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2-4 交渉人

ドラゴンとマトがダンジョンから飛び出てきた。


思わずバッシは叫ぶ。


「お前ら‼」


人間の姿に戻ったルチカとマトはダンジョンの前に降り立つ。


「遅れてすみません」


ハーゲンは言う。


「これで問題ないな。さ、君たちそこを退きなさい」


二人は動かずお互いを見て意思を確かめ合う。


「何をしている。早く退きなさい」


「ハーゲン指揮官。失礼を承知で意見よろしいでしょうか。ダンジョンへの攻撃を中止していただけないでしょうか」


「なにぃ?」


「ダンジョンの奥に生命の木があります」


「生命の木? なんだそれは?」


(やっぱ知らないか・・・)


国の上層部にいる人間であれば情報を得ているとマトは考えていたが、ハーゲンの反応から本当に知らないのだと判断した。


「生き物の生命力を増強させる力が宿った木です。保護する価値があると見受けられます」


ハーゲンは悩まし気な顔で呟く。


「生命力の増強・・・? それがあれば意図的に命の在り方を操作できるとでもいうのか?・・・」


その時、マトとルチカの背後にあるダンジョン入り口の影にアラフィコスがいることにハーゲンは気付いた。


「まさか‼ その生命の木の力でアラフィコスが増殖しているのではないだろうな‼」


「・・・はい。確かにそのとお・・・」


「ならん‼」


マトの返事が終わる前にハーゲンは捲し立てる。


「その木がいかに有用であろうとも奴らがそれを利用しているのであれば看過できん‼ そこをどけ‼」


ルチカは即座に「どかない‼」と返す。


ハーゲンは技術者に砲撃準備の合図を送る。


ルチカは叫ぶ。


「待って‼ あの子達は人間に憑りついたことはないって言っているよ‼」


ハーゲンはルチカの言葉に耳を貸さない。


「アラフィコスがもうここまで来ている‼ 最大火力で放て‼」


ハーゲンは上げた手を下ろして砲撃開始の合図を送った。


マトは火炎魔法から逃れるため岩陰に飛び込んだ。


しかし、術式砲の前に立ちふさがるルチカに気付く。


「ルチカ‼ 逃げろ‼」


「逃げない‼ ルチが守る‼」


その瞬間術式砲から放たれた炎がルチカを襲う。


「ルチカァ‼」


炎が止み、煙の影には一つの人影が見えた。


煙が止むと無傷のダンジョンと全身火傷だらけのルチカが立っていた。


術式砲から放たれた全ての炎をその身一つで受けとめたルチカはその場に倒れ込んだ。


マトは急いでルチカに駆け寄る。


「ルチカァ‼ おい起きろ‼」


ルチカの心音を確かめる。


「くそっ‼」


ハーゲンは言う。


「まったく邪魔しおって。次の準備を」


するとダンジョンに隠れていたアラフィコスがルチカの側に寄ってくる。


集まって来た十数匹のアラフィコスは口から管を出してルチカの頭にくっつける。


それを見ていたハーゲンが思わず叫ぶ。


「おい‼ お前‼ ドラゴン娘が乗っ取られるぞ‼」


マトは手の平をハーゲンに突き出して静止させた。


「大丈夫です。この子達を信じてください」


アラフィコスの管は脳や血管、神経にアクセスすることで生物を操っている。


それはつまり、体内の動きを操っているということ。


アラフィコスの管を通して止まってしまったルチカの体内に働きかけ、脳や血の流れを再起動させた。


管を通してアラフィコスの体内にある必要な栄養素をルチカの体に送る。


更に自然治癒力を最大まで引き上げ、火傷を治した。


ルチカは目を覚ました。


「ルチカ!」


ルチカは上半身を起こして周りを見た。


アラフィコスがルチカに「キキキ」と話しかけるとルチカはアラフィコスを手の上に乗せて「助けてくれてありがとう」と言った。


一連の流れを見ていたハーゲンは「こ、これは・・・⁉」と驚愕の表情を浮かべた。


マトは立ち上がりハーゲンに言う。


「アラフィコスが必ずしも人間の敵というわけではありません」


「し、しかし人間の脅威であることには変わりはない! 今しがたゴブリンを操って襲ってきたではないか!」


「この子達にも守るべきものがあったからなんです・・・。もちろん、全てのアラフィコスが無害とは言いません」


「なら‼」


「だからこそ・・・・・・提案があります‼」


「提案だと?」


「はい。今見ていたただいた通り、ルチカとここのアラフィコスは良好な関係にあります。ですので、今後のアラフィコスの動きについてこの子達と交渉する役目をいただけないでしょうか」


「交渉だと・・・? 何をどう交渉するつもりだ。ここに奴らがいる限り、増殖することは変わらん。それに生命の木はどうする? 移動できるのか?」


「このダンジョンに留まるアラフィコスの数を制限し、繁殖数を減らします。生まれた子どもが動けるようになったら別の巣に行って育てるようにします」


別の地で事情を知らない冒険者に殺される可能性がある。


しかし、それはマトの思惑通りだった。


一時的に増殖を許しても人類のためにいずれかは狩らなければいけないことをマトは理解していた。


ルチカには罪悪感を感じながらもしょうがないことだと考えた。


「生命の木は動かせられないので調査に協力するよう呼びかけます」


ハーゲンは不満な表情をする。


「ふんっ! どれも行き当たりばったりな策だな」


そこへバッシが待機位置から語り掛ける。


「ハーゲン指揮官! 魔物と対話をもてるのは初めての事です。一度試す価値はあるのではないでしょうか!」


ハーゲンはバッシの意見に余計に表情が険しくなる。


「・・・・・・まあいい。やってみろ」


「本当ですか⁉」


「だが、失敗すれば今度こそ一匹残らず焼き尽くす‼ いいな‼」


「はい‼ 機会をいただき感謝します‼」


「ああ、それと。今回の交渉、ゴブリンも交えることを忘れるなよ」


「はい! 承知しました!」

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