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ユアは15歳の女の子

「無事に登録出来ましたね!」

「……うん」


 登録できた。本当に何事もなく登録できた。柄の悪そうな男の人がいたにもかかわらず何事もなく登録できた。正直いってテンプレ展開を期待してたし、私達の見た目的に絶対絡まれると思ってた。だからちゃんとマップも見てた。視線は感じるけど白い点ばかりだった。


 あと冒険者は、E、D、C、B、A、Sの順番でランク付けされてるみたい。その説明を私は、ほぇーって感じで聞いてたらなんとルーファのランクがAだと判明した。多分と言うか確実に難癖つけられなかったのはルーファがいたからだと思う。

 そんな訳でルーファがいたら高ランクの依頼も受けられるみたいだったけど、私はイマイチあの神様が信頼出来ない。昔の私より体が強くなってることは分かるがあの神様には前科がある。私の事を思ってくれる相手を女の子にしたという前科が! ……という訳でEランクのゴブリンを3匹討伐する依頼を受けた。

 そして私はルーファと一緒に私とルーファが出会った森へ向かっている。ロングソード(・・・・・・)を片手に。

 え? ロングソードはどうしたかって? ルーファに買ってもらいました……はい、私はまたルーファに借金を作りました。


「ユアさん? どうかしましたか?」

「……またルーファにお金借りちゃったと思って」

「返さなくていいですよ?」

「返すよ。それを理由に結婚を迫られる可能性もあるし」

「そんなことしませんよ! 私は私の魅力でユアさんと結婚します!」


 そんなやり取りをしながらもマップを埋めながら森を歩いていると赤い点が見え始めた。そしてルーファも少し長い耳をピクピクさせてマップの赤い点の方を指さしてあっちにゴブリンがいると教えてくれた。

 マップは敵か味方かしか分からないからルーファがいて良かった。あと普通にマップが埋まってない所でも赤い点が見えたけど私を中心にした自動追尾みたいな感じでないと埋まってないマップは何も見えないみたい。さっき興味本位でマップをスライドして森全体を見てみたけど赤い点どころか白い点も何も無かった。逆にルーファと出会って街に向かう際に通った道には赤い点が何個かあったから私の考えは間違ってないと思う。


「今更ですけどユアさんって戦えるんですか?」

「……戦ったことない」

「だ、大丈夫ですか? 血とか切った感触とかでトラウマになる人っているんですよ? ほんとに大丈夫ですか?」


 うぅ……そう言われたら大丈夫じゃない気がしてきた。確かに体は強くなってる気がするけど、精神面は強くなった気がしない。

 そしてそんな不安になっている私の気も知らずゴブリンが3匹やってきた。


「ギィィィ」

「ギィギィギィ」

「ギギ、ギィ」


 緑色の1mぐらいのゴブリンが棍棒を振り回して私たちを威嚇している。

 正直舐めてた。私の今の感情は一つだけ。怖い。ただそれだけだ。手足が震えるのが分かる。

 そんな私の様子を見てゴブリンたちは笑いながら私に向かって棍棒を振り上げる。

 次の瞬間、私が気がついた頃には私は柔らかくて、暖かい何かに抱きしめられていた。ルーファだ。


「ユアさん、大丈夫ですよ。もう、大丈夫ですから」


 そうルーファは優しく私の頭を撫でてくれる。私の中の感情は恐怖から違う感情に書き換えられていた。私はみっともなくいつの間にか震えが止まっていた手でルーファに抱きつき大泣きする。


「ぐずっ、ルーファ、あり、がとう。怖かったよぉ」


 それからしばらくルーファに頭を撫で続けられ、私は正気を取り戻していき、一気に恥ずかしくなってきていた。ルーファを抱きしめていた手を離し、ルーファにもう大丈夫だからと伝えルーファにも離してもらう。


「落ち着きましたか?」

「う、うん。その、ありがとう」

「どういたしまして」


 私は何もしてないし何も出来てないけど、依頼は一応達成したので報告に行くために街に戻る。私の意思でルーファと手を繋ぎながら。


「ユアさんの方から手を繋いでくれるなんて嬉しいです!」


 ルーファは本当に嬉しそうな顔をしながらそう言う。

 私はそれを誤魔化すように話題をそらす。


「ね、ねぇ、冒険者って討伐の依頼しかないの?」

「いえ、荷物を運んだり、薬草を持っていったりと色々ありますよ」

「私はそういう依頼でお金を稼ぐことにするよ」


 ほぼ最弱の魔物と呼ばれているゴブリンに震え上がってたようじゃ、どう考えてもそっちの方がいいに決まってる。


「あとルーファってこの街に何か思い入れとかあるの? ずっとこの街に居たいとか」

「ここはユアさんと初めて出会った街です! ただ、ずっとこの街に居たいとかはありませんよ? ユアさんのいる場所が私の居たい場所ですから」

「じゃ、じゃあ、私はこの世界を回ってみたい(マップ埋めをしたい)んだけど……ついてきてくれる?」

「もちろんです!」


 そして街に入る時に昨日のおじさんがまた昨日と同じようなセリフを言ってきたけど、今度は手を離したりはしなかった。

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