ヒカル偶像化計画 その9
「はい、じゃあ軽くカメラのテストも兼ねてリハーサルしてみましょうかー」
犬養プロデューサーの指示で、スタッフの皆さんがてきぱきと動いてそれぞれの配置に着く。
「じゃあ、ルディアさんから行ってみますか」
と犬養プロデューサーがルディアに声をかける。
『ええ、いいわよ。私を格好良く撮りなさいよ』
そう答えると、五機停まっているジェット機の方に颯爽と歩いていく。
ボクの隣で友里がその後ろ姿をジーッと見つめている。
「どうしたの?ルディアがどうかした?」
と、ルディアの後ろ姿をじっと見ている友里に聞くと
「うんとね、なんか取り繕ってるけど、ルディアめちゃくちゃ緊張してるなぁって思って」
「へ?そうなの??アレで緊張してるんだ?」
「うんうん、だって喋り方が不自然に流暢だったでしょ?」
え?まぢ?・・・ホントだ!!カタカナが混じってない!!
「緊張すると、ああなるんだー知らなかったよ」
「そうなの、あれはそう・・・ルディアがわたしにゲームで99連敗して、100敗目はルディアの大事なもの賭けようって言ったときだったわ。わたしのコンボが綺麗に決まって敗色が濃厚になった時に、丁度あんな風に流暢に喋り始めたんだよね。まあ緊張してたっていうのは後で分かったんだけどね」
「ちなみにナニ賭けたのか聞いてもよい?」
「そりゃあもっちろんルディアのはじめ・・・」ずびしっ!!
大体ナニ賭けたかわかってたので、途中でボクの手加減99%のチョップが、友里の脳天に突き刺さる。
「いったーーーーいぃっ!!」
「女の子がそういうの賭けちゃだめっ!」
「えーだってルディアが自分で賭けたんだもんーわたしが言ったんじゃないもんー」
「ほらーだからママいったでしょ?ヒカルちゃんに言うと怒られるからねって」
味方だと思ってた妻が敵でした・・・。
そんなことを話してる間にも用意は着々と進み、ルディアは五機停まっていたジェット機の真ん中の機体に、隊長さん以下三名が残りの機体に乗り込んでいく。
エンジンに火が入るとジェット機特有の甲高い音が響き渡り、辺りに熱気が渦巻き出す。
「なんかすごい迫力だねえ、ママ」
「そうねぇやっぱりこんなに近くで見るとスゴいわねぇ」
二人とも熱風と風でスゴいことになっちゃいそうなので、ボクの力場で包み込んで危なくないようにしているんだけど、多分無かったら吹っ飛ばされてるっていうくらい周りはスゴい。
そんな中二人は薄い光の壁のような物に包まれて談笑してるから、周りからはチラチラ見られてる。
「あ、あの壁みたいなのも守護者ちゃんの能力なのかい?スゴいなぁ!ホンとにワクワクするなぁ!!」
犬養プロデューサーが力場を見てナニやら興奮してるけど、プロデューサー見てないのにジェット機飛び立っちゃったけどいいのかな、まあいいのかリハーサルだし。
「犬養さーん!指示待ちでーす、指示お願いしまーす!」
スタッフさんに大声でなんか言われてる。リハーサルでも良くなかったらしい。あ、真理ちゃんにメガホンで殴られた、ドンマイ犬養プロデューサー。
犬養プロデューサーが怒られてる間にも、五機のジェット機は編隊飛行で一糸乱れぬ動きを披露している。
「スゴいなぁ、あの子今日初めてあの機体にに乗ってるはずなのに、他の機体と全然動きがずれないぞ」
「ほんとですねーいるんですねー天才って」
それを見ているスタッフさん達がルディアのことを誉めちぎっている。
でも違うんです、あの子自分の能力フル活用してるんです。多分体からケーブル伸ばしてジェット機と融合してるから手足のように動かせるんですよー。
そんなことを心の中で思いつつチョッとした航空ショーを眺めていると、ルディアの機体に異変が起きる。
「なんだ?トラブルか!?」
慌てるスタッフさん達を知ってか知らずか、ルディアの機体はちょっとガクガクしたかと思ったら・・・手足が生えた。
「「「「ガー○ォークきたーーーー!!!」」」」
ルディアの変形を見てはしゃぐスタッフさんたち。
あんたたちさっき右往左往してなかったっけ??
「いや、脚本に書いてあっても別撮りだと思ってたから、本気で変形とかされるとあせるよねー」
アハハハと笑い会うスタッフさん達を殴りたくなる衝動を抑えながら、変形したルディアが舞うように飛んでいるのを眺める。
やっぱりあの形態は機動性が上がるんだね、そんなとこまでアニメと同じ設定とはやるなールディア。
そんな躍り舞うように飛行するルディアの近くを、他の機体がかすめるように飛んでいく。
え?あれも演出なの?危ないなぁ。
紙一重でかわすように飛んでいたルディアも四機目をかわしたところでバランスを崩したのか切り揉み状態で落ちてくる。
今度こそ事故!?ルディアの機体はそのまま立ち直ることなく墜落して、もうもうと土煙を巻き上げる。
「ルディア!!」
ボクは思わず椅子から立ち上がり叫んでしまう。
ざわざわとするスタッフさんたち。今度こそ脚本で書かれた内容じゃないってこと?
立ち込める土煙のなかでナニかがゆらりと立ち上がる。
「あれは・・・ルディア?無事だったのかな?」
舞い上がっていた土がおちついていくと、立ち上がったモノが顕になっていく。
そこに立っていたのはだいぶサイズが大きくなったルディアだった。
「「「「バ○ロ○ドきたあああーーっ!!」」」」
全部仕込みかよっ!!心配したボクがバカだったよっ!