3話 夜見の世界
夜見の世界
夜見の世界は『犯罪者の世界』とも言われている。理由はこの世界には罪を犯した魔法使いと一族だけしか住んでいないからである。したがって千春の一族は過去に罪を犯した一族なのである。罪の重さによっては月の竹に帰れるが重罪の場合は子孫も含め夜見の世界に永久に住むことになる。千春は一年前に魔物倒しをしていた凛太郎と偶然出会い地平の世界に行くことができた。
楓から手紙をもらってから一か月後
時刻は午前11時だが景色は夕暮れである。変ではあるが夜見の世界はどの時間でもこの色をしている。さらに地平の世界のように太陽や月はなくなぜそのような色をしているのかは誰もわからない。地面はすべて砂であり山もなく砂の地平線が広がっている。
その世界で凛太郎と千春は今日も黄泉の世界で魔物を倒している。魔物の大きさは三メートルは超えている中、二人は倒している。魔物たちには知能がないため攻撃が単調なのが救いである。単調な攻撃とは二人を見つけるとまずは腕を振り、その次は口から火を吹きまた腕を振る、この連続である。しかし単調な動きの魔物でも数が多いと疲れがたまり攻撃を受けてしまうときがある。
「はぁ、はぁ、魔物が多すぎる一か月前からどんどん数が増えてきている。めんどくせぇ」
凛太郎はそう言いながら魔物を倒す。連日の仕事により疲れていて魔物の攻撃を受けていた。周りには五百体以上の魔物の死体が転がっている。
「凛太郎あと一体だよ。これが最後」
残り一体となって千春が最後のひと踏ん張りだと凛太郎を元気づける。そんな千春の服にも血がたくさんついている。千春の言葉に奮起し凛太郎は最後の一体に切りかかる。
「うりやぁぁぁ」
声を出してないともう動けない状態で杖に魔力を纏わせ最後の一体を真二つにして倒した。倒した後、杖をそのまま地面に落として砕けるように倒れこんだ。千春も隣に来て腰を下ろした。
「終わった……ね」
「やっと終わった……。俺もう動けない。ここで寝たいよ」
二人は三時間も魔法を使い戦っていたのである。通常は十分もすれば魔物はいなくなり休息できるがこの日は三時間経ってようやく魔物が消えた。それが影響したのか凛太郎は珍しく弱気になっていた。
「ダメだよ、地平の世界に行かないとここのやつらに襲われるよ。ここには犯罪者ばかりがいるから」
「分かっているけど」
「はぁ~本当に子供ねー」
「いいよいいよ子供で」
分かってはいるがなかなか動けない凛太郎である。そんな凛太郎を見てここに少しだけいるかと決める。
「じゃあさ、私トイレに行くからここから動かないでよ」
「分かっているって」
トイレのある場所は砂漠街という夜見の世界の人々が自分たちで作った街にある。規模は少数の所から多いところでは千人規模の大きな街もある。それぞれ独自の規律が存在している。しかし千春が着いた砂漠街は廃村になっていて人の気配はない。
「ここ昔一人で遊びに来たことある。いい街だったのにな。トイレ、トイレっと」
トイレにはいった千春の背後から10人の人影が現れた。
数分後、千春の叫び声が廃村に広がった。
その頃
薄暗い空を眺めなが凛太郎は千春を待っている。凛太郎はこうして空を眺めることが好きだった。夜見の世界は広大な砂漠が広がり、今は音もしない。凛太郎はそのまま眠ってしまいそうになるが足音が聞こえる。千春かと最初は思ったが複数の足跡が自分のほうに向かってくるのが分かり仰向けから状態をあげて足跡のするほうを見た。人影から人相が図る距離まで相手がやってくる。先頭に立っている男は三十代後半で無精ひげを生やし体は鍛えられているのが分かる。腰には刀を刺している。そしてその後ろからは手下と思われる者たちが10人と紐をまかれた千春がいた。
「刀を持っている。反乱軍か、お前ら。それと千春に触るな」
反乱軍とは
夜見の世界で立ち上がった組織である。発足人は分からず、どこかしこに分裂し組織を形成している。当初の目標はどうにかして夜見の世界を脱出しようと考え、月の竹から来る魔法使いを拘束して交渉材料にしていたが最近はうまくいっていない。反乱軍はよくこの言葉を言う。「刀は反逆の象徴。昔、人間たちはこの刀、正確には鉄の刀一本で魔法使いに戦いを挑んだんだ。今、人間たちは刀を捨て魔法使いの奴らに屈服している。だが、その反逆の意思は夜見の魔法使いが受け継いだ。だから俺たちは杖を捨て刀を取り戦う」と。
「お前の女か。それより、得体の知らないやつらが近づいているのに座ったままかよ、よほど疲れているようだな。まぁ、そうか三時間も戦いっぱなしでわな」
「見てたのかよ。早く千春を返せ」
「それはお前が俺たちの提案を聞き入れたら返してやるよ」
「提案? まあ、聞いてやるよ」
「お前ら地平の世界から来たんだろ。空間を行き来できる空間術を知ってんだったら俺たちに教えろ。復習したい奴らがごまんといるんだ」
「反乱軍はその言葉ばっかりだな。嫌だって」
「なら無理やり聞くしかねえな。空間術を知っているのは上級の一族だけだ。お前らを脅しに使って大金を手に入れることもできるからな」
「それもよく聞く」
男が言っていることは正しく凛太郎の身分では空間術は通常教えてもらえない。上流一族と間違えるのも無理もない。
「もう一度聞く。空間を開け」
「嫌だね」
その様子を千春は心配しながら見ている。
「……やるぞ、お前ら」
反乱軍の男たちは一斉に刀を抜き凛太郎に襲い掛かる。




