13話 千春との別れ
凛太郎がゆっくりと目を開けると千春の顔が近くにあった。
「あっ、起きた凛太郎君。大丈夫?」
ほっとした顔をした後に嬉しそうな顔をする千春。
「ち……はるちゃん」
かすれた声で言う凛太郎にどうしたのと千春は顔を近づけるが……ぱちんと平手打ちをする。凛太郎は近づいてきた千春にキスをしようとしたが気づいた千春に頬を平手打ちされたのだ。凛太郎はあおむけの状態から体を起こして男すわりをする。疲れているため腰が曲がっている。
「うーん、何だ俺もしかして気を失っていたのか」
「うん、相手を倒した後でね」
そのことを聞いて少し間をあけるとハッとする凛太郎は首を動かして周りを見渡した。
「あいつはどうした。姿がないぞ」
「あー、ゲスおじさんなら道長が魔鳥に乗って魔法警察に連れて行ったよ」
それを聞くと安心したのか再び仰向けになって体を休める凛太郎。
「そうか安心した。でもここは無法地帯とか言っていなかったか?」
「道長に聞くとね、最近できたんだって。あっ、それと勝負についてなんだけどやっぱりやめるって」
「はぁ、なんで?」
「俺はここでやることができたって。それ以上は言わないって」
「……そうか。まー元々どうでもよかったけど」
「道長に対しては厳しいよね」
「そう?」
戦いは終わり、2人は空間室に向かっていた。凛太郎は久しぶりに気絶をするまで戦ったため足取りは重い。ただこの足取りの重さにはもう一つ理由がある。それは服が破れている事。2枚しかない着流しはとても貴重なものである。それをどうしようかと考えてきたら足取りが重くなる。しかし遅くとも歩けば空間室に着く。だが凛太郎は服が破けて心配という明日以降の事を考えていたが事はそうはいかず空間室に着き、異空間の扉を開けたときに新たな問題が発生する。
「私も一緒に月の竹へ行っちゃダメ?」
腕に抱き付いて上目遣いをするため膝を少し曲げている千春。キスはダメだけど胸はいいのかと思う凛太郎であった。少し冷静になっている凛太郎がいた。甘い声で言う千春に凛太郎は断るのをよそうか、一緒に住もうかと考えたがここは何とか抑えた。なんでという千春に抱き付くのをやめさせて肩を両手にのせ同じ目線にして真剣な目で話す。
「やっぱり、一回家に帰ってから両親と話せ」
その言葉を聞くとムスっとして背中を向ける千春。
「絶対意味ないしダメだよ」
その声は少し震えていて、時折手を顔に持っていき涙を拭いているようなしぐさをする千春。「泣いているのか?」凛太郎はそう思った。別に自分は悪いことを言っているとは思わないが何か後ろめたい思いがしてしまう。そう思った凛太郎はあることを提案した。
「ダメだったら俺の所に来い。本当に嫌になったら」
凛太郎の提案は常に相手を驚かせる。背を向いていた千春が再び凛太郎の方を向く。
「どうやって?凛太郎君が帰っちゃったら私もう地平に行けないじゃない」
正論を返されて凛太郎は言葉に詰まり、きょろきょろ目を動かしたりして考える。
「うーん、運命にまかせよう」
考えた言葉がこれだった。その言葉を聞くと呆れたかのように再び後ろを向く千春。
だが次の瞬間―――
「え!?」
凛太郎が後ろから抱き付いてきた。今までと違い優しく包み込んでくれるような抱き方だと千春は感じた。
「大丈夫だって、俺たちはまた会えるような気がする。じゃあな」
優しい言葉と抱き付かれたことにより気持ち高揚していた千春は「じゃあな」という言葉に反応するのが遅れ、凛太郎が離れてから十秒後に振り向く。
「あ、ちょっと待って」
足を動かそうとするとコケる千春。足には木の枝が巻いてあった。そして凛太郎が異空間の中で自分のことを見ている。
「ゴメン、ゴメン」
「凛太郎君の……このやろう!でも……まあいいや。凛太郎君、最後に聞いてよ」
「なに?」
「凛太郎君の能力ってね、私と似ている部分があるの。私に似た能力を見るのは初めてだから親近感わいちゃってね。不思議とまた会える気が私もしているの」
喋る千春の顔は笑顔で、それを聞いた凛太郎の顔も笑顔だった。
「ああ、いつか会えるさ。……じゃあ」
「うん、……じゃあね」
二人はこのまま別れ別々の道に進み、凛太郎の夜見の世界での1日の冒険は幕を閉じた。




