10話 道長の誤算
朝10時だがあいからわず空は夕暮れ。
「何で魔物倒しなんてしているの。今日くらい休めばいいのに……って今、戦っているから無視か」
凛太郎は昨日と同じで魔物を倒していた。今日の魔物は小さく2メートルくらいで攻撃も弱く、凛太郎は力を弱めて戦っていた。それから1時間で17体の魔物を見つけ、倒した凛太郎は少し休憩をとるため、千春の隣に座る。昨日はあんなのビビっていた千春だが今は魔物の前にしても片膝をついて座っていた。
その後、2人は昨日道長と出会った場所に移動する。約束の時間があと1時間と迫っていた。だが凛太郎は冷静でリラックスしている。理由は道長が急成長していなければまた瞬殺できる相手であるからである。そのためお腹がすいた凛太郎は着流しの中に隠していた袋を取り出した。その中身はおにぎりであった。
「どうしたの! そのおにぎり」
実は昨日、凛太郎は空腹で寝られず千春が寝たのを確認するともう一度地平の世界に行き、夕食を食べておにぎりを作りまた戻ってきたのである。その話を話すと昨日は1日くらい平気と言っていた千春の顔もおにぎりをきれいなまなざしで見てヨダレがたれそうになっていた。
「もちろん千春ちゃんのも持ってきているよ。二人で食べようぜ」
「あ、ありがとう!」
むしゃむしゃと食べる千春を見て凛太郎は笑顔になった。凛太郎には同年代の女の子がいなく女の子とこうしていることが嬉しかったのだ。
そして1時間後、約束の時間がきた。
「道長、全然来ないぞ。逃げ出したのか」
屈伸をしながら対戦に備えている凛太郎。見晴らしのいい場所であるが遠くのほうを見ても道長の姿は見えなかった。
「そんなことしないよ、道長は。そう思うなら道長の住んでいる反乱軍の基地に行ってみようよ」
「そんなとこに行っても大丈夫なのか」
「大丈夫、早くいきましょ。時間的に1時間ぐらいかかるけどね」
2人は反乱軍の基地に向かう。凛太郎は移動中に反乱軍の基地について質問していた。道長の所属している反乱軍は1人の怖いおじさんが個人でやっているもので凛太郎君が強かったら大事が起きていても大丈夫だと千春は言った。
「着いたけどいたって普通の家だな。軍って感じはしない」
凛太郎の言う通り一般的な木造の住宅で違うとすれば少し綺麗な状態であることだ。
「家の中には入ったことはないんだ。いつもは家の裏の木の枠で囲まれた庭でおじさんと会っていたんだよ」
「じぁ、そこ少しを覗いてみるか。見つかったら面倒になりそうだけど道長の名前を言えば何とかなるか」
見つかると面倒だと言った凛太郎は音を立てずに恐る恐る庭の方に歩いていく。
「みち……」
その庭を見た凛太郎は目を見開き止まった。千春がびっくりして大声を出そうとしたので凛太郎は口を手で覆った。
「千春ちゃん大声を出さないように」
「道長……どうしたのそれは」
覆われている手の中で千春はそう言った。二人が見た光景は今までの人生の中で見たことが無い酷い光景だった。道長は十字架に張り付けられていて殴られたのか、はたまた魔法をくらったのか血が流れており体はいたるところ腫れあがっていた。そしてその前には手に血の付いた体格のいい筋肉質の中年の男がいた。顔には返り血、腕には血がついていた。どう見ても中年の男が道長に拷問していることが分かる。
その様子を数秒見た凛太郎は何かを決心したかのように木の枠を飛び越えておじさんの前に現れて威勢よく言いはなつ。
「てめえか、道長をそんなことにしたのは!」
凛太郎の声にも驚かず低い重低音で喋りだした。
「誰だお前は?そこの顔を隠している小娘は見たことあるな」
「な、なんできたんだ……二人とも」
か細い声で道長が言う。道長は意識があるようだ。
「お前も知っているのか。だったらこの拷問は意味のないものだったな。お前を拷問している理由は2人の仲間の居場所を教えてもらうためだったからな」
そう喋る男はよだれが垂れていてそれに気づいたのかそのよだれを手の甲でふく。そこまでは驚くことはなかったが次の行動は予想できなかった。その手で道長の腹を数発殴ったのである。
「や、やめろ」
凛太郎もさすがに声を上げてやめさせようとする。
「どうしてこんな奴の所に行ったのよ、道長!」
道長は黙って歯ぎしりをしていた。痛みを我慢するためだろうが唇が切れていた。
「言えないだろなー代わりに俺が話してやろうか。それはこいつがバカだからだよ。こいつはおれの話を信じ込みやがってな。ただ俺はこの夜見の世界で暴れたかっただけなのに。こいつは本当に反乱軍として戦うと言っていたんだ。その時は笑いそうになってしまった」
中年男は道長を騙していたのである。
「お、お前」
凛太郎は拳を震わせる。そのことに関係なく中年男は喋りつづける。
「それでな昨日こいつがここを抜けたいと言ったときに本当のことを言ってやったんだよ。その時のこいつの顔は最高だったな。でも、今の血まみれの顔はもっと最高だけどな」
男は笑いながら言う。その笑い声は不快そのものであり凛太郎は我慢ならなかった。手のひらを合わせて魔力をだす。
「木術・木縛」
凛太郎は魔法を発動させ、魔力を覆っている手のひらを右手だけ向ける。数秒後、中年男に向かって手のひらから木の太い枝が出てきて男を縛り上げた。これはただの枝ではない魔力を練りこんでいるためなかなかはずれはしないが中年男は動じない。
「木の魔法か。相手が悪かったな。……俺は炎だ」
何も言わず魔力そして魔法を発動し、体から炎を発火させて太い枝を燃やし抜け出した。これは属性の相性で焼かれただけではないと凛太郎は思った。それは枝に魔力をかなり混ぜていたのでそこらの火の魔法では焼かれないようにしていたのだ。その様子を見て凛太郎は千春にある頼みごとをした。
「千春ちゃん、水もっていないか?」
「持ってないけど。2キロ先に町があるからくれるかも」
「なら取ってきてくれ手のひら一杯だけでいいから」
「……。よくわかんないけどもらってくる(喉乾いたのかしら)」
その発言の本当の意味を分かっているのは凛太郎だけである。




