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お年頃娘の質問

05


 瞳が選んだ映画とは、国民的な人気を誇る女の子向け変身ヒロインアニメの劇場版だった。

 2004年に始まって以来、14年続いているシリーズだ。

 ヒロインたちの可愛さ、美しさはもちろん。

 単なる児童向けアニメにとどまらないドラマ性もあって、親子でも楽しめるものとなっている。

 

 『みんなー!ミラ○ルライトを振って応援するんやー!』

 スクリーンの中の妖精の呼びかけに応じて、客席で無数のライトが振られ、怒濤のごとく応援の声があがる。

 「「「プリ○ュアー!がんばれー!!」」」

 「がんばれー!」

 水琴もすっかり気持ちが乗ったらしく、ぶんぶんとライトを振って応援している。

 これこそが、劇場版の見せ場であり、もっとも盛り上がるところだった。

 中学生までの入場者にプレゼントされるライトを振って、ヒロインたちを応援する。

 もとは、すぐに退屈してしまう子供に映画をうまいこと楽しんでもらうために考えられたアイディアだ。

 が、もはやそういう理屈を越えて、劇場版のイベントのひとつになりつつある。

 観客たちがライトを振りながら一斉に応援する光景は、感動、圧巻のひと言だった。

 (いやあ、うわさ通りだなあ)

 瞳は素直に感動していた。

 水琴を挟んで座る龍太郎も同じようだった。

 「がんばれーー!」

 何はともあれ、映画館に入るまでどこか遠慮しているようで大人しかった水琴が、目を輝かせてヒロインたちを応援している。

 その姿に、瞳は嬉しくなるのだった。


 「いやあ、すごかったな。

 視聴者参加型っていうのかな…?」

 「ははは。子供のエネルギーってものすごいですからね」

 映画館から出た後も、瞳と龍太郎はまだ熱気がさめやらない感じだった。

 とにかく、子供たちの応援のエネルギーがものすごかったのだ。

 「どう水琴ちゃん、楽しかった?」

 「うん!楽しかったあ!」

 水琴が満面の笑みで答える。

 (なんだ、こういう表情もできるじゃない。

 可愛いな)

 瞳は思う。

 水琴は確かに美少女と言えたが、どうにも表情が固かったのだ。

 人見知りするのかも知れない。

 あるいは、おじとはいえ龍太郎に手間を取らせている負い目を、子供なりに感じているのかも知れない。

 花が開いたような水琴の可愛い笑顔に、瞳もつられて笑顔になる。

 ほっとして、幸せな気分だったのだ。


 「ねーね。

 瞳おねーさんは龍太郎にーちゃとケッコンするの?」

 「ぶっ!」

 お茶にしようと立ち寄ったカフェ。

 水琴の唐突な問いに、瞳はカフェオレを噴き出しそうになる。

 「ごほごほ…。

 水琴ちゃん…どうしてそういう話になるの…?」

 瞳はむせながらなんとか問い返す。

 「だって、おねーさんがにーちゃの奥さんになったら水琴うれしいの!」

 ほっぺたにパフェのクリームをつけたまま、水琴がキラキラな笑顔で答える。

 (なんだかなつかれたみたいね…。

 でも、話が飛躍しすぎでしょ…)

 瞳は言葉に詰まってしまう。

 別段龍太郎と結婚する予定はない。

 だが、それをはっきりと言ってしまうのも申し訳ない気がした。

 「にーちゃはどうなの?

 おねーさんとケッコンしたくないの?」

 にわかに水を向けられた龍太郎は、瞳と顔を見合わせる。

 (あの…まんざらでもないって顔されても…)

 瞳は困惑すると同時に、顔が赤くなっていくのを感じる。

 龍太郎はイケメンだし仕事もできる。

 人格的にも好人物だ。

 好意を向けられているとしたら、女として悪い気はしないのだ。

 「秋島君と結婚か…。

 そうしたいけど、競争相手が多いからなあ」

 龍太郎はそんな返答をする。

 (ちょ…そんなことここで言わなくても…)

 瞳は内心で慌てる。

 最近妙ななりゆきで突然モテ始めてしまっただけで、別にモテたいわけではないのだ。

 「やっぱり」

 水琴が我が意を得たりとばかりに目を丸くする。

 「瞳おねーさんきれいだし優しいし、モテるよね。

 でもでも、にーちゃだっていい男だよ。

 素敵なお婿さんだと思うの。

 おねーさん、そう思わない?」

 またもキラキラした笑顔で、水琴がとんでもないことを聞いてくる。

 おそらく、水琴は龍太郎のことがおじとして好きだし。幸せになって欲しいと思っているのだろう。

 だが、それだけに瞳には怖ろしく答えにくい質問だった。

 「た…たしかに龍太郎さんは素敵な男性だとは思うよ…」

 そんなあいまいな返答が精一杯だった。

 「よかった。おねーさんもそう思うんだ」

 水琴はまた花が開くような笑顔になる。

 そして、この話題についてはそれ以上追及してこなかった。

 だが、瞳と龍太郎はその笑顔にいろいろと含むものを感じるのだった。


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