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4話 伊岐凛太郎16歳

 伊岐一族が住む鎖国の森・古びた神社の境内


 寝癖を直していない黒髪を包帯の巻いてある右手でかき、あくびをしながら少年は境内の中心に立っている。名前は伊岐到凛太郎、服装はボロボロの着流し、腰には木でできた杖を装備している。凛太郎は今から魔法を使って異空間を開き仕事場へと向かう。凛太郎は16歳であるため仕事場へ向かうというより学校に登校している眠たい学生のように見える。両手の平を胸元で合わせるとそこから透明の魔力が溢れてきた。


「よし、扉を開くか。空間魔法異界・開」


 唱えると凛太郎の目の前が光だし2メートルの穴のようなものが目の前に出現した。その光は空間が捻じ曲がったかのような不気味な様子である。


「ここからが面倒くさいんだよな」


 不気味な空間を前に驚くことなく手のひらに貯めていた魔力を今度は右手の人差指に貯め空間の前に出し、人差し指を使って文字を書いていく。現在使われている文字ではなく難しい複雑な字を書いていく凛太郎。時折止まって考えながら書いていき10分もの時間がかかった。通常なら2分で終わる作業だが凛太郎は頭がよくはなく時間がかかってしまう。


「これでよし、そろそろ慣れねえとな」


 そう言って足を一歩引くと空間の目の前に古い木製の扉が出現した。この扉を開けると別の世界に行くことができる。開くことができるのはごくわずかな一族だけであるが裏切りの一族である凛太郎が知っているのには訳がある。それは今から向かう世界、『夜見の世界』での仕事が関係している。凛太郎はその扉の取手を包帯の巻いてある右手でつかむことにしている。理由はこの仕事をしているという実感を今一度思い起こすためのルーティーンである。扉を開くとそこは夕暮れの景色が広がっていた。目の前の5段の短い階段を下りて砂の地面を一歩二歩と歩いていく。


  時刻は午前8時。到凛太郎が眠いというのも当然ではあるが見える景色は夕暮れである。それは夜見の世界はどの時間でもその色をしている。地平の世界のように太陽や月はなくなぜそのような色をしているのかは誰もわからない。気温も常にで25度である。


 凛太郎は夜見の世界を直線に歩いていく。魔法使いは住んでいるのだが凛太郎は魔法使いの居ない過疎地での仕事をしている。


「20分くらい歩いたからそろそろ現れるかな。おーい!魔物、出てこい!早く倒してやるからー」


『魔物倒し』それが凛太郎の仕事である。親を見ていて自分もこの仕事をするのだろうと物心つくころから思っていた。7年前の9歳の頃から父と兄の3人で魔物を倒していた。今は一人であるが……。


「お、黒い霧……来たか」


 凛太郎の呼びかけに反応したのか、黒い霧が発生して霧の中から3メートル級の黒い人型に近い魔物が一体現れた。


 凛太郎はいつも魔物の出現方法に疑問を持っていた。建物や人のいないただ砂漠が広がる空間に魔物は突然その場に現れる。パッとではなく風が吹き、砂が舞い上がったともうと黒い霧が現れて魔物が出現する。


「やっぱり黒い霧が現れてからじゃないと分からないな」


 この一連の流れの中で魔物の発する魔力のような力が徐々に強くなっていく。そのどこで気づくかが魔物倒しを行う上での強さの指標の1つになっている。


「向かってきたか」


 魔物が低い重低音の叫び声を出して向かってくる。30メートルの間を走ってくる魔物は両手を前にだし口からは火の玉を出している。これが魔物の一連の攻撃である。それは凛太郎もよく知っていて火の玉を避けながら腰にさしている杖を両手で持ち、魔力を体と杖に流しながら攻撃に備え居合の構えをする。


 魔物は10メートルに近づくと火の玉の攻撃をやめて鋭い爪で攻撃するために腕を振り上げる。しかし凛太郎は臆することなくその場に居合の構えをしながら動かずにいた。


「グオオオオオ!」


 魔物がその鋭い爪で攻撃できる範囲に入った時、大きな声をだして振り上げていた腕を振り落す。


(今だ!)


 振り下ろした瞬間動かなかった凛太郎は魔力を纏わせていた木刀を横に振りぬき、自身も前に飛び出し一刀両断した。魔物は腰から真っ二つになりその場に倒れこんだ。


 魔物を見ることなく前に進む凛太郎。


「よし、あと99体倒したら今日に仕事は終わりだ」


 魔物を倒すことになにも凛太郎は躊躇しなくなっていた。最初は気持ち悪く飛ぶ着いた血もすぐに拭いていたが今はそんな事はしなくなっていた。すぐに歩きだし魔物退治を再開させる。凛太郎の毎日はこの魔物倒しで終わる。凛太郎だけではない歴代の伊岐一族はこうして1日が終わっていた。その生活が嫌だと凛太郎は思って4年前に行動して楓と出会い、今は希望をもって仕事をしている。

 

  だが、1つだけ不満があった。それは一


「女の子に会いたいなー」


  そんなことを思い凛太郎は帰っていく。


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