1章11話 ロンド商会
アランとルーチェは奥の部屋に案内された。
アランと男性は向かいあって座っており、ルーチェはアランの後ろに立っていた。
アランとしては隣に座っても構わないと思ってはいたが、流石に人前だったのとルーチェの立場も考え口に出しはしなかった。
「アラン様、ようこそいらっしゃいました。私はこの商会の会長をしてます、ロンドといいます」
「ロンドさんですね、このように歓迎して頂きありがとうございます」
アランは店前で一度ロンドと話をしているが、その時とは違い丁寧な言葉使いでお礼を述べた。
これはアランが貴族の一員として感謝と誠意を感じていると意味である。
「いえいえ、私達もアラン様を歓迎できて光栄に思っております」
ロンドが言い終えたタイミングでドアのノックする音が聞こえた。
ロンドが返事をすると店の店員が中に入ってきて、机にお茶を二つ置き、アランに一礼してから部屋を出た。
アランは先に机に置いてあるお茶を一つ選びルーチェに渡す。
それを確認した後、ロンドは残ったお茶を取り先に飲む。
その後ルーチェも一口飲み、アランの前にお茶を戻した。
これらの一連の流れはお茶に毒が入ってないかを確認するためであった。
「今、プレゼントに合いそうなものを持って来させています」
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ、それが仕事ですから。それよりも、どうかいつも通りに口調で話していただけないでしょうか? 貴族の方に丁寧にされると緊張してしまいます」
「そうですか……いや、そうか、ならいつも通りに話すね」
「ありがとうございます」
アランは肩の力を抜くかのように深い呼吸をした。
「それにしてもアラン様はとても聡明な方なのですね」
「俺なんでまだまだですよ」
「そんなことないと思います。私と店の前で話した時や道中のメイドとの話を聞きましたが、とてもよく考えられており、その年でしっかりと自分の意思をもって行動されていると感じました。正直私とあまり年齢が変わらないのではないかと錯覚しそうでしたよ」
その言葉にアランは悪寒を感じたが表情にでないよう抑えた。
(前世の年齢と合わせと三十代後半だから間違いではないんだよな)
しかしそんなことは流石に言えないずに微笑んで誤魔化した。
その後アランとロンドは店員が商品をもって来るまで当たり障りのない会話をした。
十分ほど経った頃、ドアをノックする音が聞こえ数人の店員が部屋に入ってきた。
次々と机の上に置かれていく商品はどれも魅力的で興味を湧いてきた。
最後の店員が机に商品を置くと一礼し、部屋を出て行った。
扉の閉まる音が聞こえるのを確認し、ロンドは商品の説明を始めた。
紹介されるアクセサリーはどれもよく、またロンドの説明はアクセサリーについて全くわからないアランでもわかりやすく紹介している為選ぶのに時間がかかった。
悩んだ末、ライシャとアイシャにプレゼントするアクセサリーは決まった。
ライシャには風属性の適性がある為、緑色の宝石が付いているシンプルなネックレス。
アイシャには火属性の適性がある為、赤色の宝石が付いたイヤリングをそれぞれ選んだ。
残るルーチェの分だが、合いそうなアクセサリーが沢山あり選びきれずにいた。
悩みに悩んだ結果、アランはルーチェ自身に選んでもらうことにした。
完全に丸投げである。
「ルーチェはどれがいい?」
「アラン様が選んだ物ならどれでもうれしくですよ」
しかし、ルーチェに丸投げすることはできず結局アランは自分で決めるしかなかった。
以前に一度ルーチェの私物を見る機会があり、全体的に青かったのを思い出したアランは、青色の指輪を選んだ。
指輪なら普段から付けることもできるし、鎖でつないで首から付けることもできる。
それにメイド服を着ていても自然で問題にならない。
ロンドにお金を払い、ライシャとアイシャの分は包装してもらうため一度店員を呼び渡した。
ルーチェのはそのまますぐ選んだ指輪を渡す。
「アラン様、ありがとうございます。この指輪は大事にします」
「どういたしました」
ルーチェは満面の笑みを浮かべ、アランに許可をもらい早速指に付けた。
その様子を微笑ましそうに見ながら、ロンドはアランに話しかける。
「それにしても指輪とは、またしっかりと考えて選びましたね」
「やっぱりロンドさんにはわかりますか」
「予想ですがね」
そう言いつつ表情は確信に満ち溢れていた。
それを見たアランは苦笑するしかなかった。
「なんでもお見通しですかね。よく性格が悪いと言われない?」
「自覚はありますよ。でも直そうとは思ったことはないですね」
ロンドはお茶を飲みながらそう答えた。
「それはやはり商人として大切だと思うかな?」
「よくお分かりで。そうです、商人同士ともなれば裏の探り合いです。そうなるとやはり相手のことを理解できるとそれだけ有利になりますからね。おかげでここまで商会を大きくすることができましたし」
ロンドは懐かしむかのように話した。
「でもアラン様も似たようなものでは?」
「なんのことだかわからないね」
「…………」
「…………」
アランとロンドはお互い目をそらすことなく見つめた。
だがずぐロンドは視線を外し両手を挙げた。
「そうゆうことにしておきましょう」
その後店員から包装されたアクセサリーを受け取ったアランはロンドにお礼を言った。
「今日はありがとう。おかげでいい買い物ができたよ」
「喜んでもらえてなによりです」
それから寄り道することなく屋敷に戻り、夕食の時にライシャとアイシャにプレゼントを渡し、とても感謝されるのであった。
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