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お風呂の順番決めがしたかった

「……おはよう」


 宿についたみたいなので、寝たフリをやめ、今起きたかのように振る舞いながらルーファとフィオにそう言う。


「……おはようございます」

「おはよ」


 そう言ってルーファは約束通り下ろしてくれた。

 疲れた。寝たフリがバレないように私なりに頑張ったりしていたので、ほんとに疲れた。でも、お風呂には入りたいしそれまでは頑張ろう。お風呂に入ったらすぐ寝よ。二人には私が凄く眠る子に見えるだろうけど、初めての野宿とかで疲れてるって言えばいいよね。


 私達は宿の部屋に入った。


「じゃあ、ジャンケンで順番決めよっか」

「順番ですか?」

「何の?」


 想定内想定内。落ち着くんだ私。あの街の宿ではルーファと一緒にお風呂に入ったけど、あの時は付き合ってなかったから。そもそもまだルーファのこと好きとかじゃなかったし。だから入れたんであって今は付き合ってる。だから一人で入りたいんだよ。ただ、バカ正直にそう言ってもフィオと入ることになりそうだし……どうしよ。


「お風呂に入る順番だよ」

「一緒に入るんですから決める必要はないと思いますが」

「一緒に入る」


 何を当たり前のことを? と言った感じに二人はそう言う。


「き、今日は疲れたから一人でゆっくり入りたいなって……」

「そうですよね。ユアさんも疲れてますよね」

「わ、分かってくれた?」

「はい」

「ん」

「今日は私達がユアさんの事を洗ってあげますね」

「任せて」


 んー……何も分かってないね。てかそれは流石にだめでしょ。恥ずかしいとかのレベル超えてるよ! 

 私は一度深呼吸をして落ち着きを取り戻す。


「その……さ? 疲れてるっていうのもあるけど、やっぱり恥ずかしいよね? だから一人で入りたいなって」

「でも一度一緒に入ったじゃないですか」

「ずるい。不公平」

「ち、違うから。あの時はルーファのこと何とも思ってなかったから……でも、今は……付き合ってるし」


 思わずそう言ってしまう。

 

「私はいい?」


 フィオがそう訪ねてくる。

 ああ言えばフィオがこう言ってくるって分かってたはずなのに。


「……一人で入りたいかな」

「私とユアは付き合ってない」

「そ、それはそうだけど……」

「付き合う前に入ってたんですから大丈夫ですよ。むしろ付き合ってる前に一緒に入って、付き合った今一緒に入れないんじゃ、私はユアさんと別れますよ」

「え?」


 急にルーファにそんなことを言われ頭の中が真っ白になる。これだけで私がルーファのことをどれだけ好きなのかが分かるが今はそんなことを言ってる場合では無い。


「ユアさん?」

「え?」


 私は震えた声でそう答える。


「ちゃんと最後まで聞いてください。別れて結婚しましょうって言ってるんです。そうしたら私もフィオさんも一緒に入れるじゃないですか」

「え?」

「だ、だからユアさん落ち着いてください。私がユアさんのこと大好きですから、ただ別れるなんて有り得ませんから!」

「うん」


 さっきから私同じことしか言ってない気がするけど、本当によかった。わたしが最後まで話を聞いてなかっただけか。……ん? よく良く考えれば、別れて結婚って言葉だいぶおかしくない? てか結婚!? 付き合ってまだ数日しか経ってないよ。結婚はまだ流石に……でも結婚しないためには私はルーファとフィオと一緒にお風呂に入らないといけないわけで……詰み? どうしよ。もちろん結婚が嫌な訳では無いけど、私的にはもっとゆっくりでも良いかなって思ってるし。


「……分かった。二人と一緒に入るから、その、ルーファとの結婚は……もっとゆっくりね」

「分かりました!」

「私とは?」

「……付き合う事になったら考えるよ」


 

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