異世界転生パングラム
冒頭約1100文字分は言葉遊びとは関係ありません。
パングラムだけ見たい方は読み飛ばし推奨。
――もしかしてこれって、異世界転生!?
そう叫んだはずの声は、おぎゃあおぎゃあという赤子のものだった。
普通の男子高校生だった俺は、トラックに轢かれたと思った次の瞬間、見知らぬ場所で見知らぬ女性の腕に抱かれていた。
その女性は健全な男子高校生の大半が萌えるであろう、フリフリで可愛らしいメイド服を着ている。髪色は地球人では染色しないとあり得ない鮮やかなブルーで、瞳は煌めくピンク。それだけでここが二次元にありがちな異世界だということを確信する。
家の内装を見てみると豪華で、おそらく貴族に生まれ変わったのだろう。前世の貧乏学生生活とは比べ物にならない上流階級の第二の人生、しかもメイド付きという華やかさに胸がときめく。
もっとメイドさんの腕の感触を味わっていたいが、それより今は確かめなければならないことがある。
「ぎゃあ、おぎゃあー!」
ステータスオープン!と叫んだつもりが、やはり言葉にならない。
しかしステータスはきちんと出てきた。うっすらと青のウィンドゥに文字が書かれている。
『ステータス一覧
名前:ユー・シャテンセー
体力:9999
攻撃力:9999
守備力:9999
魔法:全属性使い放題
LV:1
称号:勇者になりし者』
ふっ、やっぱりな。
異世界もののお約束、チート転生。LV1にしてステータスがカンストしてやがる。しかも勇者という主人公におあつらえむきな称号。トラックで死んだ時は最悪だと思ったが、意外と悪くないかも知れない。
きっと悪的な存在がいて、それを俺が討伐して勇者になるんだ。
そしてその予想は間違っておらず、0歳から第二の人生をスタートした俺は少年期から侯爵領――ちなみに俺が転生したのは侯爵令息だった――に出現する魔物をバンバン倒しまくり、小さな英雄と呼ばれるように。
十歳にして王立魔導学園というところへ推薦入学し、そこでチートの限りを尽くして他の生徒を圧倒。
そして十五歳の時、いよいよその時が来た。
学園で共に学んでいた水魔法使い、火魔法使い、闇魔法使いの三人の少女。
彼女らを隣に侍らせつつ、この世界の平和を脅かさんとしている魔王を倒すための旅を始める。
魔王はなかなかに頭がいいのか、明らかに美少女ハーレム要員にしか見えない亜人の奴隷少女や村娘なんかを刺客に送ってきたが、俺は騙されない。罠を見抜く力は第二の学生時代に鍛えたのだ。
旅には無理難題がつきもので、刺客以外にも多くの障害が待ち受けていた。しかしそんなことで凹む俺たちではなく――。
「ふっ、超えられるね!」
パワーで魔法で、時には前世の知識を巧みに使って。
名声を得るため、美少女ウハウハハーレムライフを送るため。
チート勇者である俺の歩みは決して止まらない。
「悪へ勝つぞ!」
勇ましい声を上げながら、魔王城の扉を蹴破った。
・異世界転生パングラム
転生先はチート勇者に
魔物倒すヒーローを誉めよ!
罠、見抜け
無理? ふ、超えられるね!
悪へ勝つぞ!
【解説】
てんせいさきはちーとゆうしゃに
まものたおすひーろーをほめよ!
わな、みぬけ
むり? ふ、こえられるね!
あくへかつぞ!
パングラムとは、ひらがな五十音を全て「一度だけ」ずつ使って作る文章のこと。
濁音は清音としてカウントしています。
異世界転生パングラムを先に作り、それに合わせてストーリーを書きました。
前回と違ってパングラムはずっと前にできていたのですが、話がなかなか思い浮かばず。初めてチート転生ものを書きました。(これを長編で書ける人、すごいな。私にはただひたすらチートな俺TUEEEは書けない……などと思ったり)
ネタが尽きたのでこれでパングラムはおしまいです。
次はリポグラムをやるかも、やらないかも。どうぞお楽しみに。