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5話 夜見の世界での出会い

 3月上旬・夜見の世界・砂漠が広がる場所


「おにぎりってなんでこんなにおいしいのだろう」


 凛太郎は砂の地面に腰を下ろしてむしゃむしゃとおにぎりを食べていた。頬には米粒がついている。その米粒をつまもうと包帯を巻いている右手でとろうとするがその指が止まる。


「いけね、返り血がついている。ふかないと」


 凛太郎の右手の指5本と手の甲には血が付着していて、その血を砂にこすりつけて落とした後に着流しの袖で砂をきれいにふき取った。


「午前中は4時間で60体。午後の5時間で40体倒したら100体になってちょうどいいかな」


 凛太郎は独り言を言いいながらおにぎりを3つ食べ終えた。ちなみに具は何も入っていない。


「はー。少し眠くなってきた」


 凛太郎はいつも通り、ここで1時間の休憩を取ろうとおにぎりを入れていた布袋を枕代わりに眠ろうとしていた。


「きゃーーーーーー!」


 叫び声が聞こえ飛び上がり周りを見渡す。


「な! なんだ!」


 ようやく寝られると思っていた凛太郎には面倒くさいイベントである女の子の叫び声が聞こえた。叫び声の聞こえた場所に杖を握りながら走っていくとそこには巨大なありじごくのようになっていた。見下ろすと10メートル下に女の子を発見しだがそこには女の子にとって絶体絶命の光景が広がっていた。


「あ……あ。だ、だれか」


 女の子は腰を抜かしながらも後ろの下がろうとしていたが砂の地面でなかなか下がれない。目の前には4体の黒い魔物が不気味な鳴き声を発しながら女の子を見ていた。だが上から覗き込んでいた凛太郎の表情は女の事は真逆だった。


「女の子を助けられる。俺はヒーローかなんかか?」


 少しニヤリとしながら言うと10メートル上から飛び降りて少女と魔物の間に飛び降りた。そして背の方にいる少女に横顔を向けて決め顔をしてこう言った。


「大丈夫。俺が倒してやる」


 カッコつけた到であったが女の子は恐怖で顔が固まっていた。


「グオオオオ!」


 魔物が大きな叫び声をあげる。しかしそんな事では凛太郎は驚かずに挑発する。


「来いよ。黒い魔物!」


 腕に持っていた杖を両手で持ち構える。杖を武器と認識したのか一斉に魔物たちは凛太郎に襲い掛かってくる。


「あなた……あぶないよ!」


 固まっていた少女が凛太郎に喋りかけるが凛太郎は振り向かずにこういった。


「大丈夫、こんな奴ら一振りだから。そこで少し待っていて」


 そう言うと凛太郎の杖に透明の魔力を纏わせた。それと同時に魔物たちは襲い掛かってくる。


 その数秒後多くの血が地面に染み渡る。


 勝ったのは凛太郎。襲ってくる魔物4体を一刀両断した。その場に魔物は血を吹き出しながら倒れこみ、数十秒後には動かなくなり死んでいった。


「こんなものだな。小物だったし」


 血の付いた杖を拭き終わると凛太郎は少女の前に立ち、手を差し伸べた。その顔を何もなかったかのような普通の顔をしていた。


「俺の名前は凛太郎。君は」


「わ、わたしは千春」


「千春か。いい名前だし可愛いね」


「そんなことないよ」


 少し顔を赤くした千春は手を握り、凛太郎と向かい合った。


「わ! 俺と同じぐらいの身長だったのか!」


 凛太郎の髪は少し上に跳ねていて、千春の髪はきれいな白髪でお団子ヘア。髪の毛を入れると凛太郎の方がすこし大きい。


「なんでそんなに驚いているの。それより……」


 千春は何かを言おうとしていたが凛太郎は大きい声と笑顔でこういった。


「だって振り向いたとき胸が無かったから。俺16歳だけど千春ちゃんは12歳くらいかなと思って。胸とかないし」


「こ、この……変態やろー!」


「ブギャー!(なんで怒ったの!?)」


 千春は胸の事なんて言われると思っていなく恥ずかしくなり思いっきり凛太郎の顔を殴り、凛太郎は1メートル吹き飛び尻餅をついた。だがその顔は苦痛ではなく晴れやかだった。


「胸が無くて悪かったわね。それと運悪くあなたと同じ16歳よ!」


「お、同い年だったのか……。それは悪かった」


「私帰る。でもこれだけはいうわ」


「なに?」


「助けてくれてありがとう」


 千春はそう言うと蟻地獄のような足場を両手も使ってあがっていく。10メートルはある蟻地獄は上がりにくい。しかし、凛太郎は千春が両手を使うことに違和感を覚えた。


「待って。俺聞きたいことあるよ。千春ちゃんに」


「なによ?」


「こんな砂の坂道なんて魔法使いなら足だけで上がれるのに手も使って上がっているということは人間なの?人間がこの夜見の世界にいるはずはないけど」


 夜見の世界の人口比率は100%魔法使いである。人間より身体能力の優れている魔法使いならこの坂道くらい手を使わず三段跳びのように上がれるはずである。


「……」


 千春は少し動きが止まったがすぐに動き出してゴキブリのように坂道をあがって行った。


「ちょっと待てって!」


 凛太郎は走ってその坂を三段跳びのように上り、すぐに追いついた。観念したのか千春は喋りはじめる。表情は暗くなる。


「言っても信じてくれないよ。……どうせ」


 そっぽを向く千春だが凛太郎は両肩に手を置き綺麗なまなざしを向ける。


「俺は信じるよ」


「なんで?」


「女の子の言うことは信じるから……今のところは」


 ドヤ顔で親指を立てる凛太郎に千春は笑ってしまった。


「凛太郎君だっけ?面白いから教えてあげる」


 千春はその場に座り、自分のことを喋りはじめた。


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