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 イルヴァは侍女二人と王宮から寄越された家紋の無い馬車で王城へ向かっている。

 転生者の可能性があるとして、身分の高さから秘密裏に行うつもりのようだ。

 真偽はともかくとして。


 流れる景色を見るでもなく物思いに耽っていた。


 昨晩のアンドレ様の取り乱した姿…あの時は「浮気がバレて慌てているのだろう」と決めつけ、必死に言い募る姿に自業自得だと仄暗い思いを抱いた。


 でも…愛してもいない女、それも妊娠の有無を心配する必要の無い白い結婚の女に、あそこまで泣きそうな程顔を歪めて言い募り縋り付くだろうか?


 アンドレ様の部屋で話すまでは、私が提案する離縁は歓迎されると思っていた。

 候補だった女と再婚を喜び、すぐにでもあの女を屋敷に呼ぶくらいはするんじゃないかとさえ。

 だけど、全く違った。

「どこからが浮気になるんだ?」だなんて。

 馬鹿な質問をされた気がして頭に血が昇りキャンキャンと吠えてしまった自覚はある。


 可能性は薄いが、私と同じ“夫婦だけが夜伽をする”にあれだけ共感したアンドレ様だから、最悪愛人を持つ事を許してくれの提案か懇願はされるのでは?とも思った。

 ムカムカする話ではあるが、その時はアンドレ様とは白い結婚になるだろう。


 アンドレ様とお互いを知るには、まだ時間が足りなかった。

 公爵家が所持する領地や領民の事。

 皇太子付きのアンドレ様はたまに外交に一緒に行かれる時の話など会話はしたが…


 ――――アンドレ様の事、私の事、二人の事は話さなかった。


 好きな物も嫌いな物も、普通の恋人同士ですら話してそうな内容は何も知らない。

 自分の事を話すのは私は恥ずかしかった。

 アンドレ様が「私はこれが好きだけど君は?」があれば話すのに。

 もしかしたら、アンドレ様も?

 私達はお互いの事、全てこれからだったものね…。


 もう一度、アンドレ様としっかりと会話した方がいいのかもしれない。


 …でも、今から私王家に囲われに行くのよね…?

 逃げようにも王宮が用意した馬車だ。

 そして、馬車の中には侍女の他にも護衛の騎士が一人同乗している。

 ――――詰んだわ。


 陽の光が頭上から降り注ぐこの時、アンドレ様が昨夜話した様に冷静になった。


 前世の格言を思い出す。


 昨日までの自分は“思い立ったが吉日”と思って動いた。

 正直イルヴァは、昨日までの自分を正気に返らせ「石橋を叩いて渡れ」と言い聞かせたい。


 “覆水盆に返らず”となる前に、アンドレ様と話したい。

 私が転生者である事も含めて全部話したい。

 アンドレ様の浮気の話も、この寂しかった数ヶ月のアンドレ様の事も全部話して貰いたい。

 全てが分かってそれでもダメなら離縁して、王家に囲われてもいい。

 でも、分かりあえて違ったら、アンドレ様の傍に居たい。


 何を差し出せば室長をうまく丸め込めるかと悩むイルヴァを乗せた馬車が止まる。


 ――――とうとう王城に到着したのだ。

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