七不思議 ふたつめ
クラスがざわざわとしている。そのざわめきを、彼女は不思議に思った。
朱璃は、いつも通り予鈴ギリギリに門をくぐり、授業が始まる五分前に教室にたどり着いた。
「あ、朱璃ちゃんおはよう」
隣の席の女子が、グループのざわめきから帰ってきて声をかける。
「おはよう。ねぇ、これどうしたの」
問いの答えが来る前に、いつものメンバーが口々に挨拶をする。朱璃も挨拶を返し、同じ疑問を投げかける。
「なんかさ、また七不思議の事件が起こったんだって」
答えてくれたのは隣の席の子、ではなく別の女子だった。どうやら彼女が詳しいらしい。
詳しく、と声を出す前に数学の教師が入ってくる。彼はこのクラスの担任である。彼が準備を始めるとともに、始業のチャイムが鳴る。クラスのざわめきが、また別のものへと変わり、チャイムが鳴り終わるとともにクラスは先ほどよりも落ち着いた。
「佐々木君がさ、図書館行ったときに出たんだって」
昼休みは、クラスのあちこちから今朝の話題が上がっている。当の本人、佐々木という男子生徒はここにはいない。食堂へ行ったのか、はたまた別のクラスに行ったのか。
「図書館って、あれでしょ?声が聞こえるやつ」
朱璃の声に、村町こよみは大きく頷いた。今朝、朱璃の疑問に答えた子である。二人の周りには数人の女子が集まり、弁当を広げている。
「七不思議なんてあるんだねぇ」
「それ思った。薄っすら聞いたことはあるけど、実在するとはね」
「聞いたことあるの?わたし無いなぁ」
「そうなの?結構有名じゃない?」
周りの女子たちからは様々な声が上がる。
短田芽衣子、高町かなた、石川弥生、庭紗香、そして朱璃とこよみの六人が、いつも通りのメンバーだ。彼女らに加えて、他クラスの内添蕾実も含めて共に行動しているのが多い。
「芽衣子ちゃん、かなたちゃんはそういうの疎いでしょ」
「確かに。でも弥生ちゃん知らないのは意外だなぁ」
こよみの声に、朱璃は同意する。二人の笑い声に、芽衣子は口を尖らせる。違うじゃん、と声を上げて卵焼きをほおばる。
「なんでみんな噂とかに詳しいの?七不思議教えてよ」
彼女の発言にかなたは頷く。
「私も!教えてほしいなぁ」
弥生の声に、こよみは頷いて答える。