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お待たせしました。
後半はカルロッテSideです。
かつての寂しい日々がウソのように、イルヴァの毎日はアンドレでいっぱいだった。
朝は共に目覚め、一緒に仲良く朝食。
昼食までアンドレは執務に掛り切りになるので、イルヴァは執事から渡された夜会やお茶会の招待状に目を通し、参加の有無の返事を書く。
屋敷を回す為の雑務は家令を筆頭に執事や侍女長が全て片付けてしまうので、
イルヴァが入ると逆に効率が悪くなりそうで、静かに従っている。
後は、領地内にある孤児院や教会などの話を聞かれ、いつ訪問するか等のスケジュールを決める。
2時間もあれば全て片付き、昼食までまだ時間があるので、庭でも散歩することにした。
庭に咲き乱れる、ポーチュラカとマリーゴールドに癒やされていると、
「イルヴァ、ここに居たんだね。」
と、アンドレ様に後ろから呼び掛けられた。
「はい。庭に出ると気分転換になりますので。公爵家の使用人が皆さん優秀過ぎて、
私がする仕事なんて少ししかなくて、あっという間に終わっちゃいました。」
アンドレが近付き、イルヴァを後ろから包むように抱き締める。
イルヴァはそっとアンドレに寄りかかった。
二人して花を見ながら穏やかな時間が流れた。
暫くして、アンドレはイルヴァの頭にキスを落とすと、抱擁を解く。
そのまま手を繋いで、屋敷に戻っていく。
言葉は交わさないのに、ずっと会話をして心を通わせた様な、満たされた気持ちだった。
カルロッテ -Side
「忌々しい!どうなってるのよ!」
王宮のメイドに与えられている使用人棟の一室で、カルロッテは大声で怒鳴っていた。
アンドレはあれから王宮にも来ておらず、第二王子とも会えなくなってしまった。
メイド仲間達から「最近貴方が粉かけてた元婚約候補の方、奥様と仲睦まじいらしいわよ。新しい就職先失くなりそうね?」
「気落ちしちゃダメよ。よくあることなんだから。」
「男の関心を引き続けるには身体だけじゃダメってことよ。」
アドバイスと称した当てこすりに、わなわなと激高していた。
アンドレとの待ち合わせ場所にあれから二度足を運んだが、一度も会えず。
第二王子も以前は自分から意図せずとも向こうから来てくれていた。
アンドレには手紙も出していた。
「愛しのアンドレ様
使用人からの伝言をあの日受け取りました。
あの心無い言葉は、貴方の本意では無かったと分かっています。
とてもとても傷ついたけれど…
私以上にアンドレ様は悩み苦しんでいますものね。
愛を貫く為には弱音は吐いていられないと、未来の二人の為に気をしっかりと持たねばと、
気持ちを奮い立たせています。
愛する貴方に逢えないことは辛いけれど、今はその時期では無いことも分かっています。
愛のない奥様との子を成す行為は苦痛を伴うかもしれませんね。
義務でしかない行為を貴方に勧める私をお赦し下さい。
早く貴方の元へ私をお呼びして欲しいのです。
いつまでも貴方をお待ちしています。
貴方のカルロッテより。」
似たような内容で3通出したが、一度も返事はない。
勿論、アンドレにもイルヴァの目にも触れる事はない。
届く手紙は全て公爵に報告が行き、その場で内容を確認された後、
証拠品としての価値は無しと判断され次第破棄されている。
そんな事も知らず、カルロッテは焦燥感を持ちイライラしていた。
第二王子とは何度もベッドを共にしたが、あの方は隣国へ行く身。
本命はアンドレ様だ。
しかし本命とは何度かお茶を共にはしたが、ほぼ会話もない上に手を握っても貰えない。
前に一度、アンドレが少し席を立った際に、媚薬を入れて既成事実を作ろうとしたが、
その時に限って、飲み物に一度もアンドレ様は口を付けなかった。
カルロッテが飲み物を勧めても「ああ。」と言うだけで飲まないのだ。
何かを察してるかの様に思え、それ以後は媚薬などは入れていない。
アンドレ様が私の事を思っているという思いだけでは、心配なのだ。
一度、屋敷に出向いて、奥様に逢うべきかしら…。
「私とアンドレ様の邪魔をせずとも子を生し産むまでは、愛人になるつもりはない。」と、
しっかりと説明しておいた方がいいかもしれない。
そうすれば、ベッドは共に出来ずとも、一緒の時間くらいは恩赦してくれるのではないか。
所詮は愛の無い結婚を結んだ女、自分も愛人をやがて作るのだ。
子を産むまでは煩いだろうが、産んだ後の話には寛容だろう。
そう考えを纏めると、先程までの苛立ちが落ち着いた。
カルロッテは、公爵家本邸に行く日取りを考え始めた。
誤字報告有難うございます。
いつも助かっております。
隙間時間にお越し頂きまして有難うございます。
貴重な時間を使って本作を読んでくださり、感謝しています。
稚拙な作品ではございますが、またご覧頂けますと嬉しいですm(_ _)m




