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早朝に王城へ出向き、皇太子からイルヴァへ話す許可があっさり下りて「こんな事ならもっと早く…」な肩透かしをくらったアンドレは、急いで屋敷へ戻った。


屋敷へ戻ったアンドレは、冷静になれと言い聞かせながらイルヴァの部屋まで真っ直ぐ向かった。

部屋へ行く途中に家令が苦虫を噛み潰したような顔で、立っていた。


「イルヴァ様は外出された様です。」

「何処へ、行くのか、聞いたのか?」


すぐにイルヴァに真実を話し、関係の修復を図りたいアンドレ。

思わず問い詰める様な口調になるのは仕方がないだろう。


「おや?余裕がない男は嫌われますよ、坊ちゃま。」

家令がすぐ見咎め、皮肉を言う。


「……今は、許せ。王城から戻る間、生きた心地がしなかった。」


「昨夜、何かあったのですか?あれから。」


アンドレの憔悴しきり項垂れた姿に、おや?と思う。


「離縁を突きつけられたのだ。噂も知っていた。その方と再婚なさるのでしょうと……」

「それはそれは……」


アンドレがそこが痛むかの様に服の上から胸をさする。


「それで、アンドレ様は何と?まさか噂の否定もされなかったのですか?」

「したとも!私の愛する相手はイルヴァ以外に居ない!離縁もしない!浮気だってする気もなければ、してもいないのだから!」


激高した様に身振り手振りが大きくなり、家令に詰め寄る。

アンドレが激高すればする程、家令の瞳は冷たく光った。


「アンドレ様、落ち着いて下さい。離縁申請書は書いておりませんよね?なら、またイルヴァ様はお戻りになる筈です。その時に誠心誠意の真心を持ってお話しすればいいのです。ああ、何の役にも立たない妙なプライドを持ち出したり、今更感しかない言い訳めいた事は一切仰ってはなりません。例の件があったとはいえ、イルヴァ様に何もしなかった情けない事実はあるんですから。ああ、床に崩折れるのは止めて下さい。通行の邪魔ですから。」


淡々と話す家令の言葉がグサグサと胸に突き刺さる。

家令は物凄く怒る時は怒鳴ったりはしない、逆にどんどん冷静になり表情が失くなる。

そしてアンドレの心の弱い部分を容赦なく抉ってくる人だった。

己の子供の頃からこうであった……。


「本当にお前は容赦がないな……」


アンドレは更に疲れた顔で吐き出した。


「まだ足りないくらいですが?」

「勘弁してくれ。充分過ぎる程に分かったから…」

「イルヴァ様がお戻りになったら、アンドレ様の部屋に行くようお伝えします。部屋にお戻りになるのでしょうから、何かお持ちしましょうか?」


「ああ、浴びる様に飲みたい気分だよ……酒にしてくれ。」

「一杯だけお持ちします。思考を鈍らせてヘマをしたいなら別ですが。どうされますか?」

「一杯でいい………」


家令は優雅に一礼すると颯爽とその場を去って行く。

残されたアンドレは苦笑するしかない。


「イルヴァ、早く会いたい…」


屋敷に帰宅した時よりも重くなった足取りを私室へと向けた。






その頃イルヴァは――――――――


もう戻らない覚悟を持って向かった二人に、馬車の中で説明する。

プリメラとはしっかり話していたけれど、もう一人の私付きのメイドには話してなかったのだ。

マリーは私と同じ年で少々……気が強い。

噂を耳にしていたとしたら、こんなに穏やかな顔で馬車に乗っていないだろう。

アンドレ様に一言物申す!くらいの事はやりかねなかった。

それが簡単に想像出来たプリメラは、マリーには今日の王宮行きは詳しく説明していない。


先程、室長と話した時も、側付きとして同行したのはプリメラで、マリーは王宮に同行した使用人が待機する部屋で待っていたのだ。


予想はしていたがマリーは激高した。

大声こそ出さないが、ギリギリと歯ぎしりをしながら爛々と輝く目で「イルヴァ様、アンドレ様は躾が足りない様ですね?アンドレ様の躾はイルヴァ様のお仕事ですよ。躾方法は屋敷で詳しく説明しますので、今夜にでも……」と、同い年とは思えないドスの利いた声で提案してきた。

「まずは話し合いよ。どんな話し合いになるかは分からないけれど…マリー、貴方の躾は少々私には難易度が高すぎるから……それは相手との絆がしっかり結ばれてる相手がするやり方なのよ。」

マリーの顔には納得しかねますが?と書いてある。

プリメラが溜息をついた。


そんなやり取りの中、馬車は公爵邸へ到着した。


玄関前が騒がしい。


旦那様やアンドレ様ならいざ知らず、私に関しては大仰な出迎えはいいと話してある。

侯爵家でもそうだったし、ずらりと並ばれて「おかえりなさいませ。」と言われるのは、婚姻式後初めて足を踏み入れた時だけで充分だった。


何かあったのかしら――――


玄関前では数人の使用人が居た。

普段から忙しい家令は旦那様とアンドレ様の出迎えの時しか出て来ないので、今玄関に居るのは珍しい。


数人の使用人と家令は、玄関に踏み入れた直後のピリピリした空気が消え、皆一様にホッとしていた。


「何があったのですか……?」


そこで、アンドレ様が屋敷に戻られて私が居ない事を知った際の取り乱し様を、茶目っ気たっぷりに家令が語った。


それは、今からアンドレ様との話し合いに臨む私を多いに勇気づけた。



遅くなりました。

次こそはアンドレとの再会です(∩´∀`)∩ワーイ

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