。ごめん。本当にごめん」


「・・・そうか」


マトは平静を保ちつつもちょっと傷ついた。


しかし、問題はそこじゃない。


元バディのパーンがこれまでの事を悔いて謝罪をしているのだ。


マトが言えることは一つ。


「大丈夫だ。パーン。俺はもう気にしていない。それにお前との任務、楽しかったこともあったし。パーン、謝りに来てくれてありがとうな」


マトはルチカに向かって言う「なあ、ルチカ。いいよな」


ルチカは表情を和らげて応える。


「まっ、許してやろう。ドラゴンは心と体がデカいからね!」


パーンは泣きながら「ありがとう」と言った。







パーンは泣き止むと「そうだ。これをマトに渡しに来たんだった」と言って短剣を取り出した。


「短剣?」


「そうだ。マト、新人時代に支給されたナイフをそのまま今も使ってんだろ? 俺は特別に作ってもらった短剣を使ってたんだよ。こっちの方が切れ味いいから魔物討伐とかに役に立つぜ」


「これを俺にくれるのか?」


「ああ。暫く使わないからな。マトにやる」


マトは元相棒の好意を素直に受け取ることにした。


「ありがとう」


「おう!」


パーンは二人に背を向けて歩きながら言う。


「じゃあ、またな。お前らのこと応援しているからよ!」


二人は手を振り返した。

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