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第一章

     7.


 金髪の女の人は、あちこちに飛び出した大きなのこぎりや刃物の位置を確認するみたいに部屋の中を見回した。

「あらまあ、これは一体どういうことなの?」


 気のせいかもしれないけど……なんか、棒読み。感情がこもってないというか。それでも一応、


「すいません!」

 と、頭を下げた。

「俺、原田 大悟です。近所に住んでます。庭のラズベリーを勝手に食べてしまいました」

 本当はジェイドに会いたくて入ってきたんだが……やっぱり謝るのが先だろうと思った。

「お気になさらないで。さあ、頭を上げてくださいな」

 緊張で身構える俺に優しく声をかけてくれた。しかしやっぱり棒読みなのはどういうことか。

「はじめまして、大悟さん。わたしはこの家の主人、アマンダよ。アマンダ、って呼んでください」

「は、はじめまして」

 ぎくっとした。アマンダって……。この人に見つかってはいけないのではなかったのか。


 恐る恐る顔を上げると、いきなり手をつかまれた。

 背筋にぞわっとしたものが駆け上がり、

「ひいいいいいっ!」

 つい、悲鳴を上げてしまった。


 きもっ!

 なんか、ぬるっとする。べたっというか。


 それに気づいたら気が動転した。引っ込めようと思うのに、手が吸い付いてしまったみたいに離れない。

 アマンダは両手で包み込むようにして全体をさすり、次に指を一本ずつ、ねっとりと自分の指を絡めるように触っていった。ヘビにまとわりつかれてるような感じがして、彼女の手が動くたび、鳥肌が立った。なのに、体の奥でぞくっと何かが震える気もした。さんざん触りまくった。でも……不思議な気分だった。気持ち悪いのに、もう少しそうされていたいような……。

「あら、ごめんなさい」

 アマンダは俺の視線に気づくと、すぐに手をはなした。

「あたくし、ずっと男の子が欲しいと思っていたのに、できませんでしたの。ですから、つい、うれしくて失礼なことをしてしまいました」

 ということは、この二人はこの人の娘?

 今度はキアスティンが進み出た。

「はじめまして。キアスティンよ」


 アマンダが若くして生んだ娘なのかな……?


 などと思いながらキアスティンを見る。優しく微笑まれて、ドキッと心臓が高鳴った。


 や、やばい。俺の心はジェイドにロックオン! のはずなのに。


 おそるおそるジェイドを見たら、怒ったみたいに小さく頬をふくらませていた。それを見たら、きゅうん、と、胸がしめつけられた。


 やっぱ俺はジェイドです、すみません……。


「よろしくね」

 手をにぎられて、

「ひいっ!」


 つつつっ、冷てえっ。手、めっちゃ冷たいんですけど!


 視線を感じた。アマンダが口元に笑みを浮かべて俺を見ていた。なのに。


 あれ?


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