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乙女症候群

 風呂上がり、ボクはソファーに仰向けになって寝転びながら、スマホでゲームをしてた。


「・・・・・・ちゃん」


 ・・・・・・・・・・・・はぁ。


「ヒカルちゃんってば!」


「んぁっ!?ひゃい!」


「どうしたのよ、ぼーっとして。キャラ死にそうになってるわよ?」


「え?うそっ!?」


 ボクは跳ねるように飛び起きて、慌ててスマホの画面を見ると、ボスキャラと戦ってるボクのキャラは、瀕死の状態になっていた。


「ひゃあああ、死んじゃう死んじゃうぅっ」


 回復のアイテムをポチポチ連打して何とか息を吹き返す。


「あらあら、らしくないわねぇゲームしながらボーッとするなんて。なにかあったの?」


 優が後ろから画面を覗き込みながら、ボクのことを抱きしめてくる。

 ふわぁー落ち着くなぁー。


「ひょっとして焼肉屋さんでなんかあった?」


「ま、まあ例の如く隊長さんたちがねー・・・、まあ正臣が来てくれたお陰で上手いことケリがつけられたけどね。正臣に行くように、優が言ってくれたんでしょ?ありがとね、助かったよ」


「ふふ、どういたしまして♪じゃあ鷹山くんとなにかあったの?」


 その問いに、不覚にも体がピクンと反応してしまう。


 わずかな反応だけど、密着してる優に気づかれない訳がない。

 

「・・・なにがあったの?怒らないからゆってみ?」


 優がボクの右肩にアゴを乗せて、耳元で優しく囁いてくる。

 ん・・・くすぐったいようなゾクゾクする感覚が背筋をかけ登ってくる。


「ふぁ・・・と、特にね、これと言って何かがあったわけじゃ無いんだけどね・・・」


「けど?特にないけど何かがあったのね?いいから話してみて?楽になるかもよ。ヒカルちゃんが元気ないのは、私がちょっとイヤかも」


 甘い声でそう言いながら、今度はボクの耳を甘噛みしてくる優。

 ちょっ!リビングでそゆことしちゃダメでしょ!?声が出ちゃったらどうすんの!!

 まぁでもボクがどことなくおかしいのは気付かれてるんだろうなぁ。


 ボクは観念して全て話すことにした。夫婦だからね。




「・・・・・・とまあそんな感じなんだ」


「なるほど・・・鷹山くんにドキドキねぇ・・・」


 優は顎に手を当ててしきりに何かを考えてるみたい。

 ボクは焼肉屋での一件や、最近会社で何となく正臣を目で追ってしまうことなんかも正直に話した。

 優は看護師だけどカウンセリングの資格も持っているから、冷静に分析してくれてる。


 そうやってしばらくブツブツ言っていたかと思うと、ボクの頭の上のほうに呼び掛ける。


「エレスいるわよね?」


『なんでしょうか、奥さま』


「ちょっと聞きたいことがあるけどいいかしら?」


『答えられる範囲であれば何なりとご質問ください』


「ヒカルちゃんって子供とか作れるのかしら?」


「ブッ!いきなりなに聞いちゃってるのさ!?」


「あら、大事なことよ?」


『奥さま、ご主人様は子供は作れないと思います。内臓にその機能が備わっていませんので。ご主人様の体は前に沖縄で分解されたときに、ご主人様が再構築されたのですがその時も一度は男として再構築しました』


「ふむふむ」


 確かに一度は男に戻れたんだよねぇ・・・10分位だけど。


『そして、その後お母様によって今の女の子ボディに戻されたのです』


「なるほど、お母様グッジョブね!」


 ええー、少しは男の体がいいって思わないのー?


『つまり今のご主人様の体は女の子の形をした男の体(一部除く)なのです。だから内臓部分はどちらかと言えば男性に近いですね(2つの塊除く)』


「ふーん・・・」


「ちょ、ちょっと何その()の中の一部って!!」


『え、やだ・・・ご主人様ったら私の口から言わせたいんですか?そう言うプレイもちょっと憧れちゃいますけど・・・良いですよ言っても。一部除くの一部とは、オチn』


「わーーーーかった!!もうわかったからっ!!!」


 あぶなー何ポロっと言おうとしてるの?


『えー言わなくて良いんですか?』


「まあ、アレよね?俺がアイツでアイツが俺で!?俺に無くてお前に在る!?的なヤツでしょ」


『・・・まあ、そう言うことです』


 エレスさん、ちょっと不満そうなのなんで?ねえ?


「そう言えば友里は見たって言ってたわねぇ・・・」


 ぬるりとした殺気が優から漏れ出す。


「ちょちょちょっ!しょうがないよ!?アレは不可抗力だよ!?」


「んもう、わかってるわよ。ただちょっと久しぶりに・・・ね?」


 ね?じゃないよ、ね?じゃ・・・久しぶりに何するつもりだったのさ。


『まあ、お母様にとって無駄な突起物はズバッとですね』


「男のシンボル的なモノを無駄って言わないでよっ!」


 しかもズバッとどうしたの?え?まさか切られ・・・こわっ!!


「まあ、冗談はそこまでにして次の質問ね?」


「え?今までの冗談だったの?結構心にダメージあったんだけど?」


「ヒカルちゃんのことは取り合えず置いといて」


「・・・・・・・・・・えー・・・」


「だって、そこが重要な部分じゃないのよ。エレス、ホルモンとかそう言ったものはヒカルちゃんって必要ないの?」


『ええ、当然必要ありません。ご主人様の身体は結局のところ生物のようで、これっぽっちも生物ではありません。むしろ99%は無機質なのでホルモンとか全く必要ありません』


「1%だけ有機質なの?」


『ひょっとしたら再構築の際にダニとかそう言ったものが紛れ込んでる可能性も無きにしもあらずなので』


「・・・なんかその1%を今すぐにでも排除したいんだけど」


「まあ取り合えずダニとかどうでもいいわ」


「・・・・・・ぇー・・・」


「ホルモンも関係ないとなると、いよいよもって精神的な問題になるわね。ヒカルちゃん、正直に答えてね」


 優はそう言うと真剣な顔でボクと鼻がくっつく位まで、ずずいっと近付いてくる。


「う、うん。わかったよ」


 一体何を聞かれるんだろう。


「ヒカルちゃん、鷹山くんとシたい?」


「・・・・・・はい?」


「だーかーらー鷹山くんとエッチな事シたいかってこと」


 ポクポクポクポクちーーん。


 ボクの脳内で小坊主さんが人差し指で頭クリクリしながら考え込んでる絵柄が浮かんできた。


「・・・・・・ない、ないわー。普通の人よりは無くないけど、それでも正臣とエッチとかないわー。うわーサムイボ立ってきた!毛穴無いのに!!」


「全然シたいと思わないの?」


「思わない思わない、今言われるまで全くそんなこと考えたことなかったー、あー気持ち悪いー」


 ボクは擬似的にとは言え立ってしまったサムイボを擦って消そうと頑張る、うーカユカユぅ。


「となると、アレねヒカルちゃん」


「どれ?わかったの?」


「恐らく"乙女症候群(シンドローム)"ね、きっと」


「乙女・・・なにそれ?」


「まあ実際病気じゃないんだけどね。例えば男の子でもゲームでギャルゲーってやるじゃない?自分が女の子になってアイドルとか、寮で一緒に住んでる男の子とか、クラスの男子を攻略して落とすやつ。アレをしてる状態だと思うのよね、今のヒカルちゃんって」


「ふえ?そうなの?」


「ほら、ヒカルちゃんって生き返ったら突然女の子になっちゃってたじゃない?」


「う、うん」


「で、なったばかりの頃って結構敵が出てきて忙しく戦ってたりしたじゃない?」


「うんうん、戦ってた!結構番外編的にも戦ってた!!」


「でしょ?だけど最近敵も静かになっちゃって、おまけにアイドル活動みたいなのもして、自分の可愛さとかそう言うの再認識しちゃったじゃない?」


「う、うん、そうかも?」


「そうなると今の自分の立場と言うか取り巻く環境を、ゆっくりと考えちゃうわよね?あれーなんだか、私ってばモテモテなの?みたいな」


「あー・・・そう言う感じあったかも」


「その環境こそ!まさにギャルゲープレイヤー状態なのよ!」


「はーそうなんだー・・・」


 余りの理論にまだ思考が追い付かないけど、ちょっと納得できる部分もあるかもー。


「例えば、男性と話したりするとき、何気にあざとく可愛さアピールしてしまうことがある」


「・・・・・ある」


 ボクめっちゃ上目使いとかしてたかも。


「例えば、ちょっと自分に興味なさそうな人でも振り向かせてやるぞ♪みたいに思うことがある」


「・・・・・・あるっ」


 お客さんとかにめっちゃアピールしてちょっかいだしてたかもっ。


「例えば、同僚や、会社の上司の世話を必要以上にしたいときがある」


「ありまくるぅっ!」


 だってなんか部活のマネージャーみたいで楽しかったんだもんっ!


「確定ね!ヒカルちゃんは"乙女症候群"にかかってるわ!もう完全にモニターの前でコントローラーを持って、選択肢の中から自分の行動を選ぼうとしてる状態よ!」


「な、なんてこったぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 ボクは床に手をつき正に「orz」の状態になってた。


「まあよかったわ、鷹山くんに本気じゃなくて。抱かれたいとか言われたら色々大変だったかも。主に鷹山くんが」


 あれーなんか正臣がこの世から消される運命?


「う、うん。なんか客観的に見たらボクの行動って、色々キモいし恥ずかしい・・・」


「いいの、ヒカルちゃんは一気に色々あって大変だったんだもの。身体と心のズレって結構根深いものがあるのよね。でもヒカルちゃんが守護者ガーディアンで有る限り、お母様がきっと男の身体には戻してくれないだろうから、私が生きてる間はきっと諦めるしか無いわね・・・デュフッデュフフフッ」


「途中まで良いこと言ってたっぽいのに、最後の変な笑いで台無しだよ!」


「えーだって変な話してたから色々我慢できなくって♪あ、ヒカルちゃんお風呂はいりましょうそうしましょう」


「え、ボクさっき入ったばっかり・・・」


「いいからいいから・・・エレス OFF」


『ごゆっくりどうぞ、おやすみなさいませ。プツン』


「ええええ!?エレス?エレース!?」


「ウフフフフフフフ・・・・・」




 ボクは優に為す統べなくズルズルとお風呂に引きずられていくのだった・・・。



アーーーーーーーーーーッ・・・


ご心配おかけしちゃったかもですが、男同士のカラミなんて絶対書きませんよ?


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