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3-1 期待の新人現る!?

マトは心を躍らせて目を覚ました。


新人として見廻隊デビューした日の朝と同じ気持ちだった。


アラフィコスの件から一ヶ月経ち、マトは新しいバディを迎えることになったのだ。


前バディのパーンはあの後、バッシが「鍛え直す」と言って連れて行ってしまったためバディを解散することになった。


その後一ヶ月は代理のバディと任務についていた。


そして今日。見廻隊養成学校より、期待の新人がバディとしてやってくる。


そう。その新人こそがルチカなのだ。


マトはルチカを迎え入れるべく寮の集会所で待つことにした。


新人は皆、寮で暮らす。


自分の部屋に荷物を置き、初任務の命令が下されるこの集会所にやってくるはずだ。


マトは楽しみにしながらも先輩として落ち着いた態度を取らなければと、気を引き締めながらルチカを待った。


すると集会所のドアがバァーンと開いて「期待の新人! ルチカ・ド・ヘット! ただいま参った!」と大きな声を上げてルチカが入ってきた。


集会所にいた見廻隊の注目を集めるルチカに(恥ずっ)と思いながらマトはルチカに手を振った。


「おいルチカ。こっちだこっち」


「うお! マト!」


マトに気付いたルチカはドタドタと荒々しく駆け寄った。


ルチカはマトを見上げて言う。


「暫く見ないうちに大きくなったんじゃないか?」


「親戚の叔父さんかお前は」


マトはルチカの見廻隊の制服姿を見て、一か月前よりも逞しく見えた。


「ルチカ。飛び級合格だって? すごいじゃないか」


「いやぁ~。一ヶ月も勉強して疲れちゃったよぉ~」


「いやいや本来は三か月学校に籠って座学と魔法の基礎練習をやって、それから現場研修がスタートするんだぞ」


「ま! ルチはドラゴンだからそんなの必要ないのさ!」


「そういえば、ルチカの評価表をバッシ教官から預かっているぞ」


マトは評価表を開いた。


「ほうほう。なんて褒めてる?」


マトは評価を読み始める。


「ルチカ・ド・ヘットの授業への態度に関する特記事項・・・・・・ん? なんだこれ・・・」


マトの顔色が変わる。


「どしたん?」


マトは気になるところを読み上げた。


「ルチカ氏は魔法の才能に溢れ、他の生徒と比べ抜きんでているだけでなく養成学校において教えることは一つもないと判断し、実技に限り飛び級合格とした」


「お! いいじゃん!」


「問題はこの後だ」


「問題?」


「授業を行った教官からは『落ち着きがない』『いつも何かで騒いでいる』『静かだと思ったら寝ている』『起こすと奇怪な動きをする』などなど指導には大変苦労したと声が上がっている」


ルチカは「へへへ」と照れ笑いをする。


「誇るな。まだ終わりじゃないぞ」


「なぬっ!」


「バッシ教官からだ。

『ルチカは常に筆記試験で赤点を採っていた。追試に追試を重ねたが、座学への態度が変わるわけではなく、赤点を採り続けた。卒業試験では他の教官に頭を下げて追試を八回まで行ってもらった。

それでも赤点を採ったため最後の手段として俺は予め試験の答えをルチカに教えた。

九回目の追試を金で買い、ルチカに受けさせ、何とか筆記試験に合格させた。俺はこの不正を墓場まで持って行くつもりだ』」


バッシからの明らかにマト宛てに書かれたであろう評価を読み、マトは暫く沈黙した。


ルチカは言う。


「き、教官ってタイヘンだね~」


マトは顔を上げて、ルチカの頬をつまんで引っ張った。


「ルチカ! バッシ教官になにさせてんだ!」


「だっへあかくねむくなるうんはもん(だって座学眠くなるんだもん)」


マトは手を離した。


ルチカは「いてて」と頬をおさえる。


「もうちょっと養成学校にいた方がよかったんじゃないか?」


「ええ~。やだやだ! ベンキョ―つまんない!」


マトは溜息をついた。


「しょうがないやつだ」


しかし、マトは思う。


(やっぱり卒業するの早すぎるよなぁ)






とは言ったものの、マトは気を取り直してルチカに言う。


「改めて。ダンジョン見廻隊へようこそ!」


「へへっ!」



「そして、これからバディとしてよろしく!」


「ふむ! ドラゴンであるルチに背中を預けたまえ!」


「普通に不安なんだが・・・」


「なにお! 魔法は飛び級合格で卒業しているんだぞ!」


「筆記はギリだけどな」


「そっちも合格してんだよぉー!」


「はいはい」


ちょこまかと暴れるルチカを片手で抑えながらマトは言う。


「ルチカ。今日から初任務だぞ」


ルチカの暴走は止まる。


「ダンジョン!」


「ああそうだ。これからダンジョンに行って見廻隊として仕事を行う。詳しい任務内容はダンジョンに着いてから説明する」


「えー。今じゃないの?」


「今回のダンジョンは実物を見ながらの方がわかりやすいからな」


「よし! わかった! じゃあ出発しよう!」


マトとルチカは寮を出てダンジョンへ向かった。







向かっている途中、ルチカがとあることを思い出し、マトに言う。


「そういえばマト。養成学校にいる時ね。色んな教官からよくマトの話をされたよ! 『マトはいつ教官になるんだ?』とか『早く教官になれ! って伝えろ』ってさ」


マトは苦い顔をして話す。


「ああ。俺、魔法が下手なんだ。でも教えるのは好きなんだ。養成学校時代、知識をつけることに執着したから知識だけはあって。他の生徒に座学はもちろん、自分じゃあ使えない魔法の指導もしたことがある。だから教官に会うとよく勧誘されるんだ」


ルチカは少し不安な気持ちになる。


「教官にならないよね?」


マトはルチカの不安を振り払うように笑顔で応える。


「当たり前だ! 俺はダンジョン巡りがしたくて見廻隊に入ったんだからな!」


「よかった! ちゃんとルチが断っといて」


「おまえなぁ」


ルチカの勝手な行動にマトは呆れた反応をしたが内心嬉しくもあった。


ルチカは言う。


「マトはルチとダンジョンを見廻るんだ!」


「よし! 俺らの初任務! 楽しんでいこうぜ!」


「よっしゃこーい!」


そんな話をしているといよいよ初任務の地であるダンジョンに到着した。

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