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13話 頼みと佐渡一族 

 天上の世界 


 二人は都市部にあるホテルで一夜を過ごした。部屋の隅積みまで明かりが届き、外からの風がはいってこない部屋。当たり前だが二人にとっては普通でない部屋であった。そしてふかふかの布団で寝たのは初めてで、それだけでも二人は幸せだった。


「千春起きた?」


「起きたよ、でも布団気持ちいいからまだ寝てるの」


「そうだよな。父さんはなんで地平に戻るんだろう? 頼み込めば違う所でも泊めてくれるかもしれない

のに。あ、そうだ、和一さんの所に行かないと。なんか話があるって言っていたし」


「そうね。今日はこの布団でまた寝られるように頑張らないと」


 二人が喋っていると部屋をノックする音が聞こえ、二人が返事する前にドアが開かれた。


「君たち、十分に寝られたか。ってまだベッドの中か、早く起きろ」


 大神和一と後ろには楓がいた。二人はすばやく起きて近くに行くと昨日、二人は遠くてよく見えなかった容姿がはっきり見えた。目つきは千造ほどきつくはないが鋭い。堅そうな黒髪は毛先がツンツンしていて前髪はおでこの半分だが横髪は耳が隠れ後ろ髪は首の付け根まである長さだ。和一は一八十センチの身長があり、二人は目線を上げながらしゃべる。


「今日はお前たちがこれから行う任務について総長の代わりに私が話す」


「昨日の佐渡一族の首飾りの事ですね」


「そうだ」


「でもそれは難しくないですか。佐渡は小さい一族ですが反月一族ではないですか。そんなことしたら戦争の理由にされてしまうと僕は思うんですが」


 楓の言う通り、現在の佐渡一族は地平の世界に住んでいて月一族を滅ぼそうとする反対勢力である。


「そんな事、俺たちは知っている。それが一人の委員長の調べで、佐渡一族を抜けてこっちに付きたいと申している輩が一人いる。そいつのいう事を聞いて首飾りを入手してほしいんだ」


「和一さん。どうしてそれが僕たちなのでしょう?」


「抜けたいと言っている輩の指示だ。16歳くらいの男一人を指定の場所につれてきてほしいとな」


「と言うことは俺一人ですか? 千春は抜きで」


「そういうことになる。女のほうは楓と一緒に行動してもらう。分かったな」


「分かりました」


 楓と千春は納得しようとしたが凛太郎は疑問を呈した。


「でも首飾りなら無理やり奪って、俺たちからも奪ってすぐに夜見の世界を封印すればいいのに大神総長はどうしてしないんですか?」


「凛太郎、それはバカだよ。戦争になるしそんなことしなくても首飾りをくれると言っているんだから佐渡一族からもらった方がいい。奪ったわけではないから佐渡一族内部の問題だけで終わるようにしたいんだよ。月一族は関係ないってね」


「そういう事だ。それに総長はこういう話をした。三つの世界の者たちを全員活かさなければ本当に世界は一つにならないとな。だから何年かかっても夜見の世界の住人をこっちに移してから出ないと封印はしない。佐渡の首飾りも戦争は起こさずに入手したいと言っている」


「そういう事なのか。よくわからないけど、そんなことは可能ですか?」


「総長が言うなら従うしかない。いや総長が言うなら皆信じているんだ。お前たちはまだわからないと思うが委員長は何というかカリスマ性があってみんな信じるんだ」


「そう、ですか」


凛太郎は信じるしかなかった。


「よし、指定の場所が書かれている場所の紙を渡しておこう。出発は準備ができ次第だ」


「急ですね。和一さん」


「話さず準備をしろ。俺は忙しいからな、あとペンダントは着けておけよ。封印に使う力を溜めるためにな」


「分かってますよ」


「言い忘れていたことがあった。この任務が成功したらお前の念願だったことを総長が叶えてくれるそうだ」


「楽しみにしときます。では」


凛太郎はホテルをすぐに出て空間室に向かい地平の世界にいく。地平の世界に着いた凛太郎は魔法鳥に乗り指定された場所に向かった。


その日の夜


佐渡一族・族長の家


佐渡一族は食事をしていた。族長の家族とその弟、妹家族合計二十人で囲んでいた。


「父さん、月一族と争うのはやめようよ。他の反一族からは妬まれるかもしれないけど一族の名は残るんだよ。俺たちは反一族の中でも弱い部類。ただ昔からいるってだけだ。それにもう十人しかいないじゃないか」


 十六歳の豊はいつものように族長補佐の父に説得していた。


「お前は歴史を知らない。だからそんなことを言える」


「知っているさ、知っているうえでやめようと言っているんだ。少しでも一族を残したいんだ。このままだと一人もいなくなるよ」


「豊いい加減にしなさい。毎回毎回」


 母が豊に怒る


「そうじゃぞ、豊。食事くらい静かにしろ」


 祖父も注意する。


「一族の名を汚すわけにはいかない。先祖に申し訳ない」


「だったら俺はここを出ていくぞ、それでもいいのか」


「それはない。なぜならお前はこの一族を誰よりも愛しているからだ。そうだろう」


「……そうだけど、俺はあんたたちの愛とは違うんだ。母さん、じーさん、ばーさん、それにみんなこれでいいのかよ!」


「……」


 皆は豊の声に反応しない。


「自分がどうしたいのかもないのよ」


 豊はみんなに問いかけるが聞いてはくれないため、豊は部屋に出た。その様子を姉は黙ったまま見ていた。


「あいつ……」


 姉は弟の様子に違和感を感じた。


その日の深夜、豊は佐渡一族の門前にいた。


「豊、あんたでて行くの?」


姉が歩いてきた。


「どうして姉ちゃんが?」


「なんか予感がして私もでて行こうとしていたから」


「そう」と、豊は驚かなかった。


「あんたは出てどうするの」


「俺は大神一族につく。俺は佐渡一族の名誉回復しか頭にない」


「家族ではなく一族の名誉を回復するの?」


「そう。俺の時代で憎しみの佐渡一族を終わらせて新しい佐渡一族を作る」


「……。そう、でもあなたが今でて行ったら親はあんたを探し出すわよ。知っているでしょ。あんたと私には術式が組まれていてすぐに特定されることを」


「それはもう関係ない。俺はもう親よりも強い」


「それって殺すこと?」


「違う。違う方法があるけど教えない。姉ちゃんは出てどうするんだ」


「私は……教えない」


「まあいいや」


姉弟の会話はすぐに終わり豊は佐渡一族から出ていき、凛太郎が向かっている場所に向かっていった。

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