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カルロッテの妄想垂れ流し、まだ続きます。


「有難うございます。失礼致します。」

カルロッテは、カーテシーを解き、ソファに座る。


そして初めてイルヴァの姿を正面から見た。


――――ハッと見惚れてしまう様な美しい少女だった。

艶のある漆黒の髪を可憐に結い上げ、若々しいミモザ色のドレスを身に纏う姿は、初々しい少女の様で。

こぼれんばかりの大きな蜂蜜色の瞳に、長い睫毛…可憐な顔立ちの美少女だ。

しかし、大きな胸に括れた細い腰、すらりと伸びた細い手足…身体付きは妖艶な女そのものだった。


カルロッテの胸に焦燥感が生まれる。


(私はこの女を差し置いて、アンドレ様の愛を勝ち取れているのよね…?)


――――本当に?

焦燥感を無理矢理押し込め、イルヴァに挑む様に話す。


「この度は…アンドレ様の事について…と言いますか。

これからの事について、イルヴァ様にお話しに参りましたの。

もう私とアンドレ様との噂をご存知かとは思うのですが……ご存知ですよね?」


念押しをする様に問うカルロッテ。


イルヴァは薄く微笑んだ。


「ええ、お噂は社交に疎い私も聞き及んでおります。」


「なら話が早いですわ。噂は真実なのです。私とアンドレ様は愛し合っております。」

「まぁ…!それは本当の話ですの?」

イルヴァは口に手を当て、少し芝居がかった仕草で驚いた振りをする。


「ええ…まだ新婚で一年も経たないのに、本当はこんな事をするべきではないと、

私達は何度も離れようとしたのです……

しかし、離れようとする度に心が引き裂かれる様にお互いに辛くて…

奥様に大変な迷惑を掛けてしまうと思いながらも離れられなかったのです。」


イルヴァの瞳が一瞬揺れる。

ウソだと分かってはいるが、まだあの時に感じた傷の痛みは生々しい。


「そうなのですね…。

アンドレ様からは、カルロッテ様の事は『過去婚約寸前まで行ったがしなかった方』だと聞いてまして、

この度の噂の件も、噂好きな人達が、たまたま二人で居た所を面白おかしく脚色したに過ぎないと…」


「ウソよ!アンドレ様がそう仰ったのですか!?」


カルロッテが大声でイルヴァに怒鳴る。


「私はアンドレ様から直接聞きましたが。噂は噂で真実など1つもありはしないと。」


カルロッテの目がこれでもかと大きく見開かれ、唖然とした顔になった。


「いいえいいえ。私とアンドレ様は愛し合っております。きっと公爵様に何か言われたに違いないわ。」


捲したてる様にカルロッテは話し続ける。


「それに、私はアンドレ様と身体の関係もありますわ。

そういう場所に二人で出入りしていたのを見た方は多いのではないのですか?

アンドレ様が公爵様に言われて何を言おうとも、私が話す事が真実ですわ。」


アンドレとは身体の関係は無いが、それはアンドレが奥手だからだ。

奥手なアンドレは中々勇気が出ないのだろう。

遅かれ早かれの話で、いずれそういう関係になるのは間違いない。

そうでなければ、新婚早々に私と如何わしい場所で何度も逢瀬を重ねる訳がないではないか。


カルロッテの言葉に一瞬動揺したが、すぐに持ち直したイルヴァ。



「身体の関係ですか……。

それは、本当の話なのですか?もしウソを仰っているのならば、詐欺罪になりますし…

内容が内容ですから、侮辱罪も適用されますよ?

アンドレ様とカルロッテ様には、本当に身体の関係があると、真実だと仰るのですね?」


イルヴァが念を押すようにカルロッテに問う。


「……ええ。

もう私のお腹には…もしかしたら子が宿っている可能性だってあります。

そういう行為をすれば…どうなるかは、わからないですから。

私、もう子を生した事がありますの。

以前も直ぐに妊娠してしまいました。妊娠し易い身体なのかもしれませんわ。

子は授かりものといいますから絶対とは言いませんけれど…。」


カルロッテが未だイルヴァが妊娠していない事を分かった上で言う。


「…では、今日こちらへお出でになられたのは、妊娠したからですか?」


イルヴァは冷静に切り替えした。


「ご挨拶をと思いまして。近々、私はアンドレ様の愛人となる身ですし…

正妻であるイルヴァ様には真実をお話しして仲良くなりたいと思いましたの。

私達、これから長い付き合いになりますでしょう?」


カルロッテの虚言だと分かってはいる、が…

虚言とは言え愛するアンドレとの話をさも真実のように語られ、

思ったよりも激しい苛立ちをイルヴァは感じた。


「そうですか。では、カルロッテ様はアンドレ様と身体の関係があり、噂は真実であり、

もしかしたら子を既に授かっている可能性もあったので、愛人になる予定で私に挨拶に来たという事で…

宜しいかしら?」


カルロッテの話をひとつひとつ上げて、念押しをしていく。

全てカルロッテのウソであるが、発言したという確認を兼ねた証拠を取る。


「ええ、その通りですわ。

アンドレ様は今この屋敷にいらっしゃいますの?

最近お互いに忙しくて逢えて居ませんの。

少しだけでもお顔を拝見したいわ。

カルロッテが来たとだけ伝えてくれたら、すぐ来てくださると思うのだけど…。」


恋する乙女の様に頬を染めアンドレの事を話すカルロッテ。


イルヴァの胸はギリギリと痛み、目の前の女の顔を爪でズタズタに引き裂いてやりたくなる。

――――私の中にこんな激情があるなんて。


「アンドレ様は――――――――」


乱れる気持ちを抑え込み、後どれだけこの女の相手をすればいいのかと思った時…



「私は居るよ――――――――」


突然、閉ざされた扉が開きアンドレの声がした。

有難うございました。

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