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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

聖騎士一家に生まれた僕は死ぬまで真っ当しそして。

作者: やーしん

初めての短編を書きました。

意外とこっちのほうが完結まで書きやすいのでいいかも。

騎士国家。

それは我々人類の最後の希望だ。

現在、世界は騎士国家とマリス共和国に二分されていた。

1つは人類の繁栄のため。

1つはそれ以外の生物の繁栄のため。

願いによって二分された世界は混沌の時代を迎えた。

そして今日その混沌が続いて150年。

追い詰められた騎士国家は再度マリス共和国へと侵攻を開始した。


「ミュラネス様。敵の位置が分かりました。推定していた場所で間違いありません。」


副官が報告していきた。


「分かった。兼ねてからの作戦の通り実行する。」


それぞれの指揮官に前もって伝えていた作戦を命じた。


「さて、我々も前進しよう。」


他の部隊が奇襲を開始した。

すでに敵の前線基地は壊滅的な被害を受けている。

だが一向に敵の勢いは衰えない。

そこで我々は正面から最後の一押しとして侵攻開始した。


「進め!すでに敵は壊滅状態だ!勝利は近い!」


我々が参戦して士気は高揚したが一向に敵の勢いと数が減らない。

時間をかければかけるほど援軍の可能性がある。

挟撃されれば我が軍の敗北は決定的だ。


「伝令!第3第5部隊全滅!他の部隊も壊滅状態とのこと!」


「なぁ!?」


すでに我が軍は壊滅状態になっている。

情報はすぐに伝えるように命令していた。

僕はそこで気づいた。

おそらく遊撃部隊がいて伝令そして長距離魔法通信を破壊もしくは妨害をしていたのだろう。

つまりこちらの作戦が筒抜けもしくは予想されていたということだろう。

これ以上悪くなるのは避け難い。


「総員撤退!速やかに撤退!」


我々は秩序を保ちながら前線基地の砦までなんとか撤退した。

死者数行方不明数は我が軍の7割。

良く秩序を保てたと言えたものだ。


「胃がいたい。」


その言葉が自然と出てしまった。

落ち着きたいところだが、時代はそれを許さない。


「ミュラネス様!」


「どうした?」


慌てる様子の兵士が執務室にやってきた。


「敵が一斉に攻めて来ました!現在副官であるギルテス様が指揮をとっております!」


「分かった。お前の名はなんと言う?」


「はぁ!私の名はルタス一等兵です!」


「分かった。私の名で貴様を少将に昇進だ!ルタス少将!民間人も含め総員第3基地まで撤退を指揮せよ!」


「なぁ!我々も!」


「ダメだ。必ずこちらの状況を伝えよ!絶対にだ。そして民間人全員を守れ!分かったな!」


「はい!」


かの将兵は走り去った。


「さて死地へと向かいますか。」


剣を腰に納め向かった。

すでに砦は死の匂いで充満している。


「ギルタス。状況は?」


「はい。すでにこちらの損害は重大。正面から攻めてこられたらこちらに勝ち目はないかと。」


「そうか。なら命令だ。撤退せよ。この基地は放棄!速やかに撤退せよ!」


「なぁ!しかし。」


「ダメだ。ギルタスには撤退の指揮をしてもらう。殿は私で充分と言いたいところだが、すまないが付いてきて貰えるかな?」


「いいでしょう。流石に数が多い故、1人では心持たないのは確か。このエジール、老い先短い身です。付いてまいります。」


かの老人は私に付いてきてくれるみたいだ。


「エジール。ありがとう。」


「いえいえ。あなたが生まれてこの方後悔した覚えはありませんよ。おぼっちゃま。これでもあなたより戦争を経験しているのです。これも必然かと。」


「そうか。」


我々は石で出来た階段を降り正門の前にきた。

人の気配は無い。

もう避難してくれたかな?

魔法で身体能力を上げた。


「エジール!」


「はい!」


正門が勢いよく開かれたと同時に駆け出した。

最初は遠距離から広範囲に魔法をそして近距離に近づき剣で切り裂く。

他からも金属音が聞こえる。


「まだまだ!」


がむしゃらに戦場を駆けた。

いつの間に金属音は聞こえなくなっていたが、そんな余裕は無い。

そして


「ここまでか。」


おそらく大将級の将兵だろう。

すでに魔力は底をつき立つのもやっとだ。


「うおおお!」


決死の突撃。

剣で突くように敵に向かって行く。

躱わされそして腹を殴られる。


「グハァ!」


地面に這いつくばる。

すでにその手に剣は無い。

そして最後は人類最後の武器、拳だ。


そんな物が効くはずが無く手で受け止められる。

そして首すら掴まれ空中で身動きが取れなくなる。


「なぜ無駄な足掻きをする。君の敗北は決定的だ。無血開城でも良かったのでは?」


最後のプライドが折れた音がした。


「うぁあああああああ!」


最後に左腕で殴ろうとした。

だが尻尾が巻きつきそして。


「えぇ?」


肩から先が無くなった。

僕の意識が飛ぶ瞬間の会話が聞こえた。


「良く見たら陛下が好きそうな顔だ。連れて行くか。」


ーーーーーーーー

騎士国家都市に衝撃的な情報が伝わった。


「何ですって!?第一基地が陥落!?」


「はい。先ほどギルテス中将より報告が入りました。」


「他の幹部にも伝えて緊急会議よ。」


上着を着て部屋を出ようとした。


「そうだわ。弟は?」


「それが、殿をしたと。」


「分かったわ。」


その後開かれた会議で奪還作戦を行われた。

これにより奪還作戦が立案されて実行に移した。


「エリアス閣下。」


「どうした?」


私の副官が指揮官テントにやってきた。


「いえ。先ほど弟君のことを耳にして。」


「そうか。まぁ座れ。」


「はい!」


彼女を座らせ、少し話をした。


「弟はね。まだ16だったのよ。そして前線で戦って何度も傷付いてそれでもなお戦っていたのよ!」


「落ち着いて!」


どうやら熱くなってしまった。まさかこんなに取り乱すとは司令官として失格だ。


「今日はここでお開きね。」


夜は静か。静寂だからこそ不気味。虫の音すら聞こえない。

それ以上に星空は綺麗に輝いている。

私の心を救うのはこの星空だけかもしれない。


翌日の早朝から奪還作戦は行われた。


最初は砦に対して広域魔法で攻城。

そして潜入中の工作員による内部工作。

それでやっとのことで我々騎士による正面突破だ。


「突撃!第一部隊は私に続け!このまま中枢部に向けて進撃!他の部隊は他施設を制圧占領したのちに我々に合流!」


「「「はい!」」」


「散会!」


なんとしても弟が散ったこの地だけは!


私の祈り・思いが通じたと考えたい。

激しい抵抗を予想していたが、意外にもすんなりと開城そして撤退していった。

あまりにも抵抗がなさすぎたので何かの作戦かと考えたのだが、三日三晩何も無かったので警戒態勢を解いた。


「エリアス様!」


女性兵が作業していたところに急いだ様子で駆けてきた。


「どうした?慌てて。」


「失礼しました!先ほど哨戒中の部隊が帰還しました。その部隊が発見して持ち帰って来ましたのでそちらを見て頂きたく。」


「分かったわ。」


私は残りの作業を部下に命じてその場を任せた。

そのまま地下にある保管室に来た。


「こちらです。」


ドアが開けられるとすでに中には幹部が揃っていた。


「エリアス様。」


「みんなも呼ばれていたの?」


全員頷いた。だがその顔はあまりいいものでは無かった。さらに私を見る目が同情を語っている。


「エリアス様。落ち着いて聞いて下さい。」


そう言って布が掛けられていた台。その布が取られた。

そこには今尚聖なる加護が付与されている腕だった。


「もしかして弟の?」


「おそらくそう思われます。相当強くかけていたものが消費が抑えられてこのままの状態で残ったのかと。」


私にはわかる。この魔法の固有振動数が教えてくれる。この魔法をかけたのは弟のものだと。


「損傷のから相当戦闘をしたものかと。そして周りに散らばった鎧がありました。」


もう一台の台が現れるとそこに血がついた鎧があった。


「おそらく魔物に肉を食われたのかと。鎧には沢山の歯形があり。」


私はそこで堪えていた感情が爆発してしまった。

異質に戻り弟の写真を見ながら感傷に耽った。


「エリアス様!」


ドアの外で声を上げる副官。


「お忙しいの存じますが一度会議室に来てくれませんか?」


それだけ伝えると彼女はすぐに去って行った。


そこまで急ぎのようは何なのかわからない。要件もわからないが私の感が行くべきだと言っている。

私は重い腰を上げ軍服に着替え私室から出た。


「さて、急ぎの用とは何かしら?」


「はい!先ほど哨戒中の部隊が敵と交戦しました。そこで捕虜を得て情報を吐かせたところ今週中に魔王が前線基地に来るとのこと。」


マリス共和国は共和制を敷いているが実のところ現マリス皇帝が作り上げた国で魔王を名乗っている。

しかしマリス皇帝の庇護の下沢山の種族が暮らす強大な国家になった歴史がある。


「まさか全面攻勢に出ると!」


「それが違うようです。」


「というと?」


「どうやら前線司令官が魔王に献上するものがあるらしく帝都に連絡したところ視察も兼ねて来るそうです。」


「なるほどね。」


確かにこうも長い間戦っていると士気が下がる。しかし、慕う魔王が来るとなればそれだけ士気高揚するものだ。


「問題はその献上品です。」


彼女は言いにくそうにしていた。


「言ってみなさい。」


「どうやらミュラネス様のようです。」


私はその言葉に過剰に反応してしまった。


「どういうことなの!」


「落ち着いて下さい!まだ確信がありません。かの魔族が言っていた外見的特徴がミュラネス様と一致していたというだけで。」


私は激昂した感情を落ち着かせた。


「それで救出案はあるのかしら?」


「無いわけでは無いのですが、結局は魔王を倒さないと話が。」


「私がやるわ。」


「エリアス様!それは!」


頭を振って彼女らの忠言を遮った。


「生きていなさい!私が助けてあげるわ!」



ーーーーーーーーー


冷たい床だ。いまだに鈍痛が響く。全身が痛く良くわからない。


「出ろ。」


無機質な言葉が僕に降りかかる。

おそらく毎日のように行われる人体実験のようだ。

すでにどのくらい行われているのかもわからない。

だがこの日は違った。


「イグーシア司令官!」


バッチを沢山付けた軍服に纏った女性がいた。


「よい。本日は魔王マリス様より命令が降った。よかったなミュラネス。」


どうやらここで。


ーーーーーーーーー


私たちは精鋭部隊で敵の前線基地へと向かった。

と言っても敵の前線基地は栄華を極め一つの都市と言えるぐらいの街並みだ。


「偵察部隊より敵の哨戒網が薄いところに案内するとのことです!」


「分かったわ!頼む!」


私らは迅速かつ安全・確実に敵の前線基地へと侵入出来た。

別働隊として陽動部隊が別方向で火災を発生させていた。

迅速な行動で敵に見つからずに中枢部まで到達した。


「中に敵がいますね。」


索敵に長けた将兵が中の様子を逐一報告してくれている。

敵の数、能力共に私たちの方が劣っている。


「不意打ちしかないわね。」


私たちは奇襲を行った。

1人2人3人と敵の急所を的確に刺していく。

我々聖騎士は正面からの戦いを好んでいたが、それでは勝てないことを知った。

なのでこういう戦い方も覚えた。藁にも縋るおもい。


「これは凄いプレッシャーです。」


この基地に入ったときから生物としての本能が逃げろと言っている。

それだけ生物としての格がちがうことが分かる。

この中心には魔王がいる。そこから発生しているのであろう。


「えぇ。近づくにつれ更に重圧が増しているわ。」


すでに半分以上の部下をなくしている。それでも前に前に一歩一歩進むしかない。

この重厚感溢れる扉の先にいる。間違いなく。


「エリアス様!先に行って下さい!」


その言葉に意識を改めた。既に援軍が迫って来ている。


「分かったわ。でも死なないで。」


黒く重厚な扉が退路を絶った。


ーーーーーーーーーーーーーー

この世界に未来というものはない。

ある時を境に未来は無くなる。

その先には何もない。言うなれば虚無がある。


「おはよう。ミュラネス。」


目の前には知らない女性がいる。一見すると人間種だが違う。


「誰だ?」


「ふふ。それは後で分かるわ。まずはついてきなさい。」


ベッドから立ち上がると体が軽かった。

それどころか左腕がある。

その左腕を見ると明らかに人の形をしていなかった。触手のようなものだ。

嬉しい誤算か、これへの忌避感もなく、使い方も分かる。

そして分かった。


”僕は、人ではない”


これには確信がある。

あの女性へ敬愛が心にある。それどころか忠誠すらある。

なぜ聖騎士の僕がと感じた。

人々の守護が我々の務めだ。


「さて、元聖騎士君。」


明らかにここは玉座と思える部屋だ。

豪華絢爛。

その一言につきる。


「ふむふむ。馴染んでいるようね。」


僕の体を一瞥する。そして段々と自分自身に馴染んでいくのも分かる。そして変質していく。


「はい。マリス様。ありがとうございます。」


「うんうん。お利口さんは好きよ。」


僕は、知った。僕が何者なのか。マリス様に絶対服従であることを。


「こちらに来なさい。」


玉座の下に膝をついた。

マリス様は立ち上がり僕の頭に手を置くと僕の中に何かが入ってきた。

それは暖かく優しくぼくを包み込んでくる。

気分が高揚していく。今までのことが一新される。


「私の祝福よ。」


マリス様は優しく微笑み玉座に座った。

手の甲で頬杖をつくと真っ直ぐと門の方を見た。


「お客様の登場よ。」


返り血を浴びた鎧を着た女性が立っていた。


ーーーーーーーーーーーーー

私は魔王の玉座に目を疑った。

この部屋に入った瞬間に威圧を感じなくなった。

そして彼女の隣に。


「ミュラネス!」


「呼ばれているわ。ミュラネス。」


「はい。マリス様。しかし、私の記憶では彼女のことを知らないのです。」


魔王はそのまま態勢を変えずにいた。

そして弟は魔物化させられその時に記憶も弄られたと考えられる。


「そう。ならあなたのお姉ちゃんだということを思い出させてあげる!」


玉座に一直線に近づき剣を上から振るう。

しかし、間合いよりは遠い。

それでも振るう瞬間に聖魔法の剣に纏う。


「はあああああ!」


私はこの攻撃が決まったと思った。

しかし、金属がぶつかりあう音。そしてそのまま吹き飛ばされた。


「ほお。まさか間合いを伸ばすとは驚いたわ。でも、ミュラネスに任せるわ。」


弟が剣を納め礼をする。周りの魔物たちは微動だにしていない。

流石に荷が重いかな。


「弟が来るとはね。さっさと性根を叩き直してあげるわ!」


何を言われているのかわからないという表情だった。

不意打ちだろうが卑怯だろうが生きるそして助けるため。

先制攻撃しかない。


「聖なる加護を!」


自身の能力を高め魔物からのダメージを軽減してくれる加護。

私はそれを使いそのまま一番速い攻撃を行う。

胴を薙ぎ払うように剣を振るう。

しかし、それも防がれる。

でも諦めない。

体を逆に回転させ左腕を狙う。

当たった瞬間に切り裂く感覚が違った。

その違和感に気づいた時距離を取った。


「左腕は治したのではなく、魔物と合成させたのね。」


「ご名答よ。ふふ。まさかここまで上手くいくなんて思わなかったわ。」


いつの間にか弟の隣にいた魔王。その気配、動きに気づけなかった。


マリスは明らかに布面積が少ない服装で豊満な胸を弟にピッタリとくっつけていた。


「だからこんなこともできるのよ。」


何かを耳打ちすると弟は体の力が抜けたようにぐったりした。

意識を戻したみたいで顔を持ち上げた。


「あれ?姉さん。ってあれ?」


まっすぐ前に私がいたので私をみたのだろう。そして隣にいる魔王。


「ふふ。ミュラネス。あなたのお姉さんを殺しなさい。」


「何で?あれ?体が!」


体の主導権は魔王マリスにあるのだろう。

彼は私に向かって魔法を放った。

闇魔法のダークスフィア。


「私を守れ!」


聖魔法による防御を高めた。闇魔法は聖魔法で相殺できる。


「だからダメなのよ!」


「姉さん避けて!」


私の右側にすでにいた。

魔法に特化した防御なら物理に対して弱くなる。それを狙った攻撃。

それに対して魔法を放っているため私の剣は地面に刺さっている状態。

つまりどちらか受けるしか無くなる。

なら防御魔法の質力をあげて耐える。


それでもそれ以上の攻撃で防御は剥がされる。


「ふむ。しぶとさだけは一級品ね。」


「褒めてくれて助かるわ。」


「なら少し私の実験に付き合ってもらおうかしら。」


彼女の圧力を受けている私に伝えるかのようにひしひしと伝わってきた。


「私の可愛い実験体達よ。」


魔王の転移魔法で現れたのは改造された魔物と人間。いや、それぞれを書け合わせたような存在。


「彼らのおかげであなたの弟が生きているのよ。」


また私は彼女の気配を気づけなかった。私の隣にいるのに。そして弟はまた意識を沈められたようで沈黙している。

私はそこで気づいた。すでに彼女に対して勝ち目などないのにどうして戦っているのだろう。

弟を助けるため?それはどんな方法で?


魔王の口の口角が上がった。

弟の隣にまた転移して弟の首を


「魔王マリス!!!!」


「あらあら。いい表情よ。でも惜しいわ。私この子好みだったのよね。また作ろうかしら。」


私は実験台にされた彼らを薙ぎ払い近づく。


「やっぱり実験体はあまり強くなわね。適材適所ってことかしら。」


「マリス様。」


そこにメイドの女性が現れた。


「外の敵は殲滅しました。」


「ご苦労様。」


「はい。」


私はその言葉が聞こえてしまった。


「嘘……」


「あなた1人ね。どうするの?」


「ふざけないで!私は最後まで人類の希望よ!」


私は彼女が何を望んでいるのかも分からない。でもそれでもここで彼女を打ち取れば希望はある。


「聖なる雨よ!」


広範囲魔法で周りの雑魚を蹴散らす。これで私の魔力のストックも切れた。


「これで十分かしら。」


「何のこと?」


「ふふ。面白いものを見せてあげるわ。」


“聖なる命よ。吾が僕に息吹を。”


「それは!」


絶命していたはずの弟と実験体達が復活した。


「何で?この魔法をあなたは使えないはずでは。」


「特別に教えてあげるわ。あなたの弟を隅から隅まで調べたわ。それこそ記憶もね。そしてあたし自身に落とし込みあとは使っているところを見て覚えただけよ。」


私は驚愕した。これが魔王マリス。やはり私では。


ーーーーーーーーー

僕は暗い闇の中にいる。時より聞こえる姉さんの声。そう言えば姉さんを見た気がする。

死んだ。この事実を受け入れるのはそう時間が掛からなかった。


そこに一つの温かい感覚に浸った。僕の意識が覚醒する。


目を覚ますと姉さんがボロボロになっていた。目の前には魔王マリス。


「姉さん!」


「あら。そっちの意識も覚醒したのね。」


「魔王マリス!」


「そんなに睨まないで。これはあなたがやっとのよ。」


「え?」


僕は自分を見た。そこには返り血を浴びた剣と鎧。


「本当に?」


「そうよ。これであなたもこっち側の人間ね。」


その事実が僕の心を揺らした。


「まだよ。弟に聖魔法を浴びせたのが功を制したわ。」


姉さんは立ち上がり欠けた剣を構えた。


「まぁ。これも予想外ということかしら。でもそこまで想像外ではないわね。」


魔王の空気感が変わった。

僕は姉さんと視線を交わし、自由に動かせる体で魔王に攻撃を仕掛けた。


「「やぁあああ!」」


「いい攻撃よ。効果的な連携。素晴らしいわ。」


僕らの攻撃が当たらない。


「こちらも仕掛けるわ。」


彼女の上にただの闇の魔力のが集まり一つの塊になった。

そしてそれがこちらに押し付けるように降ってきた。


「ぐぅっ!」


すでに姉さんの魔力はそこをついている。

僕はその塊を左腕で受ける。


姉さんはその隙に遠回りして魔王に肉薄した。

意識を姉さんに移したことで魔力の塊が霧散する。

僕も一瞬で姉さんに追いつく。


その猛攻すら魔王はいなす。


「もう飽きたわ。」


あくびをするようにして僕らの止まらない攻撃を躱し、いなし、反撃する。

その一つ一つが重い。

しかし、魔王も隙を見せた。

姉さんはその一瞬を逃さなかった。


「はぁああああ!!!!」


最後の聖魔法を帯びた剣で魔王を切り裂く時だった。


「だから言ったでしょ。想像外では無かったと。」


僕は姉さんを剣で貫いた。


「さっきあなたが言ったことを試したのよ。少しずつ闇の魔力を弟君に注いだって。」


その笑みは闇そのものだった。


「さて弟君。どうかしら。今度ははっきりと覚えられるわね。あなたの姉を切り裂く感覚を。」


絶望と嫌悪感が自分の中を駆け巡った。

そして魔物としての感覚が僕を蝕んでいく。


「うん。姉弟の聖騎士。悪くないわね。」


魔王マリスは手を叩いた。


「マリス様。」


「この2人を私の自室に。」


「かしこまりました。」


「そうだわ。この2人にやってもらいましょ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

聖騎士国家にさらなる悲報が届いた。

それはエリアスの死だった。

そのことは全土で反乱が起こってもおかしくないことだ。

すでに戦う戦力などないことも事実だ。

しかし、彼らは諦めない。

なぜならここで敗北を宣言しても人類は魔のもの達の奴隷として生きるしかなくなるからだ。


すぐに現占有戦力を総動員して彼らと戦った。

それでも勝てはしなかった。


それも裏切りの聖騎士の2人に。


「姉さん。なんか敵から名前を呼ばれているのだけど。」


「なぜかしらね?」


「分からないけど。ここを攻め落とせばいいんだよね?」


「そうよ。早く終わらせましょ。」


「うん。」


そうして、最後の希望は最後の絶望へと変わった。


「マリス様。楽しそうですね。」


「えぇ。すっごく。」


「それだけあの姉弟はお気に入りですか?」


「そうね。あそこまで適性があるとは思わなかったわ。」


魔王マリスはその笑みを崩すことはなかった。









最後まで読んでくださりありがとうございました!

戦闘シーン、キャラのやり取り凄く難しかったです。

もっと精進いたします。


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