28 カルロッテ・ベンヤミンの誤解。
カルロッテは書けば書くほど、病気な人になる……
善人ぶった仮面を付けた勘違い女に仕上がってしまいます。
ただのクズ女にしたかったんですけどねー、どうしても病的に……何故。
――――おかしいわ。何故なの。
カルロッテは、親指の爪をギリギリと噛みながら苛立った。
今日もアンドレに逢うつもりで、いつもの待ち合わせ場所で待っていたのだ。
なのに、来る気配がない。
ここで待ち合わせて、例の休憩所に二人で仲睦まじく向かっていた。
アンドレは堅物で奥手で照れ屋である為、待ち合わせ場所でカルロッテと逢う時も、
休憩所に移動する時もした後も、ほぼ無口だ。
カルロッテが話しかけても、
「ああ。」「そうか。」「わかった。」「また今度。」
と、端的な会話だ。
――――意志の疎通など出来やしないわ。
つまらない男だと過去の私なら思っただろう。
昔はもっと私を見て微笑んでくれたし、高位貴族とは思えぬ気さくな方だった。
公爵夫人が亡くなって変わられてしまったのではないだろうか。
あれだけ仲の良かった親子だもの。
アンドレ様の傍で悲しみを癒やす筈の私も侯爵家に嫁いでしまったものね…
あんな男と寝たのは本当に間違いだったわ。
今度は間違えない。
愛人としての地位しか与えては貰えないけれど、精一杯癒やして差し上げなければ。
正妻の座に居座ってる女は、子だけ産んでくれれば問題ないわ。
そうすれば、正妻の女も愛人を作って別邸に住まわせるだろうし。
私は本邸でアンドレ様と愛を育むわ。
元々あるべき生活に戻るだけよ。
ああでも、第二王子との関係はまだ続けないといけないわ。
身体の相性も悪くないし、何より私に夢中だから、関係を精算するなんて言ったら、
アンドレ様に何をするか分かったもんじゃないし。
第二王子が隣国の王女に婿入りするまでは、第二王子を楽しませなくっちゃね。
アンドレ様には嫉妬させたくて、高貴な方に迫られて困ってるって言っちゃったけど、
まさか第二王子だと気付いていないだろうから、バレる心配はしてない。
暫くはアンドレ様の愛人になるのもお預けさせなきゃ。
正妻は子を孕んでないし、第二王子の婚約はまだ整ってない。
まだ時間が掛かるわね。
もう少し待っていて。
私も寂しいのを我慢して第二王子に抱かれるのよ。
楽しんでないとは言わないし言えないけど、アンドレ様の身を守る為でもあるんだから。
今は私の代わりに正妻を抱いて、一刻も早く子を授けてあげてね。
私との未来のために。
――――そんな風にアンドレ様を思ってる私にこんな仕打ちをするなんて。
いつもの待ち合わせ時間から1時間後、
公爵家の家令がアンドレ様の代わりにやって来た。
候補の時に良く見た男だ。
その男は素っ気ない態度で私に言った。
「もうアンドレ様は二度と貴方にお会いにならないそうです。
アンドレ様に付き纏うのは止める様に。
次に付き纏えば然るべき処罰を与えるとのことでした。
貴方も自分が可愛いければ、弁えることですね。」
その男は吐き捨てる様に話し終えると、
ゴミを見る様な目で私を見て去っていったわ。
何てことなのお可哀そうなアンドレ様…
きっと、正妻の女と公爵が動いたのね。
公爵様も正妻に泣きつかれて仕方なく動いたに違いないわ。
一応は公爵家の醜聞になるかもしれないから。
だって「子供が生まれる前に愛人を作られる魅力の無い女。」と言われかねないものね。
実際そうなんだけど。
魅力がないからアンドレ様は私に執着してるのよ。
毎日会わずにいられない程に。
アンドレ様に会って安心させて差し上げたい。
でも、きっと正妻がまた邪魔してくるわ。
一度、正妻ときっちり話さなければいけないわ…
正妻が子供を産むまでは愛人になるつもりはないのだから。
アンドレ様にも話しておかなければ、
「私は貴方の物だけど、正妻が子供を孕み産むまでは、
逢う頻度を少なくしましょう。
私はそれまで我慢します。
生まれた後はずっと一緒ですわ」
と優しく諭す様に話すつもり。
きっと安心して下さるわ。
最近、第二王子の相手もままならなかったし、
そろそろご機嫌斜めになる頃だから、
アンドレ様と会えなくなる時間は丁度良かったのかもしれない。
家令の態度には心底ムカついたけど。
私が本邸に住む様になったらクビか再教育ね。
誤字報告有難うございますm(_ _)m
誤字の指摘だけでなく、分かりやすい文章指南もして頂いて助かっております。
小説を書き始めて明後日で一ヶ月なのですが…
書けば書くほど迷宮入りするといいますか…
皆様のブックマークや評価に励まされて頑張れています。
感謝しています。
もっと皆様に分かりやすい文章をお届け出来る様に研鑽したいと思います。




