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龍の約束  作者: 雪見桜
本編
34/74

33.長兄の怒り



突き破られた天井から光が差し込む。

天井の残骸があちこちに散らばり景色はやや埃っぽい。


「……どいつもこいつも好き勝手暴れるもんだ、ったく」


静まり返った中庭で、呆れたように声をあげたのはザキだ。

いつの間にか剣を下ろし傍観者のようにその場で腕組みしている。

そんな彼に頭を下げたのはオルフェルだった。

続いてイェランも頭を下げ、こちらへと足早に走って来る。



「……無事か」


そう言ってメイリアーデの頬を触るイェランの大きな手に安心してメイリアーデの目が緩んだ。


「ナサドが、ナサドが……っ」


思わず零れてしまう涙声を宥める様、強くメイリアーデの頭を撫でるイェラン。

メイリアーデの中で意識を閉ざしてしまったナサドにその視線も移った。

ナサドの首元へと手を伸ばすイェランはやや震えている様子で、見た目ほど彼が冷静ではないのだと知る。

そっと触れた瞬間、少しだけ表情を緩め安堵した様子にメイリアーデもやっと少しだけ平静を取り戻した。

ほんのりとイェランの手から温かな気を感じる。

それが何かは分からないが、そこに触れると痛みがわずかに引いた。

治癒術なのか何なのか、分からないがこれもまた才の龍の能力なのかもしれない。



「……忌まわしい龍が」


吐き捨てるような、蔑む声が耳に届く。

声の主は、少し距離の離れた場所でなお憎悪の眼差しでこちらを睨みつけた。

応戦するかのように眉を吊り上げ振り返るイェラン。

しかし動きが止まったのは、そんなイェラン達の前に影が落ちたからだ。

イェランやメイリアーデの前に立ったのは、この場に現れたもう一人の龍・オルフェルだ。



「そこまで、そなたは私を信じられなかったか」


静かに、怒気も含まず長兄はリンゼルに対する。

メイリアーデには背を向けているから、その表情が分からない。

ただ声は何かを堪え押し込めるような、そんな悲しさを伴っていた。

無理もない。オルフェルはスワルゼ家と仲が良かった。

リンゼルは元はと言えばオルフェルの専属従者。年も近くリンゼル・ナナキ夫婦とは幼馴染だと言う。

以前オルフェルと共にスワルゼ家を訪れた際、実際にメイリアーデは3人の穏やかな会話を聞いているのだ。

それがこのような形になってオルフェルが何も思わないわけがない。



「答えよ、リンゼル。私はそなたの苦しみに気付かず、また無神経にのうのうと生きていたのか?」


「……」


また。

その単語を使ったオルフェルに目の前のイェランの顔が歪む。

いつだかオルフェルが語ってくれたイェランに対する罪悪感。長い間引きずり消えないオルフェルの傷に、メイリアーデの表情にも影がさす。


リンゼルは、それまで険しくイェランやメイリアーデを睨みつけていたその視線をふっと外し沈黙を貫いた。

イェランやメイリアーデへの態度とはどこか違い、気まずげにすら見える。

もしかするとリンゼルにはリンゼルなりのオルフェルへの情があるのかもしれない。

そう思った。



「父も弟も従者も傷付け自らが信じた友すらこのように追い詰めるとは私は本当に欠陥品なのだな」


代わりに耳に届いたのは悲痛なオルフェルの言葉。

初めて聞く心底傷ついたオルフェルの様子に、メイリアーデの心がやっと冷静になった。

水を浴びたようにすっと芯から何かが冷えていく感覚だ。

目の前でナサドを支えるイェランの手がグッと強く握りしめられている。

口を堅く結ぶその表情をイェランが浮かべる時、彼が自身をどれほど責めているのかメイリアーデは知っている。頑なに、そしてイェランもまた戦っているのだ。

必死に何かを押し込めている様子のイェランの手に自分の手を重ねるメイリアーデ。

ハッと我に返ったようメイリアーデへと視線を移したイェランに、メイリアーデは小さく頷いて立ち上がった。

力はすでに使い果たし、やはり体中の感覚が鈍くなっている。

立つのもやっとの状況だ。それでも何とか体が動いたのは、ザキの言葉を借りればメイリアーデの根性だろう。



「欠陥品だなんて言わないで、兄様」


オルフェルの背中に倒れ込むように抱き着く。

大きく体が揺れたその意味は何か。

メイリアーデからは相変わらずオルフェルの表情など見えない。

それでもメイリアーデは構わず言葉を続けた。



「私はオル兄様に大事なことをたくさん教えられたわ。苦しみながらでも人を愛し信じて良い王になろうとする兄様を尊敬している」


「……私は、そなたが思うような善良な男ではない。現に私は人を傷付けてばかりではないか。そなたもイェランも従者も、友と信じたリンゼルまでも」


「兄様」


「何故誰も言ってくれぬのだ、私など王に相応しくないと。 明らかに私よりも相応しい者がいるというのに気遣われ立てられ王道を進まねばならぬ惨めさに、なぜ誰も気づいてくれぬ!!」



それは初めて聞くオルフェルの怒声だった。

必死に押し込め、律し、誰にも吐き出すことができなかっただろう彼の葛藤。

いつも前向きに王太子らしくあろうとしてきた彼の本音だ。

惨めだと、もう辛いのだと、本人の口からこぼれた言葉にメイリアーデの呼吸がつまる。

長くそんなことを思いながら、それでも必死にオルフェルは立ち続けていたのか。

プライドも精神もボロボロになりながら。

ここまでオルフェルが追い詰められていたことにメイリアーデは気付けずいた。

長兄は優しく強く芯のある人なのだと盲目に信じていたのだ。

葛藤を抱えていることにはっきりと気付いていたのに、メイリアーデはただ尊敬の念を送るだけで何の支えにもなれていなかった。そのことに少なからず衝撃を受ける。

そしてそれはこの中庭に集っていたスワルゼ家の面々、兵達も同様のようだ。

ある者は驚愕に目を見開き、ある者は悔いるように歯を食いしばり、ある者はジッとオルフェルを見つめたまま動かない。リンゼルは視線をそらしたまま相変わらずの無表情だ。

その現場をオルフェルはどのように受け取ったのだろう。



「……もう良い」


ぽつりと、小さく声が響いた。

強張っていた体から力が抜け、その声には諦めが混じる。

心が折れた音が、メイリアーデには聞こえた気がした。


「初めから分かっていたことだ、私に玉座は相応しくない」


その言葉に、何かを悟ってしまったような彼の声色にメイリアーデはハッと顔を上げる。

グッと抱き着く力を強めるが、反対にオルフェルの力はどんどんと抜けていく。

そんなことなどないと声をあげかけたメイリアーデを遮るよう、オルフェルがメイリアーデの腕を自身から外していく。

このままだとオルフェルがいなくなってしまうのではないか。

そんな恐怖に駆られ、メイリアーデは焦って抵抗する。

しかしメイリアーデに向けて「もう良い」と再び声にしたオルフェルの表情にメイリアーデは絶句した。

その目に色はなく、力が宿っていない。全てに失望した彼の無気力な表情に、自分達がどれほどオルフェルに期待をかけ苦しめていたのか知った。


もう、オルフェルの心を引き上げることは出来ないのだろうか。

自分はオルフェルを苦しめるだけ苦しめて、迷惑ばかりかけて、ここぞという時に支えられない。

引き留めるように強く抱き着くその手の感覚だって、鈍くなって遠く感じる。

でも。それでも。

メイリアーデはぼろりと零れた涙を隠さず、オルフェルを見上げる。

睨みつけるように強い視線で再び力を振り絞ってその腕に縋った。


「私はっ」


「どう、か、そのようなことを、仰らないで下さい……オル、フェル……殿下」


しかしメイリアーデの反論はそれ以上続かない。

メイリアーデを遮ったのは、恐ろしく弱々しい声だ。

メイリアーデでなければ拾えなかっただろうその声の主はうっすらと目を開き、視点も定まらないままにそれでも必死に口を開いて声をあげる。

視線をナサドに向けたのは、メイリアーデだけではなかった。

オルフェルもイェランも驚いた様子でナサドを見つめている。



「どのような、貴方様でも……私にとって、殿下は尊敬するお方、です。オルフェル殿下のようなお方、にお会いできて私は本当に、光栄、でした」


「ナサド、そなた体は」


「オルフェル殿下を、慕い愛し、王となられる姿を楽しみにする者は、多く、おり……ます。イェラン様も、メイリアーデ様も、おそらくはアラムト殿下も、勿論私……も。どうか、どうか、貴方様は貴方様らしく……私は、心より貴方様を尊敬して」


「ナサド、もう良い。もう良いから休め」


「オルフェル、殿下。私のせいで、お心を痛めてしまったのならば、申し訳ございません。ですが、私の忠誠は」


「もう良いから!」



オルフェルの体がその場に崩れるように地につく。

共に崩れたメイリアーデは、グッとオルフェルの腕を強く掴んだまま。

ぽたりと、メイリアーデの手に何かが落ちた。

透明な、雨のような雫が2回ほどメイリアーデの手に落ちる。

見上げればそれは、オルフェルの目からこぼれた涙だ。

「オル兄様」と声をあげるメイリアーデ。

オルフェルはメイリアーデの手に手を重ねるとグッと歯を食いしばり再び立ち上がった。



「……我にまだ忠誠を誓える者はいるか」


メイリアーデに背を向け、イェランやナサドからも背を向けオルフェルは声を上げる。

凛とした、いつもと変わらない張りのある声。

呆然と様子を眺めていた兵達の数名が少しの間の後顔を引き締めその場で膝をつく。

「誓います」と声が上がったのはどこからか。

その声はやがて広がり、少なくとも現場に残っている人物の半数近くが臣下の礼を取った。

その輪をただただ呆然と力なく見つめていたのはリンゼルだ。

オルフェルを見つめ、兵達を見つめ、そうして顔色を失くしその場に留まる。



「リンゼルを捕らえよ。王宮より兵が来るまで決して逃がすな。今件に関わった者も、例外なく処分する。逃げたければ逃げるが良い。ただしその場合二度と龍国の地は踏めぬものと心得よ」


「……っ、はっ」



落ち着き払い淡々とした声。

そこに怒りも悲しみも見えない。

それでも握りしめるその手に、いまだ割り切れていないだろうオルフェルの葛藤を感じる。

だが、もうオルフェルの口からは弱音も怒りも一切こぼれなかった。



「リンゼル、いかなる理由があろうともそなたの行いは許されるものではない。重い罪を覚悟することだ」


「…………」


「……どこで違えてしまったのだろうな、我々は」



重く響くその言葉を最後にオルフェルはリンゼルに背を向ける。

長兄が向かった先は、イェランとナサドの元だ。

意識を再び落とし眠るナサドをじっと見つめ、それから視線を上に戻す。

視線の先にいたのはスワルゼ家の次期後継者であり、現在のオルフェルの専属従者であるルドだ。

この時ようやく初めてメイリアーデはルドがこの場にいることに気付く。

沈痛な表情をし顔を色白くさせているルドは、その場で膝を付き頭を深く下げたまま決して上げない。



「……スワルゼの犯した罪は重いぞ、ルド」


「承知して、おります」


「次期当主として、どう責任を取る」


「我々一族の龍貴族位の返還を。それでも足りぬと仰られますならば、一族皆の処刑を。私共の生殺与奪の全てをオルフェル殿下ならびに龍人様にお預け致します」



ルドの言葉にメイリアーデは息をのむ。

龍人族の姫を誘拐し、操ろうとしたこと。

無関係のナサドにその罪をなすりつけようとしたこと。

それらは決して軽く済むようなものではない。

下手をすれば国が潰れるかもしれないほどの騒動だ、どれほど広い範囲でこの計画が進行したのか分からないが少なからずスワルゼ家が軽くない罰を受けるのは間違いないだろう。

話の前後や今のルドの態度から察するに、おそらくルドは今件にほとんど関わらずどちらかと言えばナサドやメイリアーデを助けるために動いた側なのだろう。

それでも罪を犯した者が一族内に複数いる以上、関係ないからで済むような問題ではなくなってしまっているのだ。

長く続いたスワルゼ家は終わりに近づいていると言っても過言ではない。


どうしてこんなことを。

あまりに無謀で、リスクが高く、そして成功率も高いとは言えない。

すぐに疑われ事実が公になることなど分かりきっていただろうに。

やっとそこまで思考が戻ってきたメイリアーデは、抵抗することもなく拘束されていくリンゼルや訳が分からないままにナサドを罵倒しているルイに目を向け俯く。


“お前ら龍人の怠慢が今回の事件を起こした”


ザキの言葉がメイリアーデの中に響いて苦い気持ちになった。

中途半端は許されない。上に立つ以上は自分達が是と言えば是と、否と言えば否と言わしめる存在となれ。

そうしてメイリアーデを叱ったザキの言葉が、ここでやっと浸透したのかもしれない。


ナサドを傷付けられた怒りで周りが見えなくなっていたメイリアーデだが、その原因をそもそも作ってしまったのはおそらく自分達龍人だ。

リンゼルがメイリアーデに吐き出した言葉の中には、きっと見逃してはならないものが多々ある。

リンゼルを許せるかと聞かれれば否だろう。何があろうと彼の行いを肯定は出来ない。

しかし、そこまで追い詰めたのもまた自分達だ。

彼らの心の悲鳴に気付かず、知らぬ間に不信の種を植えてしまった。

おまけにここまで来てもなお、メイリアーデにはリンゼルがそこまでのことを起こした理由がはっきりと理解できていない。彼らがなぜそこまで権力に固執するのか、分からぬままだ。

そのようなところもまた、彼らの恨みを増幅してしまったのかもしれない。

そしてそんな状況で彼ら相手に中途半端な接し方をしたところが自分になかったかと聞かれれば自信などない。

良い顔をして大事なところからは目を背け、そうして今回の事件が起こったのだ。

加担した数が多いのは、それほど龍王家に対する不満が高いという証拠だろう。


理不尽だと思う心は確かに存在する。

どれほど誇り高くあろうと志したところで、メイリアーデも人の心を持っているのだ。

誰も願ってこの立場に立ったわけではないと、そんな我儘が口から出そうになることだってあった。

権力争いは醜く、自分達の言動が全て勢力争いに直結し、息が詰まりそうで仕方ない。

どうしてそう自分勝手に欲を自分達にぶつけてくるのかと、憤ったことは一回や二回ではないのだ。

けれど、それでも人の上に立っている以上、そのような言い訳は通用しない。

それが身分と言うものだ、傅かれる立場ならばその分それに相応しい自分でなければこうして剣が向けられる。

王族というのは国を、国民を守るのが使命だ。国民達に出来ないことを成し、いざとなれば矢面に立って彼らを守らなければならない。そのために様々な特権が与えられている。

それがいかに高位種族とされる龍人族だからと言えど、人間との共存を選び守ると決めた以上例外などない。


自分の口からこれまで出てきた言葉は、ザキがメイリアーデを叱ったように綺麗事ばかりだ。

苦しんできた者からすれば、身内をかばい綺麗事を並べるだけで対策もとれないメイリアーデを憎々しく思うだろう。

どれほど志を高くと意識したところで、メイリアーデがやってきたことは身分を持つが故の傲慢だったのかもしれないとやっと自省の念が湧く。

それすらナサドの無事を確認でき自分が安全な状況になって初めて実感したことだ。散々自分のことを未熟だと言いながら、その意味を自分が一番理解していなかった。

目の前の重い空気から目もそらせず、ただただメイリアーデは唇を噛んで座り込む。



「……現実が見えたか、ガキ」


声をかけてきたのは、自分より何千年もの経験値を持つ神の眷属。

慰めの言葉もなく真っすぐと告げてくれたことが、今はありがたかった。

声も上げられずただ頷くメイリアーデに、ザキは小さくため息をつく。



「お前は歳の割には聡いし覚悟も度胸もある。が、まだまだ足らん。お前が……、お前らが、人の上に立ちたいと願うならば」


「……はい」


「まあ、嫌いではないがな。お前が言った甘ったれた考えも、土壇場だろうが綺麗事を口にできるその志も。お前のその言葉や思考で救われる者がいるのもまた事実だ」



あれほどさっきは厳しい言葉を吐いたというのに、今度は慰めるようメイリアーデに告げるザキ。

思わずメイリアーデの顔からこわばりが解けて緩く笑みが浮かんだ。



「どっちですか。中途半端は許されないって言ったの、貴方ですよ?」


「俺別に今は人の上に立ってねえし。ただの経験談だからな」


「……勝手な人だなあ」


「人間なんだから当然だろうが」



見た目や語気から受ける印象ほどザキはきっと乱暴な人ではないのだろう。

想像以上に繊細で迷いやすく、そしてお人好しなのかもしれない。

勝手なことも気まぐれなところもあるようだ。

それは何だか人間らしく、自分と何ら変わらないようにも思えた。



「俺達が何年かかろうが答えなんて見つかってないんだ。それでも俺やお前のような立場である以上は、何らかの軸は見つけなければならん。たとえそれが誰かの願いを踏みにじるものでもな」


「ザキ、様」


「迷え、苦しめ。そこから出した答えを示しな。お前が愛し尊敬する、あの兄貴のようにな」


お疲れと、そう言ってザキはメイリアーデの肩を叩く。

その言葉に背を押されるようメイリアーデの視線はオルフェルへと向いた。

苦しみ辛さをさらけ出し涙すら見せた長兄は、それでも歯を食いしばり立ち上がる。

自分が王には相応しくないと言いながら、それでも王太子であろうとする。

ナサドに、自分をまだ信じてくれる者に応えようとしているのかもしれない。

真意は分からないが、オルフェルが崩れたのはほんの僅かな時間だった。

今はもう背筋をしっかりと伸ばし、今回の事件を収束させようと動いている。

人を傷付けてばかりだと、そうオルフェルは言った。

しかし少なくとも彼はいつだって誰かを守ろうと行動できる人だ。

苦しもうとも自分で判断しこうして実行している。


対して自分はどうだろうか。

誰も守れていないのは、むしろ自分の方ではないのか。

ナサドを守れる自分になりたい。

そう思いながら、しかしメイリアーデの方こそ誰ひとりとして守れていないのだ。

家族の心すら動かせず、むしろ守られてばかりだ。

メイリアーデが守りたいと願い続けるナサドは国のために多くを犠牲にしてきた。複雑な立場に身を置いてなお彼の心は揺らがない。傷付き意識を失いかけても、真っすぐ龍人を敬い守ろうとナサドは動く。

そのような男に自分は今まで一体何ができただろうか。心はすぐに揺らぎ、未だ自分を支える足は細く軟弱だ。


覚悟をしたつもりでいた。守ると誓ったつもりだった。

しかしまだまだ足りない。

そう痛感したメイリアーデだった。




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