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青山紗弥と青山紗希の日常  作者: 赤崎月結
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第2話「将来に向けてのTwilight」

「紗弥は将来の夢とかあるの?」

 パソコンに向けてカタカタとレポートを書き進める紗希が、目線を向けることなく紗弥に問いかける。

 いつものように炬燵の中でミカンを頬張る紗弥は頭に大きなハテナマークを浮かべる。

「どうしたん、そなんこといきなり聞いて」

「いや、単純にあなたがこれから進学するのか就職するのかが気になっただけよ」

「なるほどねー」

 紗弥は手を止めることはなく、ミカンを食べ進める。

「無回答ということは、何も決まってないということね」

「さすがです、お姉様」

 紗弥は平伏して頭を下げるが、すぐに頭を起こし、紗希の顔を見つめる。

「でも、紗希。私別に何かやりたいことがあるわけじゃないんよ」

「……ほう、話を聞きましょうか」

 別に大そうな話をするわけじゃないんだけど……と言いながら、紗弥は続ける。

「紗希って将来は何がしたいん?」

「私も別に何か夢があるわけじゃないわよ。でもこうやって勉強してるのは、いわゆる一流の企業に入社して、楽な生活をするためよ」

「おっしゃることはごもっともでございます、お姉さま」

 紗弥はまた大きく炬燵に入りながら深々と頭を下げた。対極にいる紗希はその様子を見ることなくレポートを書き進める。

「でも、紗希。私はとっても最近思うことがあるんよ」

「どんなことかしら」

「紗希にとって『楽な生活』っていうのは何なん?」

「そりゃあ、十分な収入があって、適度に休みがあって、残業もないような仕事について、いい相手と結婚して、幸せに暮らすことよ」

 紗希が珍しく熱弁する。

「それは確かに憧れるわぁ!」

 紗弥はその場にゴロンと横になる。

「でも、世の中全部がそうとは限らんやんか」

 横になった紗弥は天井を見上げながら続ける。

「ほう、その心は?」

「ほら、一流の企業に入ったは良いものの、そこがすんごいブラック企業で、夜遅くまで仕事するけど全然給料増えない一流の企業とかあるやんか。結局、それって就活ガチャみたいなもんやんか」

「それは確かに言えてるわね。じゃあ、紗弥は進学はせずに地元の小さな企業に就職したのでもいいかなってこと?」

「案外、それも嫌なんよな。だってウチ、まだピチピチの10代やで? それなのにもう仕事なんてものに精を出して生きていかなきゃいけんとか、人生何のために生まれてきたんかわからんなってしまうやんか」

 仕事を何だと思ってるのよ、と紗希がつぶやくが紗弥は続ける。

「それにな、今のうちだったらいろんな選択肢があると思うねん。ほら、ウチ美人やからさ、お水の仕事とかすればある程度は稼げると思うねん。あとはいい男捕まえて玉の輿専業主婦を狙うとかも全然ありやんか」

「確かにあんたは男に持てそうな感じはするものね。そういえばこの前のあのアカウントは何なのよ!」

 紗希が目線をパソコンから紗弥に移すが、紗弥はそんなのどうでもええやんと聞く気を持たずにまた話し続ける。

「人の幸せって人それぞれやねん。社会で活躍して何かで一番になることもええと思うんやけど、私は平凡でいたい。日々平穏に生きていられることが幸せだと思うねん。仕事に精を出して、過労死してしまうくらいなら、生きてるだけで丸儲けな人生の方が良くない?」

「それは、紗弥みたいな美人な人にしか通用しない話じゃないの?」

「何言うてんの。紗希も十分美人やで?」

 紗希は少し顔を隠して、レポートを書き進める。

「こればっかりは女の特権みたいなもんやんか。女の子はみんな可愛くありたい。その可愛いをお金に換えて何が問題あるんかってことよ」

「いや、私はそんなことするつもりないけど」

「それもそれでええと思うよ。紗希にも彼氏がいて、彼氏一途で、彼氏から水仕事はやめてくれって言われたら、そんなん言い返せんやんか。でも、ウチだったらこう言ってやるわ。『あんたが私の分まで稼いでくれたら辞めてやる』ってな」

「だから、そんな強気に言えるのが紗弥みたいな人だけなのよ」

 それもそうかも、と言って紗弥はまたミカンを食べ始める。

「ともかく、私は遊んで暮らしたい! そのためにはまずは20になってお酒が合法的に飲めるようになりたい!」

「それは将来の夢とは違うでしょ。それで、進学するの、就職するの」

「ま、これで言うと進学かな。それも4年制の大学で」

「何よ、ちゃんと決まってるじゃない」

「当たり前やん。じゃないと姉と一緒に上京するなんて、お父さんとお母さんに言うわけないやん」

 それもそうだったわね、と紗希はレポートを書く手を止める。

 紗希はとある東京の名門私立大学に通う2年生だ。紗弥はそんな紗希を追いかけ、大学進学に合わせて東京の高校を受験し、一緒に暮らしている。

「じゃあ、紗弥は来年の今頃受験なのね」

「ウチのことは大丈夫よ。それより、紗希は来年の今頃は就活生やで」

「残念、私は大学院に進学する予定だからね」

「うっそやん! 紗希ってそんな頭良かったの!?」

「いきなり失礼ね……、姉を何だと思ってるのよ。それより、紗弥は受験は大丈夫なの?」

「うーん、東大は正直難しいけど、お茶大か一橋、なら……お姉ちゃんに迷惑かけられないから国公立にする予定よ」

「……しれっと私よりいい大学行こうとするのやめてくれるかしら」

「ウチも、本当は紗希を追って東大行きたいんやけどな」

「私、東大受験して落ちたんだけど!?」

 ぎゃーぎゃーと姉妹喧嘩が、今日も勃発するのだった。

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