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4話 楓の意思

 地平の世界 月の竹 月一族 第一訓練場


 多くの魔法使いが思い思いの練習をし汗を流している中、楓も一人で修行をしている。


「まだまだ僕は弱い。二人とも待っていてくれ。絶対に族長になるから」


 そう思って修行していると大きな鳥の鳴き声がした。鳴き声のする上空を見ると魔法使いの交通手段としてよく使われる魔法鳥(マジックバード)が上空を飛んでいた。ちなみに魔法鳥の召喚方法は魔法鳥に自分の魔力をマーキングしておき、魔法人はそのマーキングした形を地面や紙に書くとその魔法鳥が現れるのである。


「珍しいな月一族の上空を通るなんて、攻撃されても知らないぞ」


 魔法鳥は城門の前で止まり月一族の城を見ているようだった。正確には乗っている人ではあるが。そこから動かないことに不審に思う月一族の魔法使いたち。


「なんだあの魔法鳥はいつまで停まっているつもりなんだ」


 不審に思い闘技場にいた者たちは訓練をやめ、楓も不信に思い杖を振るのをやめ、城門の前に集まった。


「何をしている。要があるなら降りて来い」


 楓は少し強い口調で言った。すると魔法鳥は少し降りてきて顔が確認できたが、乗っていたのは楓の知らない人物だった。


「誰なんだ! お前は」


 男は痩せていて強そうには見えない。だがずる賢そうな顔をしている禿げかけた中年の男だった。


「お前たちの()()を二人捕えた。族長を連れて来い。人質と交換だ」


 男はニヤニヤとしながらしゃべっている。


「その必要はない。もう来ている」


「ほほう、お早いことで」


 騒ぎを聞きつけた族長の三四郎は息子の卓光を筆頭に7人の家来を引き連れて城門に来ていた。そして冷静な口調で男に話しかける。


「仲間とは誰だ? 証拠がなきゃなんもできんぞ」


 男は足元に手を入れるとなにかを持ち上げた。それは手足が縛られた千春だった。どうやら気絶しているようだ。


「一人はまだ向こう(夜見の世界)にいるよ。キシシシシ」


「千春! なんで千春がとらえられているんだ」


 驚いたのは楓だけである。集まっている一族たちは楓を一斉に見た。楓の様子を確認して族長の三四郎が口を開いた。


「誰だ、そいつは。そんな奴は知らんぞ」


「そんなはずはねぇ。こいつらがそう言ったんだ」


 男は思っていた反応と違い少し焦っていた。


「楓が話していた一族たちのやつですよ。父さん」


「……。ほほう、そうか。こいつがそうだったのか。悪いがそいつは俺たちの一族ではない、同盟一族でもない。我々の知るところではない」


 三四郎は言い切った。その言葉は嘘ではないと思った男は、表情をなくし淡々と喋りだした。


「そうか。こっちに来られて、なおかつ族長の首も取れると思ったのに……こいつは役立たずか……ならこいつはここで殺すか。もって帰るのも邪魔だったし。隊長にはそういうか」


 男は表情をなくし持っていた小刀で千春の首を切り裂こうとする。


「やめろ!!!」


 楓は大声でそういうと犯罪者の手が止まった。


「なんだ、なんだ!? そんな大声を出すとかお前には重要な人物らしいな。まぁいい一人でも苦しむやつがいればな」


 そういうとまた切り裂こうとする。だが犯罪者の手が止まった。


「あれ? あれあれ? て、手が動かなくなったぞ」


「だからやめろと言ってんだ」


 楓の杖の先から黒い帯のようなものが男の手に伸び動かなくさせていた。楓の目は今にも男を殺そうという目だった。


「なんだ! この黒い帯は。どんな魔法だ!」


 男は顔に脂汗をかいていて相当焦っている表情をしている。


「千春を離せ。そうしないと手を折るぞ」


「なにを言っている。俺に手を出して殺したらもう一人のやつの命はないぞ。俺が一時間以内に来なかっ

たら不成立とみなし殺すとなっているからな」


 脂汗をかいている男は立場が不利にならないように必死になっていた。


「お前バカだろ」


 楓は冷静な声で話そうとしているが少し怖さが出ている。それは周りにいるものは感じていた。そして楓は術を強め黒い帯状の線は男を包み込みこんだ。締め付けられて苦しそうだが喋りはじめる。


「お、俺を殺しても行き方わかんねーだろ。よ、夜見には行けるだろうが場所まではわかんねーだろ。 ……それに空間室お前は知っているのか。夜見は……広いぞ」


「やっぱりお前はバカだ。確かに空間室はどこにもあるわけじゃない。でもよく考えてみろ、ここはどこだ。この世界の長、月一族が住んでいるところだぞ。空間室をもっているに決まっているじゃないか。それに凛太郎は()()()()()を出している、場所なんてすぐにわかる」


 それを聞くと男の顔には汗が出てきた。もう千春のことはどうでもよくなっていて自分の命は助かるかを考えていた


「……やめて、くれ。殺さないでくれ」


 男は動けないものの必死に抵抗している。しかし意に反して魔法鳥はゆっくりと地面に落ちてきた。


「安心していいよ、殺さないよ。でも罰は受けてもらうけどね。こいつを牢屋にぶち込んでくれ。俺は助けに行く」


 男は恐怖で気絶してしまった。それを確認すると楓は魔法を出すのをやめ、楓は男に近づき千春を抱えた。


「千春。ここの連中はお前を助けてはくれないから少し我慢して付いてきてくれるか。まずは空間室にいかないとな」


 楓が空間室へ走ろうとしようとしているときに三四郎が声をかけてきた。


「こんなに大勢の前で助けに言ったらもう言い訳はできない。どんな罰が待っているかわからないぞ。これからの人生を無駄にしてもいいのか」


 楓は立ち止まる。そして空を見て息を少し吹いてからこう言った。


「もういいよ、父さん。二人を助けたいという感情を捨てられない。俺は父さんの弟じゃないんだよ」


「どういう事だ。楓」


「死んだ爺さんから昔聞いたよ、父さんの弟のことを。弟は僕と同じで伊岐一族つまり凛太郎の父さんと仲が良かった。そして関わってしまったことで亡くなってそれがトラウマなんだろ。でも僕は父さんとは違う」


「……」


 三四朗は何も言わずに空間室に走る楓を見ていた。兄の卓光は父の横に行き話しかける。


「いいんですか行かせて」


「……。お前の言う通りだな。もう駄目だ、あいつは」


 三四朗はそういうと皆を解散させ場内に帰って行く。父と城内に帰る卓光は心の中でこう思った。


(楓どうなっても知らないぞ)


 かくして凛太郎を助けに行く楓。この先どうなろうが険しい道のりになることは間違いない。


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