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イベント会場の攻防 その4

すいません、タイヤ交換の時期で忙しくて合間合間に書いてたら、だいぶ空いてしまいました。

 会場でキャストオフしたことにより、その素顔が露になったルディアに、武装した信徒達に囲まれているのも忘れて、観客たちが騒然となる。


「あの子ってPVに出てたロボッ娘?」

「でもちっちゃいぜ?」

「でも顔とか綺麗だよ?作り物みたいに」


 いくら機械に合体してなくても、顔がそのままなので何度も繰り返しPVを見てくれたファン達には即バレである。


「なんだ貴様、鎧を脱いだら強くなるのか?傷つけられるのが嫌なら大事に金庫にでもしまっとくんだな!」


『そうヨ、だかラ傷がつかナイようにチタンとかデ造って欲しかっタのヨ。でもネ、アレは姉さんガ私の為二造ってくれタ一点モノなのヨ!大事に決まってルじゃなイ!!とうっ!!』


 そう言ってステージ上から格好よく飛び降りたルディア。


 ガッシャン『あいタッ』


 そして、着地で失敗してコケた。


「あールディアってば怒りのあまり自分の運動神経の無さを忘れたな・・・」


「ええ、やっぱりルディアって運動音痴なの?うすうすそうじゃ無いかなぁとは思ってたけど・・・だってリズムゲーとかめっちゃ下手くそなんだもん」


「前に飛行機から飛び移ろうとした時も、足滑らせて落っこちたからねぇ・・・」


 ステージから飛び降りたつもりで落ちたルディアは「イタタ・・・」と言いながら起き上がる。

 信徒達はそんなルディアを見下ろすように取り囲んだ。


 それぞれ手には鉄パイプやら木刀などを持っており、ルディア大ピンチである。


「オラ、早くロボットになってみろよ」


 そう言いながら手にした鉄パイプでルディアを軽く小突く。


『あうっ!痛いじゃなイ!!私は機械がナきゃ大きくなれナイのヨ!』


「ぷははっ!コイツ自分で弱点喋ってやがる!ばっかじゃねえの!?」


 取り囲んだ信徒達は、大声でゲラゲラと笑い出す。


「ね、ねえヒカルちゃん。ルディアってひょっとして機械がないと弱いの?」


「うーん、まあ多分普通の一般人よりも弱いかもー、頑丈だけどね」


 信徒達に囲まれて馬鹿にされたルディアは、ちょっと半泣きになっている。


『うぅー機械さえアレば、あんた達ナンて、ブっ飛ばしテやるの二・・・』


「あーん?ポンコツ様がなんか言ってるなぁ?」


「おもしれぇ、オラ機械ならこれでもいいんだろ?ぶっ飛ばしてみろよ?」


 そう言いながら信徒の一人が近くの観客の男の子から奪ったスマホを、ルディアに投げる。


「ああッボクのスマホ・・・!」


「いいじゃねぇか、ちょっと借りるだけだよ、なんか文句あんのか!?」


「い、いえ・・・」


 ルディアは、渡されたスマホの画面をじっと見る。その待受画面は、合体したルディアが堂々と映っていた。


「はやく、ヤってみろよ、オラぁっ!」


 信徒の何人かがルディアを手にした武器で殴り付けると、会場内にガィンッという硬質な音が響き渡る。

 

『いったーーーーイ!!あんた達女ノ子に暴力振るっちゃいけナイって親かラ教わんナかったノ!?』


「はぁ!?誰が()()()だよ?女の子ってのは鉄パイプで殴っても平気じゃねえし何よりも金属で出来てねえんだよっ!」


「ははっ!どんだけ殴ったら壊れるかな!」

「ばっか!こういうのは関節狙うのがセオリーだろうがよっっと!」


 周りの信徒達にボッコボコにされるルディアは、さっき渡された男の子のスマホを庇うように体を丸めて耐える。


「おう!バール持ってきたぞ!腕とか外してみようぜ」


「ひゃははは!いいねぇバラバラにして並べようぜ」


 さすがのルディアも自分の身の危険を感じたのか、逃げようともがくが、周りの信徒達に足を引っ掛けられて転ばされてしまう。


『あウッ!!』


「どーこ行くつもりだよぉ?これからが楽しいってのに」


 小刻みに震えるルディアは恐怖に顔をひきつらせて(実際には無表情なのだが)叫ぶ。


『タッ助けてぇ!!お姉チャーーン』


 そして信徒達の目の前でガシャガシャと音を立てて、箱入り娘モードに変形する。


「ああッ!?ナンだコイツ?箱になっちまったぞ?」

「あーつまんねぇなぁいっそのこと叩き潰すか?」


 いいながら一人の信徒がハンマーを振りかぶって、思い切り降り下ろした。

 しかしハンマーは箱入りルディアを殴ることなく空振りして、信徒はその勢いを殺すことができずに転がってしまう。


「イッテてて・・・なんだってんだ・・・?」


 転がった信徒は脇に転がった自分のハンマーを見ると、柄の部分だけ残して先端から途中まで、綺麗に消え去っていた。

 箱入りルディアに目を向けると、いつからそこにいただろうか、顔が隠れるほどのサングラスを掛けた黒髪の小柄な少女が、自分とルディアの間に立っていた。

 認識出来なかったのはその信徒の男だけではなく、会場内の誰もいつからそこに少女が立っていたのか、気づくことが出来なかった。

 

「あ、あれ?ヒカルちゃん何時の間に??」


 それはすぐとなりにいたはずの友里たちですら同様だった。


「ヒカルちゃん結構怒ってたものねぇ・・・」


 優は一瞬でルディアの元に移動したヒカルを見ながらつぶやいた。


「なんだ?この女?どっから沸いてきやがった?」

「お?こいつよく見たら可愛いんじゃないか?しかも普通に人間みたいだし」

「じゃあ、教団本部で、たっぷりと教義でも教え込んでやるか?」

「おお、そりゃいいなあ!」


 ピィィィィィィ・・・・・


 空気が震えるような音が会場に響き渡り、発生源の一番近くにいた信徒達は堪らず耳を塞ぐ。


「うああっ!!うるせええ!!!」


「うるさいのはお前達の方だ」


 ヒカルから発せられた声はいつもの明るく可愛らしい声ではなく、地の底から響き渡るような迫力を伴っていた。

 信徒達は一瞬だけビクッとしたが、小柄な少女に対して自分達が感じた感情を恥じるかのように、再びヒカルを威圧し始める。


「お前この状況で誰に向かってうるさいとかいってんだ?」


 ヒカルを逃がさないように、信徒達が再び取り囲む。


 周りで何も出来ない観客たちが、先程のルディアの二の舞になるであろう少女のことを、心配そうに見つめていた。

 そして見つめていたが故に、さっきのハンマー男が空振りした理由を見ることが出来た。

 信徒達がヒカルに向かって降り下ろした武器が、ヒカルに近付くにつれ先の方から砂のように崩れさっていく、不思議な現象を。


「なっ!武器が!!」


 各々がてに持った武器を見て騒いでいる信徒達に、冷ややかな視線を向けつつ、ヒカルが変化していく。


 ショートだった黒髪は腰まで届く銀髪に、可愛らしかった服は白を基調としたバトルスーツに、顔を隠していたサングラスはバイザーにと。


守護者がーでぃあんちゃんだ・・・・」


 観客の誰かが呟く。


「本物だ・・・」

「すごい・・・映像なんかより全然すごいじゃん」

「あ、あれ?膝が・・・膝の震えが止まらないんですけど!?」


 普段のヒカルならそこまでの威圧はなかっただろう、だが今ヒカルは怒っていた。

 信徒に対しては勿論のこと、同じ人間がしている事に対して圧倒的な人数がいるにも関わらず、何もしない観客達にも。


「んな虚仮脅しに誰がビビるかよぉぉっ!!」


 先程ルディアを撃った小銃を持った男は少し離れていたため、近くにいた信徒よりも立ち直るのが早かったのだろう。

 ヒカルに向けて引き金を引き、鉛弾の雨を浴びせる。

 耳をつんざくような音と、硝煙が立ち込めマガジンの銃弾を射ち尽くした信徒が、興奮からか息を切らしながら的であるヒカルの姿を確かめる。


「ハァッハァッ!どうだ!!さすがにこれだけ浴びせりゃ死ん・・・だ?」


 信じられないものを見るような小銃を持った信徒の視線の先には、先程までと微塵も変わらない姿のヒカルが立っていた。


「な、なんでなんともないんだ??」


 ヒカルはそれに答えるかのように右手を胸の高さまで上げて、その手のひらを開く。


ゴトン!


 重そうな音を立てて、アスファルトの上に鉛色の塊が転がり落ちる。

 

「え?な、なんだそれは・・・?」


「キミがボクに撃ち込んだ銃弾だけど?あんまりに遅いから、受け止めておにぎりにしてあげたよ、返そうか?」


 男は恐怖でヒカルから目を離すことが出来なかった。出来なかったはず、瞬きもしなかった筈なのに、目の前にいたはずの少女、いや守護者ガーディアンは気付けば消え去っていた。


「はい、あーげる♪」


 男の耳元で聞こえた軽やかな声の後に、左の頬に熱い何かが押し当てられ、頬の皮膚が「ジュゥッ」と嫌な音とタンパク質が焦げる嫌な匂いを撒き散らした。


「あっちぃぃぃぃっ!!」


「そうでしょ?あっついよね?痛いよね?じゃあそんなもの他人に向けちゃいけないってわかったよね?」


 ヒカルはバイザーを半透過にして男を真正面から見て、子供を諭すように言った。

 

「う、うん・・・ごめんなさい」


 男はそんなヒカルの顔から目を離すことも出来ず、その口からは素直な謝罪の言葉が出た。

 ヒカルの目は妖しく魅了チャームの光で煌めいていたりするのだが。

 

「よく言えました。じゃあご褒美ね」


 ヒカルの体の色が青色に変わっていき、水の精霊力を宿す。そして男の火傷した頬にそっと触れ、するりとその顔を撫でるように動かす。


「あ・・・痛くない・・・」


 ヒカルは男の体の中の体液を操作して、出来たばかりの火傷を負った皮膚の治癒力を高める。


「ふふ・・・もう悪いことしちゃダメだよ?」


 男の顔にあった火傷は、それを作ったヒカル本人の手によって、一瞬で治されてしまった。


「め、女神様だ・・・」


 男はヒカルに膝間付き、両手を顔の前で組み合わせて祈り始める。

 何故かその奇跡を目の当たりにした周りの観客達も同じ様に祈り始める。


「ボクは女神なんてモノじゃないよ?母なる地球を守るための存在だよ。そんな不確かな神様なんかに頼らないで、ね?」


「は、はい。守護者ガーディアン様・・・」


 ヒカルは心の中でニヤリと笑う。


(ふふー、まずひとーり・・・)


 一度はめっちゃ怒ってたヒカルなのだが、実は怒るのあんまり得意ではないので、途中から冷静になってしまい、ほとんど演技で怒っていたのだった。

 そして思ったのだ、どうせならこの人たちみんな落としてしまえばいいんじゃないかと。


 だが他の信徒達が、そんな寝返ってしまった自分の仲間を見て面白いはずがない。

 

「おい!アイツおかしな洗脳攻撃してくるぞ!気を付けろ!!」

「目だ!目を見たらやられるぞ!」


 ボクはメデューサか何かか、とヒカルは苦笑いする。


「お前ら守護者ガーディアン様に何て事を言うんだ!!」


 そしてそんな信徒達のヒカルに対する暴言を、成り立ての言ってしまえば守護者教とでも言えばいいのだろうか、彼等が黙ってるはずなかった。

 目の前に信じるものがいる彼等は、めっちゃ強気だった。

 しかも信徒達のの中にも、さっきの男以外にすでに寝返ってる信徒が、何人か混じって「そうだそうだ!!」とか「守護者がーでぃあん!守護者がーでぃあん!!」と叫んでいるのを見て、ヒカルは思った、こいつらチョロいと。


 ヒカルは一人の男をチラッと見る。


 おそらく最初から偉そうに指示を出してるあの男さえどうにかしてしまえば、周りにいる観客達に被害を出すことなく解決できるだろうと考えた。


(なんかもう少し奇跡みたいな・・・ん?これは・・・エレス、ルディアに接続つなげられる?)


(『接続つなげてどうするのですか?』)


(いや、一応ルディアもこのままじゃ腹の虫が収まらないだろうと思ってね、あの子が召喚んだモノもそろそろ到着するっぽいし)


(『到着・・・?ああ、なるほど。負けず嫌いなあの子が黙ってるわけないですね、接続つながりますよ』)


(『おーい、ルディアー?』)


(『なっ、なにヨ!居たなラもっと早く出てきなサイヨ!!』)


(『いやいや、こんな騒ぎにならなきゃ出るつもりなかったし。だって内緒にしたかったんでしょ?なんでかは知らないけど』)


(『だ、だっテ驚かせたかっタんだもん。友里が驚くとこトカ見たカったんだモン!いつもヤられっぱなシだかラ・・・』)


(『まったく、我が愚妹はしょうがないですね、まあ今日は可愛らしい「お姉ちゃん」が聞けたからよしとしますけど』)


(『うぅーこんナはずぢゃなかっタの二ぃ・・・』)


(『まあ、これに懲りたら黙って色々しないことだね。真理ちゃんにだってバレたら怒られるからねー』)


(『言わないデー!お願いダカラー!!あの人のウメボシ痛いのヨ!!』)


(『まあ、それは言わなくても怒られると思うけどね、主に今ルディアが召喚んだモノのせいでね』)


(『!!ば、バレてたノ?アレ召喚んでたコト・・・』)


(『ボクの耳であんだけのジェット音に気づかないと思う方がどうにかしてると思うんだけどね。でもアレあのスマホ男の子のために召喚び寄せたんでしょ?ルディアだってヤられっぱなしは悔しいもんね、今なら奴等隙だらけだからやっちゃいなよ』)


(『あ、ありガト・・・』)


(『ちゃんと手加減するんですよ?』)


(『わかっテルってバ!!姉さんは心配症なのヨ!』)



 ヒカルがそんな二人(?)の会話を聞きながら、何のかんの言っても仲いいヨねーと思いながら海の方に目を向けると、遠くの方からキィィインと甲高いジェットエンジンの音を響かせながら、銀色の機影、ルディアの愛機が近づいて来ているのだった。



 







雪が・・・皆さんもタイヤ交換お早めに。

今年は雪が多そうです。

(  ̄- ̄)

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