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メガネフェチ

久しぶりになった。スミマセン。

「最近なんだか侵略者出てこないなぁ」


 「マシンサポートタカムラ」の事務所で、社長の鷹村がポツリと言った。


「そうだねぇーまぁいいんじゃない?出てこないほうが平和でさ」


 誰ともなく発したと思われた鷹村の言葉に答えたのは、近くの事務机でパソコンにカタカタと数字を打ち込んでいる、赤と黒のツナギの作業着を着たヒカルだった。


 只今昼過ぎの2時、お腹もいっぱいになった後で、ちょっと眠気が混じり始める魔の時間帯である。

 鷹村はやることが無かったのか、誰かが買ってきて置いてある週刊誌に目を通していたようだ。

 そこには『守護姉妹特集!』等という見出しがデカデカと書いてあり、書いてある内容を読んでは目の前で働いてる美少女になってしまった後輩兼元同僚の横顔を眺める。


(今日もかわいい顔しやがって・・・)


 本人には決して言わないが、ヒカルはかなり鷹村の好みだった。街で普通に他人として会ってたら恐らくナンパして口説いたであろうレベル。

 まあ、元同僚なので自制心をフルに働かしているので、目の前にいても特に問題も起こらず、こうして一緒に働けてる訳なのだけども。

 少し前に『守護姉妹』というPVが世間を騒がして、この会社の中でもちょっとみんながソワソワしてた時期もあった。

 機械を扱ってるせいでメカフェチもこの会社には多いので、ルディアちゃんは今度いつ遊びに来るんだ?とかあの変形は重機とかでもできるのかとか、ヒカルを質問攻めにしたため、ちょっとヒカルが怒って拗ねるという騒動等もあったりもした。

 一応時間が経って、みんなも落ち着き、拗ねたヒカルは鷹村が焼肉屋に連れていき、めっちゃ高いお肉を食べさせ機嫌も治ったはずなのだが。


 今度は鷹村が落ち着かないことになっていた。


(くっそぅ・・・たかがあれだけの事でこうも気になっちまうとは・・・)


 またちらっとヒカルの事を見る。すると今度は気づかれていたのか、じーっとヒカルも鷹村のことを見ていた。


「なに?さっきからチラチラ見てるけどなんかあるの?」


 ヒカルが鷹村のことを少し怪しげに睨んでいる。


 ()()()越しに。


「う・・・い、いや別に何でもねぇよ」


「なんかあるならハッキリ言ってよね。気になっちゃうだろ」


(やべえ、ちょっと怒った感じがまたなんとも・・・)


 可愛らしい顔をちょっとむぅっとさせて睨んでくるヒカルを見て、鷹村の心臓はばっくんばっくんしていた。


「な、なあ?なんで最近メガネかけてるんだ?」


「んー何となく変装も兼ねてかなぁ、髪の毛の色とか長さとか違うし、PVの中では顔出しはしていないからだいじょぶだとは思うんだけどねー、会社に迷惑かかるのも嫌だしね」


 ヒカルはそう言って少しメガネをずらし上目使いにイタズラっぽく鷹村に笑いかける。


「そ、そうか、そういう理由なんだ」


 そんなヒカルのあざとい仕草にドキドキしつつ鷹村は平静を装う。


 もうお分かりだろう。鷹村正臣はメガネフェチである。決してメガネだけが好きなわけではない。メガネをかけた女性を見ると何故かドキドキしてしまうのだ。

 幼少時、近所に住んでた仲の良いお姉さんがメガネっ娘だったせいなのだろうか、それとも大学受験の時に、親がつけた家庭教師がちょっときつめのメガネ女子大生だったせいなのだろうか。

 いずれにしても深い業を背負ってしまったものだと、鷹村自身も認めていた。

 昔は、少しエッチな本とか、いわゆるアダルトな媒体等もかなりメガネ系統に偏ったところがあったのだが、最近では大分成りを潜めたのか、そこまで気にならなくなっていたのだが。

 ここに来て自分の側にいるめっちゃドストライクな美少女の元同僚がメガネをかけたことにより再燃してしまったらしい。


「どうしたもんかなぁ・・・」


 ふぅーと溜め息をつきつつ独り言のように呟く。


「んー侵略者のこと?それともPVのこと?」


 そんな独り言もきっちり聞こえてしまったらしい。


「ま、まあ侵略者のことかな、あれって出てこなくなったらどうなるんだ?ヒカルちゃんはお役御免で守護者ガーディアンから解放されんのか?」


 んー、とちょっと考えるヒカル。そんな姿でも萌え死にそうになってる鷹村。


「わかんないけど、1000年以上前から戦ってるものが、たかだか数ヶ月来ないからって、もう来ないなんて事にはならないと思うよ?それに解放されたところで男に戻れるのかっていったら、それも多分微妙だしね」


「ヒカルちゃんは男に戻りたくないのか?」


「んー戻りたいか戻りたくないかって言ったら、そりゃ戻りたいとは思うけど、この体の便利さとかは捨てがたいものがあるし、嫁さん達もなんだかこの姿でいて欲しそうだしね」


「ヒカルちゃんはそれでいいのか?」


「まあ、ボクがより一層優の好みになっただけだからねー、別にいいんじゃない?特に支障はないしネ」


「でも、ほらたまにはさみしいなーとか思わないのか?特に付いてたものが無い・・・とか?夫婦生活とかさ」


 少し頬を赤くしてヒカルが鷹村を睨む。


「・・・もぅ、そういうこと言うのってセクハラだよ?正臣。まあボクだからいいけどさ・・・って言うか夜の生活だって普通にあるよ?むしろ優が主導で・・・」


 ヒカルは思い出してしまったのか、さらに顔を赤らめてモニョモニョしている。


「そ、それってあれか?やっぱり・・・」


「もぅ・・・正臣のえっち。教えてあげないよーだ」


 ダメだろ、メガネで、そんなかわいい顔で、そんな顔赤らめて、そんなかわいいこと言っちゃったら!!


 もう鷹村は理性がブッ飛びかけてヒカルに手を伸ばしかけてたその時。


プルルルル・・・プルルルル


「あ、電話だ。はーいマシンサポートタカムラでー・・・す。あれ?優?どうしたの?うん、うん正臣ならいるよー代わるの?わかったーちょっと待ってね。正臣、優がなんか用があるみたいだよ?」


 そういってヒカルは自分の前の電話機の保留ボタンを押して、鷹村の前の電話に回線を回す。


 ヒカルに伸ばしかけていた手をそのまま、下にあった電話機に移動して受話器を取り、赤く点滅している回線ボタンを押して電話口に出る。


「・・・もしもし、鷹村です」


 背中を冷たいものが伝っていくのが分かる。


『あ、ごめんねー鷹村くん♪ちょっとへんな事聞いていい?』


 いやな予感が止まらない。


「な、なにかな?あんまり変な事聞かれても困るけど」


『ダイジョブよぉただの確認だから。鷹村くんってメガネフェチだったわよね?』


「なっ!?なにを・・・」


 イヤな予感が確信に変わる。


『ダメだからね?ヒカルちゃん可愛いけど手を出したら・・・もぐわよ?いいわね?ただそれだけーじゃあねー』


「ひゃ・・・・ひゃい」


 鷹村は自分の股間がきゅっとなるのを感じつつ受話器を置いた。


「正臣?だいじょぶ?なんか変な顔になってるけど・・・優なんだって?なんか用だったの?」


 気になるのか、無邪気な顔で聞いてくるヒカルに


「なんでもない・・・メガネ・・・似合ってるぞ、は、ははは」



 少し震える声でそう言うのが精一杯の鷹村であった。



 ちなみに優に言いつけたのはエレスの仕業。

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