3-4 魔法の授業
学校ダンジョンには学校を模しているだけあって授業ができる教室が完備されている。
マトとルチカは魔法の授業を行うために教室にやって来た。
「くっ! なにをする! ここでルチにいったいどんな酷いことを!」
ロープで縛られ暴れるルチカを教室内へポーンと投げ入れた。
「魔法の授業だよ」
「・・・拷問⁉」
「いや魔法を教えてやるって言ってんだよ。どんな聞き間違いしてんだ」
どうしても勉強が嫌なようで「むぎぃ~」と言いながらロープを千切ろうとする。
「魔法、コントロールできるようになりたくないのか?」
ルチカは不貞腐れた表情でボソッと言った。
「今のままでも十分使えるじゃん・・・」
「今後ダンジョンに潜って行けば魔物と戦うこともある。そんな時ルチカの放った炎が関係のない魔物にも当たってしまったらどうする?」
沈黙するルチカ。
何かを考えているようで、マトはルチカが話し始めるまで待つことにした。
暫くしてルチカは言う。
「わかったよぉ~。ちゃんと魔法についてベンキョ―するからさぁ、ロープ外してくれよぉ~」
マトはルチカに念を押す。
「逃げるなよ」
「わっかてらぁ!」
マトはルチカのロープをほどく。
ルチカは席について黒板の前にいるマトと向かい合った。
「それでは今から魔法の授業を始める」
「お手柔らかにお願いします!」
マトは黒板に文字を書き始めた。
「まず、魔法を使うには魔力が必要だ。魔力というのはマナによってできている。マナは空気中に浮いていて普段生活している中で自然と体に取り込んでいる。そのマナを体のとある気管が魔力に変えている」
「なるほど! じゃあ、いーっぱい吸い込めばいいんですね!」
「マナの摂取を意識してできる人はいない。それにマナを取り込みすぎてしまうと体の許容量をオーバーして体調を崩してしまう。そういう場合はマナ抜きをして体内にあるマナを減らすんだ」
「ほーう」
ここまではルチカがついてこれているのをマトは確認すると続いて魔力の運用の仕方について話し始めた。
「ルチカが炎を出す時、体の中はどんな感じだ?」
「そりゃはもうお腹に力をグッと溜めて熱いやつをドバッて吐き出してる」
「そのお腹の中に溜めた魔力は初めから熱かったか?」
「ん~~~~とねぇ・・・・・・あっ! 段々熱くなっていったような!」
「そうだ。魔力は熱くないんだ。つまり魔力単体では炎にはならない」
「じゃあ、どうやって炎にしてんの?」
「魔力には属性を与えることができる。ルチカの炎魔法はルチカが魔力を炎属性に『切り替えた』んだ」
「切り替えた?」
「そう。俺達人間には『属性ギア』というものがあって魔力に属性を与えて切り替えることが出来る」
「ほえ~?」
「人間は多くても三種類の属性にしか切り替えられない。元々の無属性の魔力を所持している属性のどれかに切り替えているんだ」
「じゃあ、ルチカは炎属性を持っているってことだよねぇ! 他は? 何属性持っているの?」
「それはルチカがギアを切り替えてみないとわからない」
「やってみたーい」
「解説が終わったらな」
ルチカの好奇心にマトも気分が乗る。
「ルチカ。ここで質問だ。魔法とはなんだ?」
「え? ブバッってやってドーンてするやつ」
苦笑いを浮かべながらマトは言う。
「魔法の構成要素だよ」
「魔力でしょ」
「もう一つある」
「ん~~~~」
顔に皺を作ってまるで名探偵かのように悩む素振りをするルチカを(あっ、こいつ答える気ないな)と気付いたマトは見かねて答えを教える。
「それは『スキル』だ!」
「ス、スキル! 初めて聞いた!」
ルチカのその言葉に呆れるマト。
「お前なぁ、今まで話したことは全部学校で習ったことだぞ。基礎中の基礎。初めて聞いたなんてあるわけないだろ」
ルチカはキリッとした眼差しで言う。
「いやぁ~素晴らしい先生に教えてもらえるといろんな発見があって勉強になりますなぁ~」
ルチカが再びゴマを擦って誤魔化そうするもマトは取り合わなかった。
先刻調子に乗って失敗したばかりだ。
気が引き締まっている。
「『スキル』ってのは、魔力に動きを作るものだ。誰にでもあるわけではないが『属性ギア』と同じように体内にあると言われている」
「ねーねー質問なんだけどー」
「おっ! なんだ!」
「ルチの炎魔法はさぁ、魔力を炎属性にして吐き出しているわけでしょ? スキルってやつがどう関係あるの?」
「いい質問ですねぇ! それはな『吐き出す』ってのがスキルなんだ」
「はきだすのがすきる?」
「つまり『魔法』ってのは『魔力』というエネルギーの方向性を『スキル』で矯正することで発現する『現象』のことを指す」
「な、な、なる、なるほ・・・・・・なるほどぉ!」
「・・・授業続けても大丈夫そ?」
汗を掻き、苦悶の表情を浮かべながら「もちろんだぜぇ」とルチカは言った。
「ルチカ自身を使って説明すればわかるはずだ」
「まじ!」
「ルチカはさっき当たり前のように口から炎を吐いていたけれど、なんで人間の姿で炎が吐けたと思う?」
「ルチがドラゴンだから!」
ルチカが考えずに答えているのを察しながらマトは続ける。
「そうだな。エンファニシィドラゴンの能力の一つだからだ。じゃあ、質問していいか? ルチカは人間の姿のままで飛べるか?」
ルチカは考える。
「・・・そういえば飛べないかも・・・」
「だろうな。飛ぶことはエンファニシィドラゴンの能力だが、人間の姿では飛べない。それは人間の姿では人間に適した魔法の使い方があり、竜人のルチカも例外ではないってことだ」
「なるほど」
「んで、ルチカの魔法についていきなり結論を言うと、ルチカは人間の姿になると『ドラゴン』というスキルになるみたいだ」
「ドラゴンというルチの姿が、人間になるとスキルに置き換わるってこと?」
「そうだ。推測だがな。つまり、エンファニシィドラゴンの能力を人間の姿で使っていくには魔法を鍛錬する必要があるってことだ」
「ルチの属性の数、ドラゴンスキルの内容。両方気になる‼」
座学が終わり、実技になるとルチカは目が輝き始めた。
「自分の持つ属性を知る方法は、ギアを切り替える想像をしながら手のひらから切り替えた属性を放出する動作をすることだ」
マトがそう説明するとさっそくルチカは元気よく「いでよ! 水の弾丸!」と言って手のひらを前へ出した。
すると、ルチカの口からピロピロと少量の水が弱々しく流れ落ちた。
「へ? なんじゃこれ?」
その滑稽な姿にマトは笑いをこらえながら
「すごいじゃん。炎に水。王道の属性持ちだぜ。かっこいい」
「うー。でもこれじゃあ、使えないよう」
「これからだろ。努力あるのみだ!」
その後も属性を確かめたルチカは、全部で五種類の属性を持っていることが発覚した。
「初めてみたよ。属性を四つ以上持っている人を」
「へへーん! ドラゴンだからね! なんかすげぇー魔法作っちゃうよぉ!」
「良い目標だな! 拝める日を気長に待つよ」
実際新しい魔法を生み出すのは難しい。
それはスキルである程度、魔法の『形』が決められているからではなく、魔力の属性の同時選択を今だ、人類で成し遂げた者がいないと言われている程に困難なことだからだ。
『属性ギア』の細かい操作や運用はそれだけ難しい。
マトがルチカの初々しさを可愛く思っているとルチカが何かを見つける。
「マト見て! あれ! あそこに何かいる!」




