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秘剣飛鳥返し  作者: メイロング
1/7

勃発

 七原(しちはら)が殺された。


 道場主亡きあと守ってきた三人のうちの一人である。腕前だけなら陣馬(じんば)をもしのぐ。


 道場で最も強い者が辻斬りで殺されたとあっては、とても大見得を切って葬式を出すわけにもいかない。


「どうしたものかね」


 三人のうちでもっとも大人びた帆風(ほかぜ)は腕組みをして人ごとのような顔を近づける。


「下手人を捜して斬る」


「どこの誰かもわからないのに?」


「だからって、このままでいいわけないだろう」


「道場の評判もあるからね」


 早々に答えが出る話ではない。


 まずは帆風の報告を受けたというところでとどめて、陣馬は朝稽古へ向かった。

 

 

 道場ではすでに紀雷(きらい)が気勢を上げていた。


 早くに来ていた門人たちを相手に、すでに汗みずくになって竹刀を振っていた。

 

 本来なら道場主の跡目を継ぐ娘であるが、実力が伴わない。その間をつなぐために、実力者の三人が合議で運営していた。


「やる気は十分。稽古も人一倍。だけど試合でだけ負ける」と帆風は分析した。


「むいてないんじゃねえか」と七原は評した。


 陣馬はといえば、毎日稽古して強くなるなら話は簡単で、そうでないから皆が苦労している。そしてある日に急に強くなることがあることも知っていた。


 まあ、だからそのうち勝てるようになるだろうと静観していた。


 だが、今はそういった話をしている時ではない。

 

 まず下手人を捜さねばならない。七原を(たお)せる腕前なら、御用聞きが知らぬはずはない。


 道場運営者たる師範代が三人から二人になったが、実質的に取り仕切っているのは帆風である。


 これもさほど問題ない。


 やはり一番の問題は、この一件をどこに落ち着けるかである。


 最善手は仇討ちだ。これなら体裁も悪くない。


 だが七原を討った実力者である。返り討ちに遭い、師範代の二人が倒れたら道場は潰れる。


 次善の手は、普通に七原の葬式を出して、何事もなかったように振る舞ってしまう。


 だが世間の口に戸は立てられない。評判は尾ひれを付けて世を渡る。


 師範代が辻斬りされたのに、指をくわえてみていたのでは、腰抜けの集まりである。

 

 これも遠からず道場の危機となる。


 どちらにしろ、選択を誤れば未来はない。


 自分一人の未来ならどうともなろうが、紀雷、帆風、その他の門人も含めた未来がかかっている。


 頭を抱えていたい気持ちを抑え、陣馬は竹刀をかついだ。

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