なんかわかんないけど可愛い
一人部屋を借りる時に、案の定と言うべきか宿の人に不思議な顔をされたが、特に何も言われずに無事宿を借りることが出来た。正直恥ずかしかったよ。だって普通に考えたら仲良しというよりすごいケチな人みたいじゃん。私は銅貨一枚すら出してないんだけどね……ハハ。
「ユアさんは何がいいですか?」
「私はなんでもいいよ」
「ユアが決めるのが手っ取り早い」
フィオ曰くここの宿は料理も普通だということで、どこかに食べに行こうという話になっていたのだが……ルーファは焼き魚、フィオは肉といった感じで決まらないので何故か私に決定権が委ねられそうになっている。二つの意味で気まずいよ。言ってみればルーファがフィオかを選ばなきゃならないわけだし……いや、二人とも優しいからどっちを選んでも何も思ったりしないだろうけど、私が気にする。それに、もはや鉄板ネタ
みたいになってるけど、私お金無いんだよ。銅貨一枚も出さない私が決めるのはだいぶ気まずい。それにほんとになんでもいいんだよね。かなりのゲテモノでさえなければなんでもいい。
そして私がこんなことを考えている間にも話し合いはされているが一向に終わる気配がない。こんな終わる気配がない話し合いも私が一言いえば終わらせることができる。権力を持つ気分ってこんな感じなのかな? 絶対違うね。
「ジャンケンで決めない?」
このまま放置してたら今度こそ私がどっちかを選ぶことになりそうなので私はそう言った。当然異世界なのでルールなど二人とも知らないので簡単に説明した。
「分かりました。このままじゃ終わらなさそうですし、そのジャンケンと言うもので決めましょう」
「分かった」
「ジャンケンポン」
結果は、ルーファははチョキを出しフィオがグーを出したのでフィオの勝ちだ。
「じゃあお肉を食べるってことでいい?」
「ん」
「負けてしまったので仕方ありません」
「そんなに焼き魚食べたかったの?」
「はい。昨日夢で焼き魚を食べる夢を見たんです。それで無性に焼き魚が食べたくなりまして……」
ルーファは恥ずかしそうにしながらそう答える。
……なんか、なんかわかんないけど焼き魚の夢を見るルーファ……すごい可愛い。ほんとになんでかわかんないけど可愛い。
私は感情が抑えられなくなり、ルーファを抱きしめ頭を撫でる。ルーファはなんで頭を撫でられているのか分からない様子だが心地よさそうにしているので私は気にせずに撫で続ける。
「勝ったのに……負けた」
フィオの呟きが聞こえ、私はルーファを撫でるのをやめる。
「えっと……お店の場所分からないからフィオに案内して貰わないとなぁ……」
「……頭撫でる。そしたら行く」
私に体を預けながらそう言ってくるフィオ。断る理由がないので素直に頭を撫でると気持ち良さそうにするのでずっと撫でたくなるのを我慢して、しばらくたったので夕飯を食べに行く。
「ここ?」
「そう」
「なんだか凄い名前ですね」
私たちは、美味しい死体食べてってという店の前に来ていた。
まぁ、間違ってはない……と思うけど、食欲はそそられない。
それでもこの街の中じゃ一番賑わってるいるので美味しいことは間違いないと思う。